2025年問題~5人に1人が75歳以上~介護職員増やせ! 職員が被写体になり、自らの言葉で魅力を発信
日テレNEWS NNN / 2025年1月3日 10時0分
2025年は日本の高齢化がさらに進み、約3人に1人が65歳以上、約5人に1人が75歳以上の後期高齢者になると言われている。
医療や介護を必要とする人が増える一方で、働く若い世代の人口は少なく、直近の発表によると、全国の介護分野で働く職員は2023年度には前年度より減ってしまった。介護業界では人材確保のため、介護職員自らが被写体になり、魅力を発信する新たな動きがある。
(社会部 粕谷真優)
■介護職員の印象的な写真と言葉で仕事の魅力を発信
写真に写るのは介護の最前線で活躍する介護職員。被写体となる職員は自治体を通じて募集され、撮影担当者が背景や照明などを準備して介護施設へ趣く。施設の一角を臨時の撮影スペースに変え、職員の“自己表現”の場にする。
この活動をしているのはクリエイター兼一般社団法人KAiGO PRiDE代表理事のマンジョット・ベディ氏だ。ベディ氏らは広告業界での経験をいかして「KAiGO ✕ Creative」をモットーに、「辛い、大変」との印象を持たれがちな介護現場の魅力を職員本人の目線で発信している。介護職員を増やすための国や自治体による広報活動などにも協力し、介護業界に新たな風を吹かせている。
この団体のHPをみると、介護職員のユニークなポーズや表情が白黒の写真で表現され、その本人の言葉も添えられている。やりがいや魅力、仕事で感じたことなど、まさに介護職員の「プライド」だ。白黒写真にしたのは、色の情報で本人のイメージが左右されないようにするためだという。
写真に添えられた言葉は、
手をつなぐ。『あー安心する』と言われた。ただそれだけの言葉にグッとくる。
多くの人に知ってほしい、未来を照らす職業であること。『待ってたよ』の一言が、限りない喜びと自信を私に与えてくれる。
この仕事は『前向きに生きたい』と思わせる大いなる力がある。
体力も頭も使う、大変なのに、こんなにも笑顔になれる、素敵な仕事。
ベディ氏は「介護に関係ない人はいない」と話す。一人一人が自分事として介護をとらえられる社会をつくるためにも、介護業界のブランディング(独自の価値を広く認識してもらうため、魅力などを伝えること)の強化が必要だと強調する。
そして、日本の介護は日本人の「おもてなしスピリッツ」に似ているとベディ氏は考えている。細かいことに気を配り、必要なものを提供するという傾向は、海外から見ると日本が誇れる点だという。
そうした介護を担う職員の情熱やプライドを彼ら自身の言葉で社会に発信し、介護に興味を持つ人、介護の仕事に参加する人が増えるようにしたいというベディ氏の強い使命感があった。
■2025年は超高齢化社会の様々な問題が表面化する年
内閣府のデータによると、2025年、日本国内では約5人に1人が75歳以上、約3人に1人が65歳以上になる。
第二次世界大戦後、混乱から立ち直る時期の1947年から49年には大量のこども(合計約800万人)が生まれ、「団塊の世代」と呼ばれていて、その人たちが2025年には全員75歳以上となる。少子化で働く世代が少ない一方、高齢者が非常に多い、という世界でも類を見ない超高齢化社会になることから「2025年問題」と言われ、様々な社会問題が懸念されている。
厚生労働省の社会・援護局福祉基盤課の福祉人材確保対策室の𠮷田昌司室長によると、介護職員の数は介護保険制度が始まった2000年からの約20年で約54万人から約215万人(2022年度)にまで増加したという。
しかし介護を必要とする人も増え続けるため、厚労省は必要な介護職員の数を2025年度末には約243 万人、2040年度末には約280 万人と見込んでいる。介護職員が足りなければ、施設の建物があっても高齢者が入居できず、高齢者の自宅への訪問介護も非常に限られた回数になってしまう。
2024年12月の厚労省発表によると、2023年10月時点で全国の介護職員は約212万6000人。増やすべきところが前年度に比べ約3万人も減ってしまった。
介護職員を毎年数万人ずつ増やすにはどうすべきか、大きな課題だ。介護職員をやめる人が以前は2割にのぼり、問題になっていたが、給与引き上げや職場環境の整備が進んだことなどから、離職率は約13%にまで改善されたという。
𠮷田室長は「処遇改善だけでなく、介護職として将来どうなるのか、結婚できるのか、子どもを産んで働けるのか、どうスキルアップしていくのかとか、ちゃんとイメージできた方が働きやすい」とキャリアパスを具体的に示すことも大切だと話す。
■介護職の魅力を職員自らが発信する重要性
厚労省も2025年を見据えて、介護職員を増やそうとしてきたという。介護職員の収入を引き上げる措置のほか、介護経験のない中高年に研修を行い、その後の介護職員体験や職場とのマッチングまで行う事業や、福祉系の高校に通う学生への資金援助、教科書に介護の内容を盛り込み、授業で学ぶほか、介護の仕事の魅力も発信してきた。
2024年度から新たに加わったのが、介護職員自らが企画し発信する枠組みだ。𠮷田室長は「これまでは、介護職員本人が語ることが少なかった。介護に対する思いや等身大の姿を見せることが社会へのインパクトに繋がる」と話し、上記のKAiGO PRiDEなど民間事業者や自治体と協力して、さらに発信を強め、人材確保につなげたいとしている。
■介護職員と直接交流したことで介護系に進学した生徒も
自治体の取り組みとしては、たとえば、広島県は8年連続で介護の日フェスタを開催し、その後、2022年度には「カイゴのガッコウ」という介護職員らによる交流会や出前講座など高校生向けのイベントを11月11日の介護の日に合わせて実施した。実際に介護職員と会って、仕事内容を詳しく学んだことで、介護系の学校に進学を決めた生徒もいたという。
介護職員を増やすには、学校の先生や保護者などが子どもたちに「介護はいい職種だから、行ってみたら」と勧めることができるような環境も理想だ。
また直接働くまでいかなくても、介護の仕事を理解し応援する人が増えれば、介護職の社会的地位が上がり、その仕事を目指す人が増えることにもつながる。給与アップなど処遇改善は必須だが、介護職員の仕事や思いを社会に届けることも重要だと感じる。
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