世界最大級のテクノロジー技術見本市「CES」…今年のトレンドはAIとパーソナライズ
日テレNEWS NNN / 2025年1月12日 13時31分
世界最大級の家電とITの見本市「CES」が、今年もアメリカ・ラスベガスで開かれ、世界各国のメーカーが最新技術を披露。会場は連日多くの人でにぎわった。2025年の最新技術のトレンドは?
■ライフスタイルの中心に「AI」…キーワードは“パーソナライズ”
2025年のCESのテーマは「ダイブイン」。最新のテクノロジーを体験できるような仕掛けが、各所にこらされている。昨年に引き続き、各企業が全面的に打ち出していたのがAI。AI技術が食事・健康・運転・エンターテインメントの日常生活により浸透する未来が各所で描かれていた。
パナソニックHDは、生成AIを開発するアメリカの企業と提携し、家族のコミュニケーションをサポートするAIサービス「Umi」を発表して話題となったが、韓国メーカーの勢いもすごかった。
サムスン電子の展示スペースにでかでかと掲げられていたキャッチコピーは、「AI for All」。生活の中心にAIがあるというコンセプトを全面に打ち出している。
家の中では、ユーザーがどこにいるか、動いているか、座っているかをAI感知し、部屋のライトや空調、テレビのオンオフまで自動で制御。スマートテレビはAIにより個人の好みに合わせてカスタマイズされ、見たい情報をピックアップしてくれる。冷蔵庫にはカメラが内蔵されていてAIが食品の管理を行いディスプレイに表示される。消費期限が近い食材を優先的に使うレシピや、血糖値をコントロールできるレシピをパーソナライズして提案してくれるのだ。さらに食材が少なくなると、食料品宅配サービスアプリに商品を追加してくれるという至れり尽くせりだ。
アメリカのフードテックメーカーは、AIと連動したスマートグリルを展示。チャットGPTのような専用のAIに食べたい料理を伝えると、材料や調理法が表示される。「唐辛子アレルギーなので、唐辛子なしのスパイシーチキンを作ってほしい」というような個人の要望にも応えてくれるという。指示に従い、グリルに材料を入れると、外気温も勘案した上で、食材の温度管理をしてくれ、調理が終われば自動的にスイッチが切れる。このため「キッチンに何時間も立ちっぱなしの必要はなくなって、その間は好きなことができるのよ」と説明員は熱く語ってくれた。
■イーロン・マスク氏が手がける新システム「ベガス・ループ」
展示会場が分かれているため、広大な会場を移動する手段の一つが、イーロン・マスク氏が手がけ、2021年から運行を開始した地下交通システム「ベガス・ループ」だ。地下鉄駅のような入り口を入り、エスカレーターで地下に降りると、プラットホームでひっきりなく発着しているのは、列車ではなく電気自動車テスラ。ピンクを基調とした光で照らされた駅は、SF映画に出てくる近未来のようだ。
行き先を告げると車に案内され、テスラは静かに出発。地下に設置された1車線のチューブのような専用トンネルを渋滞もなく走り抜け、普段は歩いて15分ほどかかる別会場へわずか2分で移動できた。慢性的な渋滞の解決策として、将来はラスベガスの地下にチューブトンネルをさらに張り巡らせ、空港と市内も結ぶ予定だという。
■初出展のスズキが打ち出した「日本らしさ」に関心も
モビリティー分野でもさまざまな技術が紹介された。ソニーとホンダが共同で開発したEV「AFEELA 1」は、対話型AIを搭載したことなどで話題になったが、日本勢で目をひいたのは、今回初CES出展となった「スズキ」だった。
ビッグサイズが好まれるアメリカで、あえて社の理念である「小・少・軽・短・美」、“小さなものづくりが大きく社会を変える”という日本らしいメッセージを前面に打ち出し異彩を放っていた。
興味深かったのが、人手不足の解決策となる次世代モビリティー。自社が培った電動車いすの技術を応用して、スズキの「小さなものづくり」に共感した企業と、コラボし新たな価値を生み出している。
宅配業界の人手不足を解消するための自動配送ロボットのほか、「除雪ドローン」と名付けられた小型の自動除雪機は、車社会のアメリカでも通用しそうに感じた。また小型の車両を専用レーンで自動運転させる都市交通システムなど、日本のものづくり企業としての強みを打ち出した展示は、多くの人でにぎわっていた。
■ソニーは「コンテンツ×テクノロジー」で世界から注目
一方、車などの移動体を撮影する新たな映像技術も公開された。ソニーが発表したのは「ピクソアキラ」という撮影技術。これまではカーシーンなどを撮影する際は、道路を封鎖したり、クロマキー画面を使って人が車を揺らすなどアナログな手法がとられることが多かった。カメラを設置するのも労力がかかるほか、天候などにより撮影スケジュールが押すこともしばしばある。
今回、ソニーが公開した「ピクソアキラ」は、車両の周りにスクリーンとカメラ、そしてタイヤの下には、自動で動く土台(モーション・プラットフォーム)を設置。グランドキャニオンのような大自然の中のガタガタ道から、バリ島のビーチまで自在に車の揺れ方を再現できる上に、いろいろな視点から簡単に撮影することが可能となる。
この結果、予算や制作日数、人手を大幅に削減して、よりさまざまなシチュエーションで自由な撮影ができるという。このデモンストレーションは注目を集め、ブースは常に多くの人々でにぎわっていた。
他にも人物や物体を、瞬時に3DCG化しパソコンで編集できる技術も披露。映像や音響などを組み合わせて没入感があるゲーム体験ができるブースは、筆者が訪れた際は1時間半待ちと、テーマパークのような混雑だった。
ソニーはもはやウォークマンやテレビ、スマホを製造するだけの家電企業ではなく、最新技術でコンテンツ制作の未来を開拓する最先端の企業として、世界から注目を集めていることを改めて身をもって感じた。
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