【解説】選挙イヤーで注目されたSNSの影響力…盛り上がりの一方、問題も
日テレNEWS NNN / 2024年12月28日 19時14分
今年は、国内外で重要な選挙が続く選挙イヤーで、SNSが注目されました。伊佐治健報道局長の解説です。
今年はこのように重要な選挙がありました。大きな存在感をみせたのがSNS・ネット動画を通じた選挙運動です。
東京都知事選では、小池百合子氏と蓮舫氏二人の争いとみられましたが、前の広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が2位に躍り出ました。
石丸氏の戦術はSNSでした。投票1週間前の街頭演説を私も見ましたが、多くの人が熱心にスマホを向けていました。石丸氏は壇上で、いわゆる切り抜き動画をスマホを通じて拡散するやり方を、時間をかけて指南していました。
政策を語るよりは、選挙だから皆で楽しもうと呼びかけたり、ライブ配信中、ネット上のコメントに答えたりと、有権者との距離を近づける事に力を入れていました。
──秋の総選挙でもSNSの存在、大きかったですね。
国民民主党が、議席を4倍に増やした原動力もSNSでした。
選挙戦最終日、最後の訴えを見たのですが、ライブ配信やXの拡散で人が集まり、聴衆がじっと耳を傾けていました。
ネットコミュニケーション研究所の調査によると、選挙期間中Xのフォロワー増加数は、玉木代表が候補者の中で一番だったということです。
一方、こちらは同じ日の自民党の会場ですが、通りすがりで足を止めて演説を聴くことは難しかったです。総理大臣の警備が厳しいのは仕方ないとはいえます。
──ただ、国民民主党の会場とは雰囲気が違いますね。
東京都知事選に自らも出馬し、SNSの活用で注目されたAIエンジニアの安野貴博さんは次のように述べています。
安野貴博さん
「SNSの活用で私が一番強みだなと思うのは、市民の声を聞くことができるようになること。本当に1人1人の方がいろんなことを、思いを言葉にされているので、そういったものをダイレクトに聞くことができるというのは、ひとつのSNSの強みだと思います」
「『短尺動画』と『中尺動画』と『生配信』の使い分けっていうのが、この1年でも、政治家の中でいろいろやり方を模索されている、やり方の模索がいい感じに進んでいるという印象を受けています」
──SNS選挙にはマイナス面もありますよね。
はい。兵庫県知事選では問題が露呈しました。
立候補した立花孝志氏が投稿した動画を通じ、事実と異なる情報がSNS上で拡散しました。こうした情報をもとに投票先を決めた人もいたとみられます。
私たちも速やかにファクトチェックして、間違いだと伝えられなかったのは、大きな反省点です。
安野さんは去年、私たちの取材に、2024年はニセ情報やフェイク動画が選挙で使われると警告していました。
安野貴博さん
「その通りになったなとは思ってます。特に日本よりもアメリカ大統領選の方が、顕著だったと思いますけれども、アメリカ大統領選では各陣営お互いの例えば声のディープフェイクみたいなものが使われながら、本当は言ってもいないような発言を、衝撃的な発言をしているかのような動画っていうのが、インターネットメディア上にバンバン流れていたので、こういったことは起きてしまったんだなということだと思います」
──アメリカの実態は驚きですね。
トランプ次期大統領は、歌手のテイラー・スウィフトさんが自分を支持しているとみせかけるフェイク画像をSNS上で共有しました。すぐにウソと分かりましたが、世界では巧妙なフェイクが後を絶ちません。
まとめますと、SNS選挙のメリットは、情報が有権者に素早く伝わり、開かれた政策論争を喚起できること。
デメリットはウソの情報・フェイク動画が拡散しやすいこと。また、投票先として考えてもらおうというのとは別に、いたずらに再生数を増やして、金銭を稼ぐだけの行為も問題点として指摘されています。
SNSへの法規制は、表現の自由を守る観点からも慎重さが求められます。しかしウソ情報や、収益を目的とした活動が選挙に混乱を招いている現状は放置できないと、政界にも動きが出てきました。
──SNSは生活の一部になっていますが、考えるべき点は多いですね。
選挙報道で既存メディアがSNSに敗北したといった声もありました。ただ、そもそも対立するのではなく、共存するべき関係ではないでしょうか。
来年は参議院選挙もありますが、私たちは正確な情報を伝えると共に、SNSのメリットも活用しながら、有権者の投票に役立つ報道を目指したいと思います。
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