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情報漏えい “浅ましい考えで” 元警察官の後悔…『ONE PIECE』のように「なれなかった」 #みんなのギモン

日テレNEWS NNN / 2025年1月18日 9時15分

日テレNEWS NNN

2024年、不祥事が相次いだ鹿児島県警。その中のひとりの警察官は、大量の捜査資料を外部の人物に提供した情報漏えいの罪で起訴され、有罪判決を受けました。その元警察官が取材に応じ「考えが浅ましかった」と語りました。その経緯には何があったのでしょうか。

(日本テレビ調査報道班・社会部、鹿児島読売テレビ)

■「捜査に疑問を抱き・・・」

去年10月、鹿児島市内。短く刈った髪にスーツ姿のその男性は、背筋を伸ばし緊張した面持ちで現れました。鹿児島県警の巡査長だった藤井光樹氏。

「私の行為はどういった理由があっても許されるものではありません。情報が漏えいした関係者、懸命に働いている警察職員の方々に謝罪したい」

藤井氏は裁判所でそう述べていました。

藤井氏は2023年6月から2024年3月にかけて、個人の犯罪経歴の情報や個人情報が載った捜査資料を福岡県内のネットメディア「ハンター」の中願寺純則記者に送りました。そのことが発覚し、職務上の秘密を漏らした罪で起訴され、懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受けました。

今回、あらためて、警察の内部情報を漏えいした経緯を詳しく聞きました。

「知人の紹介で中願寺さんに会いました。中願寺さんは何かしらの不正を暴くことを1人でやっていて、もともと共感を覚えていました。『ハンター』に書かれていることを私が現職中に調べてみたこともあったんですが、ほぼその通りの事実なんですよ」

「鹿児島市内での強制性交事件について中願寺さんと話す中で私自身も調べなければと考え、当時その警察署にいた人たちに話を聞いたりしましたが、事件を受理する経緯や捜査の仕方が不自然で、個人的に疑問を感じました」

「私が調べる過程で、例えば幹部からこういう指示があったなどの決定的な不正の証拠をつかんだわけではありませんでした。ただ自分の経験から、どう考えても不自然な点があると思い中願寺さんにお伝えしたんです」

「中願寺さんからは何か物証となるものが欲しいと求められ、私が告訴告発一覧表の存在をお伝えしたら原本をくださいと言われ、私はそれを持ち出しました」

告訴告発一覧表とは、警察が受理した告訴告発事件の処理の経過や関係者の氏名、生年月日などの個人情報などが記載された資料です。藤井氏は2回にわたり合わせて100件以上の事件に関する情報を中願寺記者に郵送しました。

また、強制性交事件とは別に、中願寺記者の求めに応じて自らが警察本部の担当部署に照会して入手したある人物の犯罪経歴情報まで中願寺記者に送っていました。

「中願寺さんとの関係を良くしたいという個人的な欲望もありました」

藤井氏は、情報を提供する見返りに中願寺記者から別の情報を得ることで、警察内での自身の評価を上げたかったと述べています。

その結果、藤井氏は逮捕されました。

中願寺記者が、捜査資料を提供元は伏せながらもネット上に掲載したことで情報漏えいが発覚し、県警は藤井氏が情報を漏えいしたと突き止めたのです。

中願寺記者にも話を聞きました。

「捜査資料を私が誰から入手したかは申し上げられません」

「ただ藤井光樹さんのことはよく知っています。藤井さんは組織に対する思いがあり、組織のゆがみは外から指摘しなければ変われないとの思いを持っていました。正義感の塊だと今も思っています」

■「上層部に不信感…怒りにまかせて」

日テレNEWS NNN

「個人的な欲望があった」との動機を話す一方で、藤井氏が情報を漏えいした背景には鹿児島県警の組織への複雑な思いもあったといいます。

「これまで私が経験してきた中で、組織の上の人たちに対する漠然とした不信感をずっと持っていたので、今回の件を聞いた時に、またこういうことをやっているのかと怒りに任せてという部分も大きかったです」

「私自身は当時、県警上層部を100パーセント信頼できませんでした。組織内で不正があると私が言ったところで鼻で笑われてまったく相手にされないのが目に見えていました」

「鹿児島県警の中でも現場は必死に働いています。仕事をする中で不審な点があれば、組織内で問題提起をするのがベストな方法だと思います。それをくみ取ってくれる『上』がいれば変わっていくかもしれませんが、そうでなければ埋もれてしまうのが現実だと思います」

■「公益性はない」

鹿児島県警の巡査長だった藤井光樹氏

担当した穂村公亮弁護士はこう話します。

「前科前歴を情報提供したことには公益性がなく、自分としても使える情報を中願寺さんから得たいというのが動機だと感じました。しかも犯罪経歴に関する秘匿性の高い情報を外部に送ることが公益通報にあたるというのは弁護人としても難しいのではないかと思いました。ただ藤井さんなりに、組織への思いや犯罪被害者への思いなど複合的な動機が絡み合って行為に及んでいることは裁判の中で主張しました」

判決で裁判長は、藤井氏が直接担当していない事件について断片的な情報で捜査状況に疑問を持ったことなどから、「即断や思い込みにより疑念や不満を募らせていたことも否定できない」と厳しく指摘しました。

穂村弁護士は。

「公益通報として認められるには正当な目的がないといけません。そして特に外部の報道機関などに通報する時には、問題とする犯罪行為や違法行為が本当にあるのか、通報する人が事実関係をそれなりに調べ、真実であると強くうかがわれることが要件になります。藤井さんの場合は、通報にあたって調べを尽くしていないと裁判で判断されたわけです」

そして藤井氏はこう話しました。

「私の行為は浅ましいというほかありません。『ワンピース』の海軍のように、背中に「正義」を背負って生きていくのが本当の警察官だと思いますが、そうはなれませんでした」

裁判では藤井氏の妻が証人として立ちました。

「家族のために一生懸命働いてきたので、今後は夫婦間の会話も増やして見守り、家族で支えます。本人は大型トラックの免許を持っているから大型運転手か介護関係の仕事に今後就けたら」

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