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新将棋会館に藤井聡太八冠陥落 囲碁は世界制覇 2025年は初の女性棋士誕生か?

日テレNEWS NNN / 2024年12月29日 7時0分

2024年5月、王将就位式に臨む藤井七冠

日本将棋連盟創立100周年となった2024年は、将棋界では藤井聡太八冠陥落や新将棋会館のお披露目など、さまざまなニュースがありました。国際的な活躍もあった囲碁界も含め、担当記者が振り返ります。

(社会部・囲碁将棋担当 内田慧)

■八冠陥落“藤井を泣かせた男”

2024年6月、山梨県甲府市での叡王戦五番勝負第5局

2023年10月に前人未到の八冠を達成した藤井聡太七冠。2024年はタイトル独占を崩す挑戦者が現れるのか注目された。

これまで、タイトルを逃したことはなく、2024年も王将、棋王、名人と防衛し、タイトル戦連覇記録を過去最多の22まで伸ばした。そこに土をつけたのは、同い年の“藤井を泣かせた男”伊藤匠叡王だった。それは藤井七冠の背中を追い続けた男の3度目の挑戦のことだった。

■追い続けた背中

小学校3年生時の大会 右が藤井七冠、左が伊藤叡王、中央はこの大会で優勝した川島滉生さん。(提供:伊藤雅浩さん)

藤井七冠と伊藤叡王との初めての対局は、小学校3年生の時の大会だ。結果は伊藤叡王の勝利で、藤井七冠は泣いて悔しがったという。伊藤叡王と同じ道場に通っていた、この大会の優勝者・川島滉生さんは「たっくん(伊藤叡王)が、藤井さんのことを“とても強い人がいる”と言っていた。たっくんが人のことを強いというのを聞いたことがなかった。言うんだと思った」と印象に残っているという。

2017年6月、藤井七冠の対局の記録係を務める伊藤叡王

その後、藤井七冠は史上最年少でプロデビューを果たし、同じくプロを目指していた伊藤叡王は何度も記録係を務めた。目の前で同世代の活躍を目にする勝負師の心境は想像に難くない。伊藤叡王はある日、師匠の宮田利男八段に高校を中退したことを告げた。退路を断って、将棋で生きていくと決めた。

そして、2020年に伊藤叡王は17歳でプロ入りを果たすと、新人王の獲得、年間最高勝率、当時王座だった永瀬拓矢九段を破るなど、めきめきと頭角を現す。

藤井七冠と伊藤叡王の初のタイトル戦となった2023年10月の竜王戦七番勝負第1局

そして2023年、竜王戦という将棋界最高峰の戦いで、伊藤叡王は初のタイトル挑戦を果たす。第1局当時の2人あわせて41歳という同学年の史上最年少対決は大きな話題となった。結果は伊藤叡王のストレート負けで、藤井七冠は伊藤叡王を全く寄せ付けなかった。

そして、棋王戦で再び挑戦権を獲得した。タイトル奪取はならなかったものの、第1局で伊藤叡王はお互いに詰みの可能性がなくなる“持将棋”を目指して引き分けにし、不利とされる後手番をしのいだ。その後の、先手番をものにできず、藤井七冠に棋王の防衛を許した。

2024年6月、初タイトル獲得直後の伊藤叡王と八冠陥落直後の藤井七冠

伊藤叡王は叡王戦で、さらに挑戦権を獲得した。藤井七冠への3度目のタイトル戦では最終局までもつれ込んだ末、伊藤叡王がタイトルを奪取。藤井七冠のタイトル独占を崩した。

2024年8月、叡王就位式で師匠の宮田利男八段から花束を受け取る伊藤叡王

意外にも、伊藤叡王は自分がライバルだという認識はないという。タイトル獲得後も「まだまだ自分のほうが実力が不足している」と語っている。「ずっと藤井さんを追いかけて、ここまでこれた。藤井さんがいなかったら、タイトルは取れなかったと思う。藤井さんのおかげで、こういう舞台に上がることができている」。タイトル戦という最高の舞台で藤井七冠を破った伊藤叡王から出た言葉は、藤井七冠への感謝の言葉だった。

藤井七冠は、その後の防衛戦で七冠を堅守。棋聖戦と王位戦では永世称号の資格も最年少で獲得した。2024年の対局について藤井七冠は、結果は振るわなかったが、長く戦い続けるために作戦の幅を広げようとしたと振り返っている。

藤井七冠は2025年、再び伊藤叡王への挑戦権をかけて戦い始める。藤井七冠の2度目のタイトル独占がかかった伊藤叡王との戦いを見ることができるのか。その前には藤井七冠が持っているタイトルの防衛戦もある。2025年、最初のタイトル戦は王将戦七番勝負。第1局は1月12日と13日に静岡県掛川市で行われる。

■初の女性棋士誕生か

2024年9月、棋士編入試験第1局に挑む西山女流三冠

これまで女性で棋士になった人はいない。女性が対局をしている様子を見たことがあるかと思うが、それは女流棋士という、棋士とは別の立場にある人たちだ。

通常、棋士養成機関「奨励会」に入会し、原則26歳までに四段に昇段すれば、棋士となることができる。三段に上がると半年に1度行われるリーグ戦で上位2人は無条件に昇段することができるが、全国から集まった天才たちの夢を砕く最後の関門を、人は「地獄の三段リーグ」とも呼ぶ。

西山朋佳女流三冠は、奨励会で三段まで昇段し、3位につくことはできたが、昇段することはかなわず、女流棋士に転向していた。

これまで三段リーグを突破して、棋士となった女性はいないが、棋士となるには、もう一つの仕組みがある。それが棋士編入試験だ。プロ公式戦において、棋士に対し10勝以上し、6割5分以上の勝率を収めたアマチュアや女流棋士に受験資格が与えられる。

西山女流三冠は2024年7月の対局に勝利し、受験資格を獲得、その日のうちに受験の意向を示した。試験は若手棋士5人を相手に月に1度対局を行い、3勝すれば合格となる五番勝負だ。

この棋士編入試験制度の受験は西山女流三冠で5人目だ。これまで3人がプロ入りし、女性では2022年に初めて福間(旧姓里見)香奈女流五冠が受験したが、3連敗し不合格となっていた。

9月の第1局で勝利したものの、第2局、第3局と連敗し、西山女流三冠は追い込まれた。そして、12月の第4局では勝って、踏みとどまり、成績を2勝2敗にし、女性初の棋士誕生まであと1勝とした。

2025年に初めて女性棋士の誕生となるのか、西山女流三冠は運命の最終局に向け「大一番、泣いても笑っても最後。悔いのないように挑みたい」と語っている。

■獲得賞金過去最高

2024年2月に発表された藤井聡太七冠の2023年に獲得した賞金の総額は1億8634万円。八大タイトルの賞金すべてが入った、その金額は1995年の羽生善治九段を超えて過去最高となった。

藤井七冠は特に高い買い物はしなかったというが、7つのタイトルを防衛した藤井七冠は2024年の賞金ランキングも1位となる見込み。2024年の賞金ランキングは2025年の1月下旬から2月初旬に発表される見通しだ。

■将棋界の盛り上がりのウラで…

藤井七冠の活躍を中心に人気が高まっている将棋界だが、2024年には囲碁界でも大きな出来事があったこともお伝えしたい。それは国際棋戦での日本勢の優勝だ。

2024年9月、中国での応氏杯決勝に挑む一力遼四冠(写真提供:日本棋院)

今世紀に入って、日本の囲碁界は中国や韓国に後れを取り、国際棋戦では勝てなくなっていたが、2024年9月には一力遼四冠が中国で行われた応氏杯世界選手権で優勝。4年に一度開催される囲碁界のオリンピックのような大会で、主要な国際棋戦で日本の棋士優勝は19年ぶりだ。

2024年10月、中国での呉清源杯決勝に挑む上野愛咲美五段(写真提供:日本棋院)

また12月にも、中国で行われた呉清源杯世界女子囲碁オープン戦で上野愛咲美五段が優勝。主要国際棋戦で優勝した初めての日本の女性棋士となった。

2024年12月、韓国の女流棋聖戦決勝に挑む仲邑菫三段(写真提供:Cyberoro)

★写真⑪★

さらに、仲邑菫三段は韓国に渡って現地の棋士として活動している。12月に行われた韓国の女流棋聖戦では韓国の女性棋士ランキング1位の棋士に対し、勝利目前まで迫ったが、終盤のミスで敗れ、初タイトルとはならなかったものの、タイトルを獲得する日は遠くないだろう。

■日本の棋士躍進の秘訣

日本の棋士の世界の活躍について、ナショナルチーム監督の高尾紳路九段は「一力遼棋聖が提唱して、2023年からナショナルチームの研究会を新しい形にしました。選手同士で厳しく切磋琢磨した成果だと思います。これからも選手のレベルの底上げ、若手の躍進に期待していただき、日本囲碁界を応援してください」と語っている。

■囲碁の賞金

ちなみに応氏杯の賞金は40万ドル、日本円でおよそ5700万円で、日本のどの棋戦もの優勝賞金を上回っている。海外の棋戦にも出場することができる囲碁棋士だが、日本の囲碁棋士の獲得賞金過去最高額はいくらなのか。

井山裕太三冠 2024年11月、日本棋院にて

日本棋院によると、井山裕太三冠は2015年に、およそ1億7200万円が過去最高となっている。また、井山三冠は2012年から2022年まで、年間の獲得賞金の1億円超えが続いた。

■囲碁界の課題

ただし、日本全体の囲碁人口の減少は深刻な状況だ。「レジャー白書2024」によると、最新の日本の囲碁人口は120万人で、10年で3分の1ほどに減少している。国際棋戦での日本の棋士の活躍が、囲碁に関心を持つ人が増えるきっかけになることが期待される。

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