“過失運転”から“危険運転”へ 相次いだ訴因変更 遺族のこれまでの戦いと裁判への思い
日テレNEWS NNN / 2024年12月31日 14時0分
栃木・群馬で相次いだ過失運転致死傷罪から危険運転致死傷罪への訴因変更。「危険運転への風が吹いている」訴因変更を求め活動続けていた遺族は、追い風を感じた。
罪名の違いが生む「故意」か「不注意」かの大きな差。遺族のこれまでの戦いとこれからの裁判への思いは。
(社会部 浅賀慧祐)
■故意か、不注意か 栃木・宇都宮市の160キロ追突事故の遺族のこれまでの“戦い”
事故が“不注意”で起きたか“故意”で起きたかには大きな「差」がある。
事故を起こしたドライバーへの罪のうち、過失運転致死傷罪は“不注意”で事故を起こした場合で法定刑の上限は7年。一方、危険運転致死傷罪は“故意”に事故を起こした場合で法定刑の上限が20年となる。
2023年2月、栃木県宇都宮市の国道で、時速およそ160キロで走行していた乗用車がバイクに追突する事故が起きた。この事故で、バイクに乗っていた佐々木一匡さん(63)が死亡。車を運転していた石田颯汰被告(21)は、“過失”運転致死の罪で起訴されていた。
しかし、一匡さんの妻・多恵子さんは当時から「法定速度を100キロ以上も上回る速度で追突したにもかかわらず危険運転にあたらないという判断はおかしい」などとして、宇都宮地検に危険運転致死罪への訴因変更を求める要望書を提出したほか、街頭やインターネットなどで署名活動を行ってきた。
こうした中、事故からおよそ1年半がたった2024年10月に動きが。
宇都宮地検は裁判所に対し、起訴内容を過失運転致死の罪からより法定刑の重い危険運転致死の罪に変更する請求を行ったのだ。裁判はすでに一度“過失運転”で行われていたが、裁判所は請求を認め、石田被告の裁判はやり直しとなった。
一匡さんの妻・多恵子さん
「できたよ、やっとできたよ遅くなってごめんねと(一匡さんに)報告しました」「私が一匡さんのところにいったときは『よくやった』と褒めてほしい」
■「危険運転への風が吹いている」相次いだ訴因変更に感じた追い風
訴因変更の動きは偶然にも続いた。
宇都宮の訴因変更の翌週、群馬県伊勢崎市で家族3人が死亡した事故でも、被告の起訴内容が過失運転致死傷罪から危険運転致死傷罪へ訴因変更されたのだ。
この事故は、2024年のゴールデンウィークに飲酒運転をしていた鈴木吾郎被告のトラックが、レジャー施設からの帰宅途中だった車に衝突し、塚越湊斗ちゃん(2)、父親の寛人さん(26)、祖父の正宏さん(53)家族3人が死亡したものだった。
一匡さんの妻・多恵子さん
「たまたまでも良い流れだなと。危険運転への風が吹いているっていうのかな、後押しをしてくれる風が吹いている(と思った)」
このとき、訴因変更を求める署名活動をしていた伊勢崎の事故の遺族を手伝うため、群馬県を訪れていた多恵子さんは、遺族と一緒に喜びをわかちあったという。
タイミングは偶然だったかもしれないが、危険運転致死傷罪をめぐる動きに確かに感じた追い風。
■法務省では検討会が報告書をまとめる 法改正なども検討へ
危険運転致死傷罪をめぐっては、これまでにも法定速度を大幅に超えた速度での事故や飲酒運転による死傷事故でも適用のハードルが高いとして、要件の見直しを求める声があがっていた。
全国各地で訴因変更を求める署名活動が行われるなど、その動きは年々活発化しているといえる。
こうした中、法務省は危険運転致死傷罪の適用要件の見直しについて、2024年11月まで検討会を行い議論を進めてきた。とりまとめられた報告書では「危険運転」を適用する基準として例えば、高速度については数値基準を道路の最高速度の「2倍」や「1.5倍」とすることが考えられるとしている。
今後、法務省では報告書の内容を踏まえ、法改正の必要性などについてさらなる検討が進められていくことになる。
一匡さんの妻・多恵子さん
「交通事故でも死亡事故であれば一度は危険運転を疑った捜査をしてほしい。遺族側から見てみれば過失という言葉にすごく抵抗がある。交通事故であろうと、殺人であろうと亡くなっていることには変わりはない」
■「危険運転は前提」2025年以降行われる裁判に向けた今の思い
宇都宮の追突事故の裁判については、いまだ再開の日程は決まっていない。
多恵子さんは裁判が始まるまでの期間、“元気でいなければ”と、事故後に不調が続いた体や気持ちを整え、本来の自分・生活を取り戻していく時間にあてているという。
ただ、事故からおよそ2年となるいまも、石田被告やその家族からの謝罪は一度もない。法廷で石田被告の顔を見ると冷静になれないかもしれないと、不安に感じることもあるという。
一匡さんは戻ってこない。そして、家族の時間も止まったまま。
知りたいのは事故がなぜ起きたのかという真実だ。
一匡さんの妻・多恵子さん
「私としては危険運転(と認められた判決)となるのは前提」「遺族の気持ちと裁判の在り方は何となく理解していて(刑の)相場があるかもしれないけど最高刑を求めます」「若いんだからとか未来があるからとかそういうことではなく事実は事実はとして受け止めてもらわないと何の抑止にもならないので裁判所にはきちんとした結果を求め続けたいと思います」
この記事に関連するニュース
-
“飲酒運転”に“30キロオーバー”―「これがなぜ、危険運転にならないのか」 事故で家族3人を奪われた遺族が、分かりにくい法律に思うこと
47NEWS / 2024年12月27日 9時30分
-
【訴え】富山市総曲輪の飲酒運転死亡事故 母を失った遺族「危険運転の適用を」
KNB北日本放送 / 2024年12月20日 22時16分
-
「なぜお酒やめられない? 運転前に…」 飲酒運転による死亡事故で24歳の男を逮捕…! SNSでは「飲酒運転=危険運転に」の声も! 12月は「特に気をつけるべき」理由とは 元警察官が解説
くるまのニュース / 2024年12月20日 9時10分
-
大分194キロ事故、双方が控訴 危険運転致死罪、懲役8年不服で
共同通信 / 2024年12月12日 18時43分
-
3人死傷・危険運転致死傷疑いで男を送検 危険運転について記者解説
広島テレビ ニュース / 2024年12月4日 20時7分
ランキング
-
1住宅に侵入、鉢合わせで体当たり 茨城、何も取らずに4人が逃走
共同通信 / 2025年1月3日 7時12分
-
2青森 アメダス酸ヶ湯で積雪4mに到達 観測史上最早 大雪警報発表
ウェザーニュース / 2025年1月2日 23時0分
-
380歳母親の口元に粘着テープを巻いて殺害しようとした疑い 56歳女を逮捕 「母に落ち着いてほしかっただけ」と一部否認
ABCニュース / 2025年1月2日 21時3分
-
42025年「新型コロナ」新たなステージに?背景には…トランプ政権の厚生長官がコロナやワクチンを徹底調査すると明言【大石邦彦が聞く】
CBCテレビ / 2025年1月1日 9時2分
-
5参院と都議に衆院も?石破首相は可能性否定せず…公明が夏の“トリプル選挙”に危機感「試練の巳年」
カナロコ by 神奈川新聞 / 2025年1月2日 18時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください