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韓国・尹大統領 なぜ戒厳に突き進んだのか? ワケを探ると見えてきた「孤独な権力者」の極地

日テレNEWS NNN / 2024年12月29日 8時0分

日テレNEWS NNN

突然、「非常戒厳」を宣言して、世界を混乱の渦に巻き込んだ韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。なぜ戒厳へと突き進んだのか。そのワケを探ると「孤独な権力者」の姿が透けて見えてきた。

■なぜ“戒厳”? 尹大統領は…

尹大統領は45年ぶりに非常戒厳を宣言し、韓国の民主主義を脅かす未曽有の事態を引き起こした。かつて、民間人160人以上が犠牲になる惨事にもつながり、国民が忌み嫌う“戒厳令”。なぜ尹大統領は、国民が嫌う「戒厳」に突き進み、国を、そして世界を混乱に陥らせたのか。

尹大統領は、国民に対し「野党が国政をマヒさせており、その反国家的な悪を知らせるために戒厳を行った」と説明している。

一見、“後付け”の言い訳のようにも聞こえるが、背景を探ると、大統領自身が“本当に”そう思い込み、戒厳に突き進んだ可能性が見えてきた。

■“ねじれ国会”解消の予兆も…

時計の針を少し戻し、2024年2月。任期中盤に差しかかった尹大統領。この時は久々に陽気だったはずだ。自らが打ち出した医療改革に国民の反応も上々。世論調査では76%が肯定的に評価した。上り調子で、4月に控えていた総選挙に向けた“弾み”となるはずだった。

尹政権は2022年の船出から、いわゆる“ねじれ国会”に悩まされてきた。野党が大きな壁となり、推し進めたい政策が阻まれてきた。

「総選挙直前に、支持が高まるきっかけを得た」。“ねじれ国会”を解消できる予兆を感じ、尹大統領は意気揚々だったに違いない。

しかし、その期待は、もろくも崩れ去る。医療界の猛反発を受けて、医師がストライキに入り、緊急医療などは機能不全に。そうなると、医療改革への支持も急にトーンダウン。医療改革はむしろ、政権への“ダメージ”になった。

結果、総選挙では与党は惨敗。“ねじれを解消し、任期後半は順風満帆に過ごす”という尹大統領のもくろみは、かなわなかった。

韓国メディアによると、尹大統領が本格的に戒厳を宣言すると考え始めたのは、総選挙直前の2024年3月。医療改革がほぼ頓挫し、総選挙で“ねじれ”解消の望みがついえたように伝えられ始めたころだ。戒厳でしか局面を打開できない…と追い込まれてきたのかもしれない。

ただ、尹大統領を苦しめたのは“ねじれ国会”だけではない。火種は身近にもあった。

■“夫人疑惑”で荒波に

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尹大統領に追い打ちをかけたとも言えるのは、ファーストレディー・金建希(キム・ゴンヒ)夫人をめぐる数々の疑惑だ。

一時は9万人のファンクラブができるほどの人気を集めた金建希夫人。しかし、その人気とは裏腹に、これまでに様々な疑惑が指摘されている。

輸入車ディーラーの株価操作に関わったとされる疑惑。夫人が運営する展示会社に大手企業から協賛を受けたことをめぐる疑惑。高速道路が、親族が所有する土地の近くに通るよう建設計画を変更させた疑惑――。かつての名フレーズを借りれば、まるで「疑惑の総合商社」だ。

中でも一番の打撃となったのが、いわゆる“ディオール疑惑”。知人の牧師と面会した際に、高級ブランド「クリスチャン・ディオール」のバッグを受け取ったとされる疑惑だ。受け取る一部始終が“隠し撮り”されていたことから「逃れられない証拠がある」として、野党は追及に拍車をかけた。

しかし、疑惑に対して尹大統領は“だんまり”を決め込んだ。なんら説明がされないことに国民も不信感を強め、支持率は低迷。

その後、夫人のディオール疑惑については、検察による捜査が行われ、「嫌疑なし」との判断が示されたが、野党の攻撃は続いた。

国会で多数を占める野党。夫人の疑惑を捜査する特別検察官任命の法案を国会で可決させては、大統領側が拒否権を行使するという攻防が3度続いた。

防戦一方の中、尹大統領は起死回生を狙い、戒厳に突き進んだとみられているが、大統領の周辺環境なども影響したのではとの指摘もある。

■スマホとYouTube

実は尹大統領、日頃からスマートフォンでネットニュースを見たり、YouTubeを愛用したりしているという。この「スマホからの情報」が災いしたとの指摘がある。ネットやYouTubeで自分に都合の良い情報ばかりを繰り返し見聞きし、次第に「野党は巨悪」との極端な考えに傾いていったのではないかというのだ。

さらに、これに拍車を掛けたのが「側近」だ。

■“イエスマン”ばかりの側近

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いわゆる“イエスマン”ばかりで固められていたといわれる尹大統領の側近。人事では「お友達」ばかりが抜てきされたという。自らの“本籍”である検察出身者や同窓生らが重用されてきた。

さらに、苦言を言う人は遠ざけられ、次第に尹大統領にとって聞き心地の良いことばかりを言う関係者のみが側近に残っていった。

こうしたことから、尹大統領は「自分のやっていることは間違いない」と信じやすい環境に陥っていたと指摘されている。

さらに、災いになったとみられるのが、尹大統領の意志が強いとされる“性格”だ。

■頑固な性格が災いか

尹大統領と直接やりとりしたことのある外交関係者は、その性格について「頑固で、ぶれることがない」と分析している。「自分の考えに信念を持っていて、一度決めると周りの意見に左右されることなく、ぶれることがない」というのだ。

その典型ともされるのが、「日韓の関係改善」だ。冷え込んでいた関係の改善に向け、慎重に事を運ぼうとする周囲に対し、トップダウンで関係改善にシフトすると決断。懸案となっていた、いわゆる元徴用工問題をめぐり、韓国政府の財団が賠償を肩代わりする第三者弁済を決めた。

結果として、首脳間のシャトル外交も再開するなど、冷却していた関係は大幅に緩和された。

一方、「頑固で、ぶれることがない」性格は、逆説的に捉えると「周囲の意見は聞き入れない」ということにもなる。つまり、強みとも言える一面が、実は災いとなったことが浮き彫りになってきている。

2024年5月ごろから、本格的に戒厳を考え始めたという尹大統領。その意向を漏れ聞いた韓国軍の幹部は、反対する考えを伝えたという。しかし、その後も尹大統領の意志は変わることがなかった。

戒厳を宣言する直前、韓国大統領府に集まった首相や外相ら10人以上の閣僚は、全員が反対の意思を示したことが明らかになっている。

断続的に1時間以上続いた大統領への説得。中には懇願して思い直すよう伝えた閣僚もいたという。しかし、尹大統領は「私の判断で行うものだ」として、決して主張を曲げなかったという。

良い側面もあった頑固さが“最悪な方向”に働いた形だ。

極端な考えに傾倒し、それを止める力のある側近もおらず、そして最後の制止さえ、はねのけた。周りが見えなくなった「孤独な権力者」の極地だったとも言えそうだ。

2025年、尹大統領をめぐる弾劾審判や捜査は本格化する。孤独な権力者は一体何を語るのか。世界が、かたずをのんで見守っている。

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