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来年成立のカギは「維新」に?選択的夫婦別姓に“賛成”議員が約7割でも可決の可能性は半々な理由

日テレNEWS NNN / 2024年12月23日 11時0分

日テレNEWS NNN

夫婦が別姓を望む場合には、それを選ぶことができる「選択的夫婦別姓」。導入を目指す一般社団法人あすにはの井田奈穂代表は、「来年の通常国会で決められるように」と働きかけを強めています。法務大臣、衆議院法務委員長と重要ポストに“賛成”議員が就任し、停滞している議論に進展はあるのでしょうか?

裏金、総裁選、衆院選…2024年の政界の大ニュースを、選択的夫婦別姓の観点から振り返ります。

◾️“賛成”だけが当選割合を高めていた──選択的夫婦別姓への賛否で見る衆院選

報道局ジェンダー班 庭野めぐみ解説委員:

10月の衆議院選挙の際に日本テレビで候補者にアンケートを行いました。

政治部 官邸サブキャップ 本岡英恵記者:

当選した465人のうち、選択的夫婦別姓については「賛成」が52.3%、「やや賛成」が16.9%と、合わせて約7割でした。

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本岡:有権者の調査も行っていて、日本テレビ系列各局が行った出口調査によると、全ての年代で「賛成」が最多でした。「賛成」の割合が最も高かったのは18歳と19歳で、半数近くの48.1%でした。50代までの有権者でもいずれも「賛成」「どちらかといえば賛成」を合わせた人たちの割合が7割を超えました。

また、60代と70代以上の有権者も「賛成」「どちらかといえば賛成」を合わせた割合が5割を超えました。

庭野:60代、70代でも意外に半数以上なんですね。

一般社団法人あすには 井田奈穂代表:

熟年結婚が増えていて、「もし60代になって再婚する時にもう1回名前を変えなきゃいけなかったらとても大変よ」という方もいます。また、若い方がそれによって結婚できず、少子化につながっていることもよく知られてきています。

朝日新聞・東大谷口研究室共同調査をもとにあすにはが作成

庭野:あすにはでも衆院選について調査をしたんですよね?

井田:候補者の段階で「賛成」とか「反対」を表明した人たちの選挙結果を調べました。2021年の前回衆院選と比べて、「賛成」「どちらかと言えば賛成」と答えた人だけ当選割合が若干上がっているんですが、それ以外の「反対」「どちらとも言えない」「無回答」の人たちは、当選割合が下がっているんです。

やはり裏金の問題が非常に大きかったと思っていまして、裏金をやってしまったと公表されている議員さんで選択的夫婦別姓に消極的なのは92%とかなり高いマッチング率でした。

本岡:10月の衆院選で議席を減らした政党のうち、自民党と日本維新の会は選択的夫婦別姓には慎重な方々が多いし、旧安倍派は反対の方が多いので、そことリンクしたのかなと思いますね。

■重要ポストに「賛成」議員が就任 “少数与党”の石破政権でどうなる?

左:鈴木馨祐 法務相 右:西村智奈美 衆議院法務委員長

庭野:いろいろな委員会で与党が委員長を占めるのがよくあるパターンなのですが、衆院選を経て少数与党となったことから、今回は異例の人事になりましたね。

本岡:衆議院の法務委員長に立憲民主党の西村智奈美氏が就任しました。立憲民主党は選挙の時も選択的夫婦別姓を実現することを掲げていたので、「通常国会で何としても実現したい」という野田代表の強いこだわりがあり、「獲得せよ」という直接指示があったといいます。

井田:「法務委員会であれば“長”を取ってください」と、当事者団体や日本弁護士連合会からもお願いをしていました。委員長のポストに就ける数が決まっていたんですが、それを減らしてでも法務委員長をとってくれたことは心から嬉しく思います。

もう1つ、法務大臣が、私たちの活動にずっと伴走して、自民党の中から「賛成」を言い続けてくれた鈴木馨祐大臣がなられたので、これは非常にいい座組で嬉しいです。

本岡:でも、先日の予算委員会で、鈴木法務大臣は「法務大臣としては賛成、反対をお答えできません」と答えていましたね。

庭野:苦渋の答弁ですよね。

一般社団法人あすには 井田奈穂代表

井田:(鈴木法務大臣は)一切ぶれずにどの調査でも選択的夫婦別姓に「賛成」と言い続けていました。同性婚に関してもですが、信念を持ってずっと「賛成」と言い続けてくれる議員さんは、自民党の中では数名しかいないです。

庭野:こうして見ると、国会の中でも半数以上が賛成したり、衆議院では法務委員長に西村智奈美さんが就任したりと、かなり導入に近づいているのかなという雰囲気があります。

井田:来年の通常国会で決められるように私たちも働きかけていますし、またそういう手ごたえを議員さん自身が持っておられる方が多いと思います。

本岡:法務委員会の構成を調べたのですが、「反対」と「賛成」のスタンスの党が半々ぐらいでちょうど拮抗しています。カギを握っているのはもしかしたら日本維新の会なのかもしれません。維新の方々も法務委員会で自分たちがキャスティングボートを握るんじゃないかと自覚して準備しているようです。

■「私、名前まで変えたのよ」と泣かれて…賛成派だった石破首相は今

左:石破茂首相 右:自民党 小泉進次郎議員

庭野:総裁選のときにも話題になりましたね。

本岡:自民党総裁選のとき、小泉進次郎さんが「選択的夫婦別姓を1年以内に実現する」と打ち出しました。

その後、9月22日に日本テレビでは自民党員に対する調査を行いまして、選択的夫婦別姓制度の導入に「賛成」は30%、「反対」は35%、「どちらとも言えない」は34%という結果でした。当時、総裁選が終わったら衆院選が控えているとみんな思っていたので、自民党の岩盤層の支持が得られなくなってしまうというのは、大きなインパクトを残しました。

庭野:本岡さんは石破首相の取材をずっとしていますが。

本岡:石破さんは2023年の2月にラジオ出演した際に、自らの結婚した際のエピソードを紹介しました。新婚旅行から帰ってきたときに、多分、至らない点があったのか、ご夫人はあまり満足できなかったんでしょう。奥様に「私、名前まで変えたのよ」と泣かれた、と。相当ショックだったらしいんですね。石破さんご夫人のことがすごく好きなので。

「女性がそんな思いだったことを初めて知った」と述べて、当時は「社会が壊れるというなら壊れないようにすればいい」「いろいろな問題があるなら、社会の仕組みを変える努力をしなきゃいけない」と、法整備に努める考えを強調していたんです。

しかし、総裁選で石破さんは自民党内の基盤が弱かったので、ありとあらゆる議員に推薦人になってもらう中で、「選択的夫婦別姓のことは言わないでほしい」ということを言われたこともあり、少し主張を緩めている現状です。

国会でも首相は「夫婦別姓については国民の意見が分かれている」「国会で建設的な議論をし、具体的な制度のあり方について、より幅広い国民の理解が形成されることが重要」と述べるにとどめて、早期導入については慎重な考えを示しています。

■「かわいそうというのは偏見」子どもとお墓の“姓”どう考える?

左:報道局ジェンダー班 庭野めぐみ解説委員 右:政治部 官邸サブキャップ 本岡英恵記者

庭野:政府の考え方はどうですか?

本岡:法務省は5年間の長い審議を経て、1996年に夫婦別姓を実現する法案をまとめて公表しています。

井田:ほぼ30年前ですよね。

庭野:どんな内容ですか?

本岡:「民法を改正し、夫婦で別の氏を名乗っても婚姻できることを認める」「子どもの氏は婚姻の際に決め、子の氏は統一する」「従来の戸籍と両立が可能で、戸籍制度は維持する」という内容です。しかし、当時は与党議員の反対が強く、法案を提出できなかったという経緯があります。

庭野:「親子の姓が違うと“かわいそう”」という話があります。

井田:別姓家庭で育った子どもって、実は日本にもわりとたくさんいます。国際結婚だと基本は別姓だし、名字の問題で婚姻できないままお子さんを育てているケース、里親というケースもあります。

そうした子どもたちの座談会をやりました。「かわいそう」と言われることについてはどう思っているか聞くと、「それが当たり前だと思っていたから、なぜかわいそうと言われるのかわからないので、教えてほしい」という言葉や、「自分で自分をかわいそうだと思っていない人に対して『かわいそう』と言ってくるのにすごく不快感を覚える」などと言っていました。

裁判所や国の検討会で専門家から出た意見としては、「“夫婦同姓でないとかわいそう”というのは偏見である」と。選択的夫婦別姓が導入されれば、より速やかにその偏見はなくなるだろうという結論が出ています。

庭野:お墓をどうするかという意見についてはどうですか?

井田:弔い方は時代によって変遷していて、先祖崇拝が国策になったのは明治期以降です。それまでは火葬ではなく土葬で、個人のお墓でした。大体戦後くらいに墓石とともに“○○家ノ墓”と記載するのが一般的になったといわれています。

同じ墓の中に名字が違う人を入れることは、永代使用者が望めば今も普通にできます。そもそも、亡くなった後のお墓のために生きている自分が望まないのに「改姓しろ」と言われるのは、だいぶ人権侵害に基づく意見だと思います。

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庭野:来年、選択的夫婦別姓が成立するのでしょうか?

本岡:自分たちの生存のためというより、これからの未来の社会のためにどうするべきかをしっかり議論して、国民が「この議論を聞けば納得できるな」というものが繰り広げられることが大事だと思っています。

井田:そもそもこれってそんなに大きな議論ではなかったはずなんです。妻と夫の氏の2択から、どちらも変えないという1つ選択肢を増やすだけのことに30年もかかってしまうこと自体が、かなり硬直した政治のあり方だと思います。

ジェンダー平等のためにやらなければいけないことは山積しています。若い人たちが選択肢を持って、自分が望む生き方ができるように社会制度を整えるというのは政治家の役目だと思っていますので、速やかに来年通常国会で時間をかけずに決めていただいて、もっと重要なことに労力を振り向けられるようにと考えています。

■Talk Gender~もっと話そう、ジェンダーのこと~

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日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。 “話す”はインクルーシブな未来のきっかけ。あなたも輪に入りませんか?

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