【政治解説】103万円の壁見直し「国民民主党にうながされて、“仕方なく”やっているように見えるのでは」石破内閣の支持率 再び30%台に低下 国民民主党は支持を伸ばす 2024年12月最新世論調査解説
日テレNEWS NNN / 2024年12月21日 19時15分
前回、40%台に回復した石破内閣の支持率は、再び30%台に下がりました。国会の答弁では、野党議員からも「野党にとっては手強い相手」と評価される石破首相ですが、支持率が伸びない背景には、やはり“政治とカネ”の問題への国民の根深い“不信感”が透けて見えます。一方、積極的に発信を続ける国民民主党は選挙以降、支持率を伸ばし続けています。最新の世論調査を日本テレビ政治部の竹内デスクと菅原解説委員の同期コンビが徹底解説します。
答弁評価されるも…石破内閣の支持率再び30%台に低下
【竹内】
12月の世論調査で石破内閣の支持率は、4ポイント下がり39%。前回、40%台を回復しましたが、また30%台になりました。一方の不支持は6ポイント上がって48%で、支持と不支持が逆転しました。
【菅原】
103万円の壁の見直しについては、世論の評価もあります。自民・公明の与党と国民民主党の幹事長レベルで合意もできて、補正予算案も通過したので、支持率が上がるような雰囲気もありましたが、逆でしたね。
【竹内】
自民党の閣僚経験者は、「やはり、野党から批判、追及を受ける予算委員会が開かれているからじゃないか」と分析していました。
【菅原】
石破首相は予算委員会で、時にユーモアも交えつつ、自分の言葉で丁寧に対応していたように見えましたが…。あまりそこは評価されていないということでしょうか。
【竹内】
確かに、石破首相の委員会の答弁が「良かった」という声は多いです。自民党の幹部クラスの職員は、「予算委員会での総理の答弁が良いという評価を聞く」と言っていましたし、自民党議員も「石破総理の答弁は安定している」と評価していました。
これは必ずしも自民党の人間だけではなく、野党の議員も、「予算委員会の石破総理の印象は丁寧で悪くない。野党にとっては手強い相手だ」と言っているほどです。
【菅原】
野党もそう言っているとすると、なぜ支持率に反映されないのでしょう。
石破首相のもとで政治とカネの問題が解決すると…「思わない」が86%
【竹内】
断定はできないものの、世論調査で見えてきたものはあります。「石破首相のもとで政治とカネの問題は解決すると思うか」と聞いたところ、実に86%の人が「思わない」と回答しました。前回よりも5ポイント上がっています。
【菅原】
単に高いだけでなく、前回と比較して“上がっている”ということがポイントでしょうか。つまり、石破内閣への期待感が下がっているということ。
【竹内】
そうですね。石破首相の答弁は悪くないけれど、“政治とカネ”の問題に積極的に取り組んでいるようには受け取られていないということだと思います。
自民党の閣僚経験者は、「政策活動費をめぐって、自民党が“公開の例外”を作ろうとしたことは、かなり評判がよくない。この期に及んでまだ“悪あがき”をしていると受けとめられているのでは」と指摘していました。
野党の幹部は、「“政治とカネ”の問題を含め、あらゆる改革に後ろ向きな自民党に、国民は失望している」と厳しく指摘していました。別の野党の議員も「“政治とカネ”の問題で、自民党全体の印象が悪くなっているからではないか」と話しています。
【菅原】
政治とカネの問題は尾を引いていますね。政治倫理審査会が開かれているので、また国民も思い出すでしょうし、なかなか信頼回復までの道のりは遠いのかなという印象ですね。
【竹内】
代議制民主主義という制度のなかで、議員にお任せする、信託する面も多いですから、「信頼できない」と受けとめられてしまうと、なかなか政治が機能しなくなってしまうようなところがありますよね。
【菅原】
「信なくば立たず」ということですね。
都議会自民党の“不記載”疑惑の影響は…
【竹内】
さらに、このようななかで、また新しい事案が自民党に出てきてしまいました。
【菅原】
都議会自民党の問題ですね。
【竹内】
そうです。政治資金パーティーの収入の一部が、政治資金収支報告書に記載されていない疑いがあり、東京都議会の自民党のグループ「都議会自民党」が調査をしています。これが、今後の政治の動きのポイントになると思います。
【菅原】
去年のこの時期を思い出すというか、安倍派の裏金問題が出てきたのもこの位の時期。今回の都議会自民党の問題も、どのぐらい広がりを見せるのか気になりますね。
【竹内】
去年、安倍派の裏金問題も発覚した時には、賄賂を渡していたわけではなく、いわゆる形式犯ではないかといわれていて、それこそ首相が辞めるほど大きな問題になるという雰囲気は無かったと思います。
都議会自民党の件というのは、もちろんこれがどこまで大きな問題になったり、それこそ事件になるかどうかもまだ分かりませんが、あまりに構図が似ているのもあって、自民党の中では影響を心配する声が出ています。
【菅原】
来年は、東京都議会選挙がありますし、参議院選挙もありますから。
【竹内】
都議会選挙も参議院選挙も、衆議院の選挙と違って時期が決まっていて、必ずそこで行われますよね。ですから、自民党の関係者でも重鎮の人は、「このままでは来年は選挙にならない。グズグズ引っ張っていたら、都議選も参院選も大変なことになる」と危機感をあらわにしていました。
“政治とカネ”の問題は、やはりすごく影響が大きいですから、都議会自民党の件もきちんと対応しないと、いつまでも信頼回復ができないという事態になってしまう。ですから、今後のポイントとして指摘したいと思います。
【菅原】
政治資金の制度の問題は、“政治活動の自由”ということにも関係しますし、あまりにも “何でもダメ”となると、“お金持ち”しか政治に関われないということにもなりかねません。我々は冷静に見るべきところは見ないといけないですね。
【竹内】
そこはすごく大事なポイントだと思います。今回の世論調査でも、「企業団体献金」について聞いたところ、「禁止した方がいい」という人は30%で、「透明性を高めるべき」という人は60%でした。つまり、多数の人はむしろ「何でも禁止にしなきゃダメだ。とにかく厳しくしなければダメだ」というわけではないようです。これに対して政界からは、「国民は冷静だ」という声が多く聞かれました。世の中の人が冷静だとすれば、与野党でも現実的で、かつ効果のある再発防止策を決めてほしいです。
103万円の壁見直しは評価されるも支持率は伸びず
【菅原】
今回の調査のポイント、もうひとつは103万の壁について。合意は評価されていましたよね。
【竹内】
評価するが68%でしたから、かなり高い評価だと思います。
【菅原】
やはり減税になりますから、懐が温かくなることは評価するということでしょうか。
【竹内】
ただ一方で、手放しで「とにかくお金が欲しい」ということではないということがわかる調査結果もあります。103万円の壁を見直して、引き上げるときには「財源を考慮して決めるべき」という答えが66%だったんです。
【菅原】
やはり冷静ですね。そこは、政治の側は世論を甘く見ないでほしいところですね。ただ、103万円の壁の見直しが石破内閣の支持につながっているかというと…。今回、下がってしまいましたね。
【竹内】
そこについて、ある経済産業省の幹部の話が、面白い指摘と思いました。「石破総理が決断しているというよりは、国民民主党にうながされて、“仕方なく”やっているように見えるからではないか」と。
もう一つ、与党と国民民主党の政策協議に関して。自民党の閣僚経験者は、「協議が非公式で、プロセスが見えないから、評価しようがないのではないか」と話していました。
自民党支持率低下の一方で、支持を伸ばす“物言う”国民民主党
【菅原】
協議が終わったあとに私たちは取材してカメラの前でコメントをもらったりしますけれど、与党のコメントと国民民主党のコメントの分量であるとか、熱量に差があるようにも感じます。そのあたりも影響するのかなと思います。
【竹内】
そうですね。数字でも裏打ちされていて、政党支持率を見ると、積極的に発信する国民民主党は評価されているように見えます。国民民主党の支持率は前回10%でしたけれど、今回は12%。微増ではありますが、上向きです。
一方、野党第一党の立憲民主党は逆に11%だったのが、今回8%。トレンドでいうと下向きではないかと思われます。今や、野党で一番支持されている政党は国民民主党なんです。自民党も前回30%台を回復していましたが、今回は24%に下がってしまいました。
「プロセスが見えていない」と指摘をした自民党の閣僚経験者は、「自民党が主導してどういう議論が行われているのかを見えるようにしないといけない」と話していました。国民民主党ははっきりものを言って、発言の量も多い。一方、自民党と公明党は、もちろん責任感もあり、慎重ということもあるかと思いますが、やはり発信が少ないように見えます。ですから、こういう状況は自民党としては変えていかなければならないという認識だということです。
世論が“納得する”議論を
ここでポイントになると思うのは、「納得が得られるような議論をしていく」ということだと思います。
ある意味、世の中の人も「理想論だけではダメ」とわかっているわけです。そういう人たちから見て、出た結論だけではなく、なぜそういう結論になったか、議論のプロセスも見えるようにして、政治の側がしっかりと世論の納得を得られるように説明して欲しいと思います。
(日本テレビ 政治部デスク 竹内真 解説委員 菅原薫)
■NNN・読売新聞世論調査
12月13日から15日
全国有権者に電話調査
固定電話 410人
回答率 55%
携帯電話 608人
回答率 32%
合計1018人が回答
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