青山学院・鶴川正也「やめたい」「走りたくない」両親に人生初の弱音 最初で最後の箱根駅伝のチャンスをつかんだ復活の裏側
日テレNEWS NNN / 2024年12月28日 9時0分
2025年1月2、3日に行われる第101回箱根駅伝で、連覇を狙う青山学院大学。原晋監督が“エース”と期待を込めたのが鶴川正也選手(4年)です。
今季は出雲駅伝と全日本大学駅伝で区間賞。また5000mと10000mで大学記録を更新するなど、箱根駅伝のメンバーに4年目にして初めて選ばれました。
一時は走ることを「やめたい」と口にした“スーパーポジティブ男”が復活を遂げたそのワケはー。
■「1番になりたい」子どもの時から走ることには負けず嫌い 中学ではサッカー部ながら全国3位
「明るくなっちゃう。落ち込まないんですよね」と自身を語る鶴川選手は、熊本出身の4人兄弟の長男。小学生のときに出たマラソン大会をきっかけに、走ることが大好きになり、中学時代ではサッカー部に所属しながら陸上の全国大会にも出場。なんと3000mで3位に入りました。
その姿に父・和宏さんは「全国大会レベルで戦えるんだとびっくり」、母・美樹さんは「やっぱり走るのが本当に好きなんだな。走ることに関しては1番になりたい。運動会でもなんでも“1番になりたい”と口に出して言っていた」と思い返します。
九州学院高校に進学すると、2020年の全国高校駅伝1区で区間賞。次は憧れの青山学院大学で1番にー。「1年生から学生駅伝で大活躍したい」と駅伝強豪校の門をたたきました。
■父も認める“スーパーポジティブ男”
期待されて入部したものの、度重なるケガで駅伝のメンバー争いから離脱。1、2年時は一度も出雲、全日本、箱根の出場がかないませんでした。
それでも母・美樹さんは「遠く離れている私たちの方が落ち込む」と話し、「“ここから僕は絶対に走れる。来年は絶対に走れる”って切り替えが早くて」と息子の言葉に驚きの様子。また父・和宏さんも「スーパーポジティブ男だと思っている」と語りました。
絶対に走れる。駅伝のメンバーになって箱根駅伝へ。“スーパーポジティブ男・鶴川”はひたむきに練習を重ねました。
ようやくチャンスをつかんだ3年目。まずは出雲駅伝で1番になってチームに貢献する。アンカー6区を任された鶴川選手は、強い気持ちでタスキを受け取ります。
しかし、思いとは裏腹に、差は広がるばかり。区間7位、チームの順位を落としてしまいました。
「そんなに甘くないということが分かりました。まだ始まったばかりなので、この悔しさをバネに全然頑張れます。まだまだ行きます」
決して弱音を吐きません。涙は心の奥に隠す男でもあります。
■「やめたい」「走りたくない」両親に人生初の“弱音” 気づいた自分の“本心”
2023年11月の全日本大学駅伝。ここに鶴川選手の姿がありませんでした。
大腿(たい)骨疲労骨折。焦りで練習量を増やし過ぎた結果のケガでした。
「想像してきた大学陸上人生と違いすぎて、本当にたくさん考えて考えて3年間やってきて、うまくいかなかったので...」
箱根駅伝のメンバーに3年目も入れず、心にたまっていた3年間の涙がついにあふれでてしまいます。
それを受け止めたのはご両親でした。
(母・美樹さん)「初めて“やめたい”と言ってきた。陸上のことを考えきれない、考えたくなくなった、走りたくないと電話で言ってきました。好きでやっていることに関しては、やめたいとか弱気になった言葉は今まで言ったことがない」
陸上をやめたい。息子が初めて口にした弱音。けれど、“本心”は違うはずー。
(母・美樹さん)「走ることが嫌いになったわけではないと感じていた。このチームで活躍したい思いで大学進学したけれど、あえて“箱根駅伝が全てではないよ”と声をかけました」
鶴川選手は気づきます。前回大会、沿道で仲間を鼓舞しながら、“やっぱりこの道を走りたい”と。
「“ゆっくりでいい” ”休んでいいよ”という(両親からの)言葉で、自分のペースでゆっくり戻ってくることができたので、本当に感謝しています」
■「とにかく楽しもう」 最初で最後の箱根駅伝への思い
大学ラストイヤー。これまでのうっぷんを晴らすかのように飛躍します。
5月関東インカレ男子2部5000m決勝では、留学生ランナーに競り勝ち優勝。出雲駅伝や全日本大学駅伝でも区間賞の走りをみせます。
「陸上競技を始めたときは本当に走ることが好きで、楽しい楽しいという思いで毎日走っていたし、4年目はとにかく楽しもうって」
1番へのこだわりをふっきると、1番になる自分がそこにいました。
12月の箱根駅伝メンバー発表。原監督から最初に呼ばれた名前が自分の名前でした。
泣きたいときは泣いていい。自分に正直であればいい。最初で最後の箱根駅伝へ、「この4年間のすべてを箱根駅伝の1時間にぶつけます」と仲間の前で誓いました。
母・美樹さんは「“楽しんでこい”と声をかけたい」、父・和宏さんは「チームのために死ぬ気で走ってこい。そんな気持ちですね」と笑顔でエール。
鶴川選手は「お父さんは褒めてくれないので、『お前やったな』と言わせられるように、箱根駅伝は褒められたい」とはにかみました。
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