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日本の大動脈「東海道新幹線」激甚化する大雨で度重なる運休も 雨にナゼ弱い?

日テレNEWS NNN / 2024年12月31日 16時0分

東海道新幹線

開業60年を迎えた東海道新幹線。記念すべき年となった2024年は、大雨に苦しめられた年でもありました。夏の台風では、東海道新幹線の雨に対するぜい弱さを露呈させました。

雨に弱いワケは何か。そこには東海道新幹線の特徴的な「ある構造」にありました。

■雨で3日間にもおよぶ計画運休も

2024年8月、日本列島を襲った「台風7号」と「台風10号」。この台風によって東海道新幹線は大きな影響を受けました。

お盆のUターンラッシュの時期を直撃した「台風7号」では一部区間が計画運休となり、多くの帰省客が予定の変更を余儀なくされました。さらに九州を中心に猛威をふるった「台風10号」では、静岡県内でも大雨に。その影響で、全線で運転を見合わせる日があったほか、これまでで最長となる3日連続で計画運休を行うなど、日本の大動脈は数日にわたり混乱しました。

改めて「東海道新幹線は雨に弱い」と感じた人も多くいたのではないでしょうか。

■運転見合わせを決める“4つの基準”

2024年8月 台風10号東京駅の様子

JR東海は、東海道新幹線の沿線59か所に、雨量計を設置。その規制値をもとに、運転を見合わせる基準を決めています。

①1時間の雨量が60mm以上

②1時間の雨量が40mm以上で、24時間の雨量が150mm以上

③24時間の雨量が300mm以上かつ、10分間の雨量が2mm以上

④土壌雨量指数:降った雨が土壌中に水分量としてどれだけたまっているかを数値化。土砂災害の発生危険度を示す。

このうち1つでも規制値を超えると、安全のため運転を見合わせます。

今回の台風10号では、大雨となった静岡県内の雨量計が規制値超え。大雨は降り続き、特に、24時間の雨量が規制値を大きく上回り、なかなか規制値を下回らず、運転見合わせや連日の計画運休につながったのです。

■雨の影響を受けやすい「ある構造」

東海道新幹線と東北新幹線の土台の違い

実は東海道新幹線、ほかの新幹線に比べて大雨に弱いと言われている、そのワケは。東海道新幹線の線路の「土台」にあります。

東海道新幹線の土台は、全体の半数が「土」を使った土台で、そのうち44%が、「盛り土」となっています。

盛り土は、大雨が降ると土が緩み崩れるリスクが高まります。盛り土が崩れてしまうと、最悪の場合は脱線につながる可能性があるため、雨量や土壌にしみ込んだ水の量によっては、運転見合わせの判断をする必要があるのです。1964年10月1日に日本で初めての新幹線として開業した東海道新幹線。JR東海によると当時は地盤の条件などから、コンクリートで造る高架橋に線路を作ることが技術的にも難しく、さらに建設コストもかかるため、盛り土が多く採用されたということです。

一方、東海道新幹線よりも後に開業した東北新幹線などJR東日本の新幹線では、「コンクリート」でできた高架橋などを走る区間が、ほとんどで、盛り土の区間は1割未満。JR西日本でも山陽新幹線の盛り土区間は、およそ10%ほどです。

■2003年までに盛り土を強化

JR東海の豪雨対策 のり面工と排水パイプ(提供:JR東海)

弱点ともいえる“盛り土”、JR東海は国鉄時代から盛り土対策を進めてきました。

例えば、盛り土に雨水が入ることを防ぐため、盛り土のり面をコンクリートで覆う対策を行っています。さらに線路部分を覆っているのが砂利のため、線路上からも雨水がしみ込むことから盛り土の中にパイプを差し込み、しみ込んだ雨水を外に出す排水機能の強化も進めてきました。

こうした一連の対策工事は2003年までに完了していて、これにより雨の規制値は、国鉄時代の1時間あたり40mmから、1時間あたり60mmに引き上げられ現在に至っています。

JR東海は、近年の激甚化する気象に対応できるよう、「今後も新たな知見や研究結果を踏まえて、さらに安全性を向上し、最適な運転規制につなげていく」としています。

■“盛り土”は雪対策にも影響?

例年よりも雪が多くなっている、この冬。東海道新幹線は雪とも戦ってきました。滋賀県の米原、関ケ原地区です。山に挟まれ雪雲が発達する、この区間は冬の期間、大雪の影響を受けます。このエリアでは始発直前まで専用の車両で除雪を行い、運転に支障が出ないように対策を進めていますが、高速走行する新幹線ゆえの雪の悩みもあります。

雪が積もった線路上を高速の新幹線が通過すると、雪が舞い上がり車両の下に雪が付着するそうです。その雪が塊となり、走行中に線路に落ちると線路上の設備などが損傷してしまうことがあります。

これを防ぐため、上越新幹線や東北新幹線など豪雪地帯を走る新幹線を抱えるJR東日本では、線路上にスプリンクラーを設置。スプリンクラーから温水を大量にまいて雪を溶かすため、速度規制をほとんどすることなく通常通りの運行ができているということです。

JR東海でもスプリンクラーを設置していますが、東北や上越新幹線ほど大量に温水をまくことはできません。「盛り土」の問題です。JR東日本の新幹線は、その多くの土台がコンクリートですが、東海道新幹線は盛り土に大量の水をまくと盛り土が緩んでしまうため、そうはいきません。そのため、影響がない程度の水をまき、湿った「濡れ雪」にして、雪が舞い上がることを防いでいるということです。ただ線路上に雪は残ってしまうため、積もった量などによっては、速度を落として運行する、徐行運転をおこなうためダイヤが乱れることがあります。

■“盛り土問題は”リニアが救世主?

東海道新幹線とリニア中央新幹線

東京・名古屋・大阪の3大都市を結び、多くの人を運ぶ東海道新幹線。JR東海が近年、激甚化する自然災害に対する切り札として考えているのが現在、東京の品川から名古屋間で工事が進められているリニア中央新幹線です。

JR東海の担当者も「リニア中央新幹線の開業で、大動脈輸送を二重化することに大きな意義がある」と話しています。

リニア中央新幹線は、路線の8割がトンネルでターミナル駅は地下に設置されることから、雨や風、さらには雪などの天候の影響を受けにくいとされています。こうしたことからJR東海は、リニア中央新幹線を「自然災害に強い」新幹線だとしている。

並行して走るリニア中央新幹線と東海道新幹線の2つの手段で大動脈輸送を担うことで、今後、大雨などの災害で東海道新幹線がマヒしたとしても、大都市間の輸送を止めることなく運行できると言います。そのためにも、リニア中央新幹線の早期開業が求められていますが、品川-名古屋間の静岡工区では、いまだ工事に着工できていない場所もあります。

JR東海は、当初の目標だった2027年の開業を断念していて、開業のメドは分からないままです。開業はいつになるのか。自然災害が多い中でも日本の大動脈輸送を安定的におこなうため、リニア中央新幹線の今後の動きにも注目していく必要があります。

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