【密着】年の瀬の“年金事情” 孫のお年玉「頭が痛い」、段ボールをカーテン代わりに 寒さ本格化…暖房も我慢『every.特集』
日テレNEWS NNN / 2024年12月23日 15時28分
今年最後の年金支給日だった13日、都内5か所で30人以上の受給者を取材。「足りるわけない」「もう少し上げて」という声が聞かれました。孫のお年玉を満足に用意できない人や、暖房を我慢する人も。見えてきたのは、想像を超える年金生活の厳しさでした。
■お年玉にクリスマス…「いろいろ大変」
13日、都内のATMには行列ができていました。
2か月分が一度に支給される年金。「年金を下ろしにきました」という男性(78)に支給されたのは約11万円です。ひと月にすると5万5000円ほど。「孫が2人いて、お年玉とかクリスマスプレゼントとか、いろいろと大変ですね。出費がかさみますね」と嘆きます。
ひと月の年金が約15万円の80歳は「大変よ~。(年金で)足りるわけないじゃない」と話します。
■支給日の4日前で…残り5000円
支給日の4日前、年金暮らしをする80歳の戸田さんを訪ねました。家賃1万6000円の都営住宅で一人暮らしをしています。部屋にカーテンはなく、段ボールをカーテン代わりにしていました。
「これ(段ボール)と同じもの。これをやろうと思っているんだけど、なかなかできないんだよ。暇があっても」と言います。寒さ対策で大きめの段ボールを用意しましたが、まだ取り替えていないそうです。
戸田さんの年金は、ひと月に約12万5000円。貯金はなく、年金も生活費と医療費に消えて、生活は厳しいといいます。
戸田さん
「13日(年金支給日)までもう5000円くらいしかない。だから1日1000円の計算」
節約しながら支給日までを過ごしています。「金あればあるほど、食い物の方に使っちゃうんだよね。だいたいそんなもんだよ」
■年末年始の楽しみは…おせちと夢
10人きょうだいの末っ子として生まれた戸田さん。中学を卒業後、すぐに働き始め、30歳からはトラックドライバーとして30年以上働いてきました。
そんな戸田さんは、今年最後の年金で楽しみにしていることがあるといいます。
「おせちね。ローソン(ストア100)で2セット買うわけよ」。
1品108円から買えるオリジナルのおせち。25日に店に並んだら奮発して、1万5000円分ほど購入するつもりだそう。
迎えた年金支給日。戸田さんは銀行にやってきて、年金を下ろしました。そのお金で、おせち以外にも楽しみにしていることがありました。「とりあえず6万円だけ下ろして。宝くじに1万円だから」。早速、宝くじ売り場に向かい、9000円分を買いました。
「買うのは夢だから。当たったらもう家買うでしょ。あそこの団地出なきゃなんねえよ」。年金で買ったおせちと夢を楽しみに、年末年始を過ごすといいます。
■国民年金のみの平均受給額は?
老後の生活に欠かせない年金。厚生労働省の令和4年度資料によると、ひと月あたりの年金受給額の平均は、国民年金のみの場合で約5万6000円、国民年金と厚生年金の両方の場合で約14万5000円だといいます。
多くの人から聞かれたのは、「年金生活は我慢の積み重ねだ」という声です。
ひと月の年金約12万円の85歳
「2か月でギリギリの生活。出かけない、贅沢(ぜいたく)しない。あるもので生きながらえる」
ひと月の年金約3万円の79歳
「野菜がほとんど高いから野菜なんか食べられない。納豆とかとろろとか、そういうものを食べている。しんどいことはしんどいね」
ひと月の年金が約8万5000円の73歳からは、こんな嘆きも聞かれました。
「一生懸命仕事して、年金で1か月食べていけるようにといって、かけていた。もっともらえるんじゃないかと思っていたのよ。そうしたら全然もらえないんだよ」
■寒さが本格化 どう乗り切る?
厳しい生活に追い打ちをかけるのが、2週間ほど前から本格的になった寒さです。ひと月の年金が約10万円の77歳は電気代節約のため、寒さに耐える日々です。
「なるべく家の中では厚着をして暖房費を節約。靴下とか首にマフラーを巻く。(今年は)暖房はつけていないです。部屋の中の電気は使わないところは消して、トイレの便座の電気も保温のやつを消して。年金生活大変ということを放送してください」
ひと月4万円ほどの年金をもらう男性(83)は、節約のためあえて外出しているといいます。「3時間ぐらい家にいない。朝晩散歩にいく。家にいるとテレビつけて暖房つけるから。なるべく散歩したほうが光熱費がかからない」
■“プチ贅沢”…中トロや天ぷらに舌鼓
ただ、支給日だけは特別なことをしたいという人も。ひと月の年金が約14万円という81歳の女性は年金を下ろし、その足で2か月ぶりに和食レストランへ向かいました。
「和食屋さん、よく行っていたところ。きょうは気分変えて食べようかなと思っています」。1600円のプチ贅沢ランチを楽しんだそうです。
プチ贅沢の光景は、東京・大田区の回転すし店「回し寿司 活」グランデュオ蒲田店でも見られました。「お疲れさま」と乾杯していたのは、年金受給者の3人です。
「(年金支給を)ずっと待っている。待ちに待っている」「よく言うわよ~」「ほんとよ」「いくらおいしい」と会話も弾みます。月2回、みんなでおすしを食べるのが恒例の楽しみなんだそう。
そのうちの1人は「(いつも頼むのは)6皿くらい。飲んで(1人)1800円くらい」と言います。
別のテーブルでは「目の前で握ってくれるすし、ここらへんに憧れるよね」とご満悦な客の姿が。ほどよい甘みでしっかりと脂の乗った中トロがお気に入りだといいます。「すしは日常ではないもんね。私にとって最上位ですよ」
■「外で食事するのは数えるほど」
和食の店でも、とっておきのプチ贅沢を楽しんでいる受給者がいました。東京・品川区にある「木曽路旗の台店」では、夫婦がゆったりとくつろぎながら食べる、至福のひとときを過ごしていました。
「おいしいです。日本食大好き」
四季折々の旬の素材を生かした天ぷらやおつくりなどが楽しめる「籠盛(かごもり)定食」(平日ランチ限定、内容は季節により変更、一部店舗を除く)に舌鼓を打っていました。
「年金だけではとても暮らせないですね。そんなに度々、外で食事するのは数えるほどですね」
■「お年玉」のために食費を削る人も
多くの人から聞かれる、年金生活の厳しさ。追い打ちをかけるのが年末年始の出費です。次の支給日は2か月後。特に苦労するというのがお年玉です。
ひと月の年金が約9万円の77歳は「お年玉だけで、孫が4人いるので3万円、4万円かかっちゃう」。同じく約14万円という76歳の男性は「1万円ぐらい。(孫は)2人います。頭が痛いですね」と言います。
この76歳の男性は、お年玉のために食費を削るといいます。
「もやし。値段が安いから。栄養もあるらしいから。最悪の場合、食事を少し減らす」
ひと月に7万5000円ほどの年金をもらう男性(79)。小学生の孫が2人いるそうですが、「お年玉!? あげない。知っているから、子供たちが。年金生活で大変というのを。こっちがお金ないこと知っているから」と明かします。
ただ、「本当はね…(プレゼントをあげたい)。生活は厳しいですね」と本音ものぞかせます。
■長期間の通院で…お年玉を「減額」
小学3年生の孫がいる、ひと月20万円ほどの年金で暮らす女性(86)に話を聞きました。「じいじからだよって、5000円。天国からきているよと。私からは1万円で、喜びます。じいじが天国からくれたって言っていますから」
毎年、亡くなった夫の分として5000円、自らは1万円を渡していましたが、今年から自身の分は5000円にしたそうです。長期間の通院が必要になり医療費が増えたため、お年玉の金額を減らさざるを得ないといいます。
この女性は「2週間に1回(病院へ)行って、1回行くと2万円弱タクシー代と(治療費の)両方でかかりますので。(治療が)何年かあるから、お年玉続けるのは大変だなと思って」
■「働かないと食べられないから」
年金だけでは生活が厳しく、働く高齢者も増えています。
76歳の男性はひと月9万5000円ほどの年金をもらっていますが、「タクシーの運転手。夜9時ごろから北千住の駅でやっている」。週4日、明け方まで働いているといいます。「正直、年金で食べていければ仕事は辞めている。働かないと食べられないから」と話します。
■ギリギリの生活…仕事を求め説明会に
一方、働こうとする人にも厳しい現実がありました。
都内に住む83歳の中井さん。ひと月の年金は約16万円です。日々の生活費や医療費、購入したマンションの維持費などのお金がかさみ、生活はギリギリだといいます。
「ブロッコリー、きのう(買い物に)行ったら279円かな。何も買えないから見るだけで買う気にならない」
定年間際まで生協の職員として働いた中井さん。退職後はパートなどもしていたといいますが、70歳を超えてからは働いていなかったといいます。
ただことし6月、10年ぶりに働こうとシルバー人材センターの説明会に足を運んでいました。「年金でどうやって生活するんだろうと思っていたから、とにかく何か仕事しないといけないと思って」と中井さんは振り返ります。
「あと何万円あったら生活できそうですか?」という質問に、中井さんは当時「最低でも(仕事で)3万円。本当は」と答えていました。
■「できる仕事あるのかな」…厳しい現実
あれから約半年。仕事はどうなったか聞いてみると、中井さんは「こういう仕事がありますとか、お便りがくるんですよ。植木の剪定(せんてい)だとか、自転車の整理だとか」と言います。
求人の情報は届くものの、「83歳になってからとにかく日々体力が落ちていく感じというのか、歩くのがどんどん遅くなっていくとか。立ったり座ったりが機敏にできないだろうと思うと、できる仕事があるのかなって思ってしまって」と漏らします。
体力的に自信がなく、仕事にはつけていないといいます。それでも「足が動くうちに、まだもう一回くらい国内でも旅行くらいはしたいなと思ってはいる」と中井さん。自分にできる仕事を探していくつもりだといいます。
厳しい生活を話してくれた年金受給者の皆さん。多く聞かれたのは、「年金もうちょっとあげてもらいたいけど、無理だろうけどさ…」といった声でした。
(12月20日『news every.』より)
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