総理番記者が「石破構文」を徹底分析…国会答弁約22万語から見えた「3つの特徴」 今年の政権運営のポイントとは?
日テレNEWS NNN / 2025年1月5日 18時0分
2025年、石破政権の“仕事始め”は、あす1月6日。少数与党国会という厳しい状況の中、今年の政権の行方はどうなるのか?それを占うべく、総理番記者が約22万語の首相答弁を徹底分析。野党が「石破構文」とも揶揄した首相の弱点とは?少数与党国会を打破する、首相の戦略とは?(日本テレビ政治部総理番記者 糸繰雄亮)
去年12月、石破首相は就任後、初の予算委員会に臨んだ。2025年の政権運営を占うにあたり、カギはその臨時国会での首相答弁にあるとみて、8日間にわたる予算委員会での首相答弁「約22万語」を分析してみた。すると、一番多かった語句や象徴的なやりとりから「3つの特徴」が浮かび上がってきた。
■特徴① 最多ワード「議論」…「熟議の国会」掲げる首相の姿
多く使われた言葉が何かを“ひと目”でわかるように表示するシステムを使って、首相答弁を分析したものが上の図だ。石破首相が臨時国会予算委員会での答弁で実際に使った言葉を多い順に並べてみると、1位は「議論」だった。
【石破首相の使った言葉ランキング】
1位:議論
2位:私ども
3位:指摘
4位:委員
5位:国民
石破首相が多く使った言葉から見えたモノは何か?注目したのは、1位の「議論」、2位の「私ども」、4位の「委員」。この「委員」とは、国会の委員会審議中に質問に立った議員を呼ぶ際の呼称だ。厳密に決まっているものではないが、石破首相は「○○委員」と呼ぶことが多い。また、質問時間の配分は時代によってかわるものの、昨今では与党3:野党7が目安とされてきた。つまり野党の質問時間が圧倒的に多いのだ。
こうしたことから、答弁分析により浮かび上がるのは、「『私(首相)ども』と『野党議員』が『議論』する」という事。少数与党国会で、石破首相が野党議員と「熟議」する姿勢を前面に出した証左といえる。
政府関係者は「首相は議論が好きなんだよね」。また別の政府関係者は首相の国会の委員会での議論好きの様子を「周囲が用意した原稿以上に丁寧に自分なりに表現している」と語った。
総理番として石破首相を毎日見ている私の目にも、予算委員会が行われる日の首相の表情は違って映る。一般に、事前に用意した原稿を読む場面が多い本会議より、一問一答の予算委員会の方が答弁の負担は大きいと言われる。にもかかわらず、石破首相は、予算委員会の日は朝から表情が明るく、自ら記者団に話しかけることがあるほどだ。その理由についてある首相周辺は「予算委員会の方が議論ができるので、精神的に楽なんだろう」と解説する。
■特徴②「石破カラー」どこ? 積極的「政策打ち出し」見えず
答弁分析から見える2つ目の特徴は、攻めの“政策議論”が見えないことだ。石破首相は「地方創生」「防災庁」など、政権の看板政策があるにもかかわらず、臨時国会の答弁からはその「打ち出し」が見えなかった。これは、その前年の岸田前首相の答弁と比較すると、違いが明確になる。
2023年、同時期に行われた臨時国会の予算委員会での岸田首相(当時)の答弁と比較した。上の図の通り、岸田前首相の答弁を“ひと目”で見ると「経済対策」「賃上げ」といった言葉が浮かび上がった。どれも、岸田政権が力をいれた「政策」だ。
一方、石破首相の国会答弁からはこうした「政策の打ち出し」の語句はほとんど浮かび上がらなかった。なぜなのか?ある政府関係者は「政治とカネなどで防戦一方で、積極的な打ち出しができなかった」と振り返る。
また、私が総理番として感じたことだが、石破首相の答弁は一度相手の発言・意見を受け止めることから始める。首相は答弁で「おっしゃる通り」「参考になる」など、相手へのリスペクトを示す言葉を多用していた。ある首相周辺は「少数与党だから、相手の意見を受け止めるだけで、自分の意見を発言するまでに至らない場面が多かった」と指摘する。また、別の政府関係者は「予算成立に向けた対立点を作らないことが大切。事故を起こさない。なるべく穏便にやっていくことが大事」とも語った。
■特徴③「石破構文」野党が批判…首相も改善を意識?
石破首相の答弁の3つ目の特徴は「石破構文」と批判を受けた、石破首相ならではの“話法”だ。12月16日、日本維新の会の松沢議員が「石破構文を聞きたいのではない」と首相に詰め寄った。「石破構文」とは、「丁寧に話すけど、質問に正面から答えない」(立憲幹部)と野党が揶揄する首相の答弁スタイル。この松沢氏の質問に首相自身も「何度も言っているが、またそれが石破構文になる危険性もあるので…」と、自嘲気味に答弁。首相自身も「石破構文」との批判を意識している場面だった。
私が首相らしさを感じたもう1つの場面があった。12月11日、相手は国民民主党の新人、当選1回・29歳の橋本幹彦議員が初めて質問に立った際の答弁だ。歳の差38歳の若手議員に対して首相はこう話し始めた。
「若いというのは良いことだなあと思いながら(話を)承っておったところでございます。そうなんだ、バブル知らないんですね」
これに、委員会室内では与野党問わず笑いが起きた。ゆったりとした語り口調で、相手に目線を揃える事を意識しながら答弁を始めた首相。私は「通り一辺倒でなく、議論の最中でも会話を楽しむ首相らしいシーンだ」と感じた。
首相周辺も「相手が新人議員であれ、真剣に議論を聞く首相の姿勢の現れ」と指摘。一方、ある立憲幹部は「石破首相の答弁は丁寧だけど、中身がない。それが石破構文だ」別の野党幹部は「姿勢は謙虚でも、質問に正面から答える姿勢は全くない」と批判した。
■2025年 石破首相はどう変わる?政権運営のポイントは
年末に石破首相がこんな発言をした。
「なかなか内閣総理大臣というのが全く慣れておりませんで、衆議院議員の石破茂であります」(12月19日エコノミスト懇親会)
苦しい政権運営が続くとは言え、臨時国会を終えた石破首相が「総理にまだ慣れていない」と発言したこの言葉に私は違和感を覚えた。少数与党国会の中、慣れない政権運営が続くという意味は理解はできるが、2025年は去年よりさらに「総理大臣」として「結果」を残していく責任も問われている。
もう「慣れない」などという言い訳は通用せず、具体的な「結果」を積み重ねられるかがポイントとなる。能登半島地震から1年が経過した今年、防災庁創設や地方創生など、首相が取り組むべき課題は山積している。
臨時国会の答弁分析から見えたのは「丁寧な姿勢」で守りが堅かった一方、「積極的打ち出し」が見えなかったという点。2025年、首相に求められるのは、その「積極的な政策の打ち出し」ができるかではないか。それが、政権運営が軌道に乗るかの分水嶺になるだろう。
■石破首相“引っ越し”も終え本格始動へ
石破首相は年末、赤坂の議員宿舎から首相公邸への引っ越し作業に追われた。首相は「引っ越しは自分でやる」(首相周辺)と、身の回りの必要な品などは自身の手で公邸に運び入れた。今後はしばらく、赤坂議員宿舎と、首相公邸との2拠点生活になるという。
今月24日にも始まる見通しの通常国会が一体どんな展開となるのか?2025年、あす1月6日から本格的に始動する首相の発言に注目したい。
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