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温室効果ガス排出量「世界2位」のアメリカ…トランプ新政権発足で気候変動対策は?

日テレNEWS NNN / 2025年1月4日 15時0分

トランプ氏 「パリ協定」再び離脱へ

NASA=アメリカ航空宇宙局は「2024年の夏は観測史上最も暑かった」と発表した。暑さの影響による死者は世界で年間およそ50万人にのぼるとされ、気候変動対策は待ったなしの状況だ。そんな中、気候変動対策に消極的なトランプ氏が2025年1月20日、アメリカ新大統領に就任する。温室効果ガス排出量が「世界第2位」のアメリカを率いるトランプ新大統領の下、気候変動対策はどうなるのか。

(NNNニューヨーク支局長・気象予報士 末岡寛雄)

■2024年は「最も暑い年」…年間50万人近くが死亡

ハリケーン「へリーン」は甚大な被害をもたらした

NASA=アメリカ航空宇宙局によると、2024年夏は記録を取り始めた1880年以来、最も暑い夏だったという。気候変動による異常気象は世界各地で相次いだ。海水温の上昇で、アメリカでは発達したハリケーンが次々と上陸。一部地域では1000年に1度といわれるほどの猛烈な雨が降った。9月にフロリダ州に上陸したハリケーン「へリーン」は、沿岸部から600キロ以上離れた内陸でも異常な雨を降らし、犠牲者は230人以上にのぼった。

NOAA=アメリカ海洋大気局・地球流体力学研究所の村上裕之研究員らのグループによると、過去40年間で西日本で「異常な雨」が著しく増加しているという。最新の研究では、今後はハワイ付近で発達したハリケーンが増え、マウイ島を襲ったような山火事が今後増える可能性があると指摘する。

国連のグテーレス事務総長は「地球はいっそう暑くなり、あらゆる場所が危険になっている。暑さに関連する死者は年間50万人近くと推計される」と警鐘を鳴らす。その上で、「気候変動の原因は“化石燃料”の使用だ」として、気候変動に立ち向かうため一刻も早く行動を起こさないといけないと何度も世界に呼びかけている。

■トランプ新政権…化石燃料シフト鮮明 「パリ協定」再び離脱へ

トランプ氏 「パリ協定」再び離脱へ

気候変動問題に対する国際的な枠組みが「パリ協定」だ。世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5度に抑えることを目標として、締結国は温室効果ガスの削減目標を定める必要がある。

トランプ次期大統領は前回、大統領に就任した2017年にパリ協定からの離脱を表明し、アメリカは2020年に正式に離脱。しかし、21年に就任したバイデン大統領はパリ協定に復帰し、脱炭素社会に向けてクリーンエネルギーや電気自動車の普及を進めた。アメリカの温室効果ガス排出量は、中国に次ぐ世界2位。全世界のおよそ15%を占めるため、アメリカの対策は大きく世界に影響することになる。

インフレなど経済への不満の声を受けて当選したトランプ次期大統領が、選挙期間中にくり返し口にしていたフレーズが「ドリル・ベイビー・ドリル(掘って掘って掘りまくれ)」。国内での石油や天然ガスの採掘を進めて生産量を増やすことで、大統領就任後18か月以内にエネルギーと電力価格を半額にすると有権者に豪語している。

トランプ氏の化石燃料シフトは、閣僚候補からも鮮明だ。エネルギー省長官候補のクリス・ライト氏は、石油採掘会社のCEO。さらに「国家エネルギー会議」を新たに設け、議長には化石燃料業界と密接な関係を持つノースダコタ州のダグ・バーガム知事を起用する予定だ。トランプ氏は声明で「アメリカには大量の『黄金の液体』がある。掘って掘って掘りまくって石油とガスの優位性を回復する」と表明している。

ニューヨーク・タイムズなどはトランプ次期大統領の政権移行チームは、「パリ協定」から再び離脱する大統領令の準備を進めているほか、資源の掘削を許可するため、なんと国立公園の面積を縮小することなども検討していると報じている。

■「脱炭素」への取り組みは後退? クリーンエネルギー政策で共和党地盤が“得している”面も…

バイデン政権の融資で建設された亜鉛電池工場(提供:EOS)

トランプ次期大統領の政策転換で、アメリカはバイデン政権下で推進してきたクリーンエネルギー対策から180度転換し、温室効果ガスをまき散らすようになるのか。取材をすると、事情は複雑そうだ。

バイデン政権は気候変動対策の主軸として、2022年にインフレ削減法を施行。10年間で3900億ドル、日本円で55兆円以上の予算を割き、風力発電や太陽光発電、電気自動車のバッテリー工場への助成金に充てるとしている。

ニューヨーク・タイムズは、2022年の施行からの2年間でクリーンエネルギーに関する助成金の80%が、トランプ氏率いる共和党の選挙区に流れていると指摘する。一体どういうことなのか。

日本の商社関係者によると、太陽光発電施設が設置できるような日当たりが良い広大な土地があるのは、共和党支持者が多い「アメリカの“田舎”」だという。クリーンエネルギー推進政策で共和党の地盤が得しているという側面もあるという。

ニューヨーク・タイムズは、クリーンエネルギーへの補助金を「打ち切ることは政治的には困難だ」と指摘している。さらに、自動車メーカーも電気自動車への移行にすでに数十億ドルを投資していて、排出量規制を撤廃することは望んでいないとしている。トランプ氏は化石燃料の増産を強調するが、脱炭素への取り組みが一気に後退するかというわけでもなさそうだ。

気候変動問題は、地球の未来に直結する。温室効果ガス排出量世界2位のアメリカの影響は大きい。目先の「カネ」ではなく、人類の将来を見据えた政策決定を期待したい。

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