北朝鮮を30年以上調査・分析 公安調査庁の調査官に聞く北朝鮮の最新事情とは?
日テレNEWS NNN / 2025年1月5日 10時0分
■“情報のプロ”公安調査庁の調査官 北朝鮮を30年以上分析
公安調査庁──国内外の様々な情報の調査・分析を行う「情報のプロ」集団である。法務省の外局として存在しており、そこで働くのは特殊な訓練などを受けた公務員たちだ。
日本テレビが取材をしたのは、公安調査庁で北朝鮮の調査・分析を30年以上行ってきた瀬下政行調査官。今回は、調査官ならではの視点で見る北朝鮮の最新事情について話を聞いた。
(社会部 小林大将)
■“調査官の目”北朝鮮の報道画像を分析
まず瀬下調査官が見せてくれたのは、北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」(2024年9月21日付)に掲載された1枚の写真。整えられた区画に、塗り立てのペンキがまぶしい住宅がいくつも建築された風景が写っている。
記事の内容は、北朝鮮政府が新築した住宅を農村部の住民へ引き渡したことを報じるものだという。瀬下調査官によると、この報道には、経済制裁による北朝鮮の経済悪化を背景に、国民が抱える不満を抑える狙いがあるという。
一方、こうした報道からは北朝鮮が“意図しない”内部事情が垣間見える場合があるというのだ。
■農村部の新築住宅に煙突 ガスや電気は不通か?
瀬下調査官は写真のある部分に注目した。
瀬下調査官
「屋根にエントツがついていて、おそらく炊事場につながっている。練炭などで火をおこしていて、ガスは通っていないのではないか」
住宅の屋根に立つ煙突は、住人らがガスを使わずに火をおこして炊事を行っていることの証左ではないかという。
さらに、写真には電柱や電線も見当たらないことに気が付く。電線は地下を通っている可能性も否定できないが、住宅の軒先に電力を必要とするような電気設備もなく、日常的に電力を使用する形跡は見当たらない。
瀬下調査官によると、この写真からは北朝鮮の農村部では未だに電気・ガスといったインフラの整備が進んでいない可能性があることが読み取れるという。
■住宅1軒に2世帯 住人同士による相互監視システム
次に注目したのは住宅の庭。
瀬下調査官
「庭が半分に仕切られている。北朝鮮ならではの特徴です」
庭のあたりをよく見てみると、確かに柵のようなものでスペースが区切られているのが分かる。北朝鮮ならではの特徴とはどういうことなのか?
瀬下調査官
「北朝鮮当局の施策で、1軒に2世帯を住ませることで互いに監視ができるような構造になっている」
同じ屋根の下に住む住人が互いに監視をしあう――。瀬下調査官によると、北朝鮮では治安を維持するための相互監視システムがあることが分かっていて、今もそのシステムが存在している可能性があると指摘する。
■突如現れたジュエ氏とみられる金正恩総書記の娘
続いて金正恩総書記の娘について話を聞いた。今では北朝鮮の報道でその姿を見ることも珍しくはなくなったが、そもそも、この少女についてはどのようなことが分かっているのか――。
瀬下調査官
「2022年の11月に初めてその姿が公開されましたが、北朝鮮は一貫して彼女が“金正恩の愛する御嬢様”であること以外、名前や年齢などの情報は一切出していない」「2013年に訪朝したアメリカの元NBA選手が金正恩に会った際、赤ちゃんだった娘を“ジュエ”と紹介されたそうです」
北朝鮮ではこの少女について、金正恩総書記の娘であること以外は名前すらも公にされていないというのだ。瀬下調査官によれば、こうした情報を公開しないことによって人物の神秘性を醸成し、国民の関心を集める狙いがあるのだという。
■少女は後継者なのか?初登場シーンに隠された狙いとは
将来、この少女は金正恩総書記の後継者になるのだろうか――。
瀬下調査官
「それについては研究者の間でも議論が続いています。この少女が金正恩の隣に頻繁に登場している様子を見ると、少女が後継者になり得る有力な存在であることは確かです」
金正恩総書記には後継者となる長男がいるという説もある。しかし、この少女の登場により、識者の間では見方に変化が出てきているという。では、少女が後継者となる可能性を示す根拠はあるのか?瀬下調査官は少女が初めて登場した報道内容について振り返る。
瀬下調査官
「彼女の最初の登場がICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射の時ですよね。これは、彼女が金正恩からミサイルという革命に重要な武器を“受け継ぐ者”であるというストーリーを作っているのではないか」
およそ2年前、北朝鮮国営の「朝鮮中央テレビ」で、北朝鮮のミサイル発射場に金正恩総書記と“その娘”が出向いたと報じられ、突如現れたその存在に世間が大いに驚いたことは記憶に新しい。
瀬下調査官は、金正恩総書記が娘のお披露目の場としてミサイルの発射場を選んだことについて、将来、彼女が権力を継承することに説得力を持たせるような狙いがあったのでは、と指摘する。
■公安調査庁の仕事 「情報」で日本の安全を守る
公安調査庁では、このような北朝鮮の公開情報から得た情報などをもとに、北朝鮮の内部事情の調査・分析を続けている。
瀬下調査官
「情報の中には、時々彼らの中の思想のようなものが垣間見えることもあるし、発信しているメッセージの主張、本音をうかがわせる部分もあります」
公開情報の行間を読み、その真意を分析する。閉鎖的な体制をとる北朝鮮についてはこうした公開情報の分析が特に重要になるが、その情報にはフェイクが含まれている場合もあるため、慎重を要する作業になるという。
今後、緊迫する国際情勢の中で日本はどう立ち回るべきなのか。こうした国内外の情報分析は、ますますその重要度が増すのではないだろうか。
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