【トランプ2.0】新政権で何が起こる?日米関係/物価高/台湾有事…イーロン・マスクが「新たな火種」に?
日テレNEWS NNN / 2025年1月18日 14時0分
今月20日に発足する第2次トランプ政権。アメリカファーストの政策で、アメリカは、日本は、そして世界はどうなるのか?ホワイトハウス、石破政権、国内企業を取材する記者らがそれぞれの視点でトークします。
○山崎大輔支局長
NNNワシントン支局でアメリカ政府などを取材
○平本典昭キャップ
政治部・官邸キャップとして石破政権を取材
○渡邊翔キャップ
経済部・企業取材担当として国内企業を取材
◾️減税と規制緩和や関税の引き上げ「インフレを止める」経済政策
鈴江奈々アナウンサー:
トランプ政権が発足して、どんな経済政策を打ってくると思いますか?
NNNワシントン 山崎大輔支局長:
大統領選挙の時に訴えていたのは、減税と規制緩和を基本線として、経済を立て直していくこと。もう1つは、関税を引き上げて、アメリカの国内産業を活性化して雇用を生み出すことです。
大統領に就任した初日に、中国に対して追加の関税10%、カナダとメキシコに対しては25%の関税を課すと表明しています。14日にはXに、「外国歳入庁」を政権発足した初日に創設すると投稿しました。関税の徴収や海外から入ってくる歳入を扱う新たな政府機関を作るというものです。
「これまではアメリカの国民に課税をしてきたが、これからは海外から集める」と主張しているんですが、関税は輸入するアメリカ企業が払うものなので、トランプ氏の都合のいいように説明しているわけです。しかし、支持者からすると、アメリカファーストであり、雇用が生まれて製造業が復活すればいいという発想の人が多いです。
経済部・企業取材担当 渡邊翔キャップ:
日本への影響が気になりますが、大和総研の試算だと、既に表明された関税により、日本の実質GDPに与える影響は、下押しが-0.1%程度といわれています。一方で、ジェトロのアジア経済研究所は、逆に+0.2%と試算しています。
実は中身は同じで、特に自動車は、日本のメーカーの物がメキシコやカナダを経由してアメリカに輸出されています。メキシコ、カナダの関税が上がると価格が上がり、価格競争力が落ちると、売り上げが落ち、マイナスに影響するかもしれないと。
他方で、メキシコもカナダも自動車の生産が落ち込みますから、需要の隙間ができて、逆に日本の自動車の輸出が結果的に伸びるのではないかという見方もあるので、まだわからないところです。
◾️キーワードは“矛盾”USスチール問題解決のカギは
鈴江:アメリカ国民がインフレで生活が苦しくなっているなか、トランプ氏は「インフレを止める」という話もしていたのですが、関税で輸入品の値段が高くなるとインフレが止まらないのではないでしょうか?
山崎:そういう指摘はもちろん出ています。トランプ氏は1つ1つの政策は支持者に向けて分かりやすく訴えますが、全体として整合性が取れているわけではありません。関税を引き上げればもちろん物価に転嫁されるので、インフレになる可能性があります。
また、不法移民の強制送還も、アメリカ人がやりたがらない仕事を不法移民が請け負っている側面もあるので、彼らを強制送還すると人材不足になって人件費が上がって更に物価が上がると。
インフレへの不満が大統領選で勝った1番大きな要因なので、この先、インフレに対して不満が高まってくると、トランプさんは考えを改めざるを得ないと思います。
鈴江:こうした相反する経済政策を日本の企業やアナリストはどう見ているのですか?
渡邊:年始に各企業のトップが集まる賀詞交換会が毎年あって、そこでインタビューした時も「矛盾に満ちている」とコメントをした方がいました。
政治部・官邸担当 平本典昭キャップ:
“矛盾”ってキーワードだと思っていて、日米首脳会談を2月の早い時期に探っていますが、そこで出る話題として挙がっているのは、やはり関税をどうするのかという話です。
日本は自動車産業への影響が危惧されていますが、もう1つはUSスチールの問題。トランプ氏がアメリカで雇用を増やし、国内産業を成長させるためには、USスチールの経営が厳しい今、日本製鉄と一緒にやっていくことで、日本製鉄、USスチール、そしてアメリカにとってもプラスになると多くの人が言っています。
しかし、トランプ氏は、ペンシルベニア州のラストベルト問題や大統領選のことを考えて、ある意味ちょっと狭い視野で見ているのではないかという指摘が結構あります。それを“矛盾”であると言ったら怒るわけで、日本側がいかに端的に説明できるかがポイントです。
◾️ キーパーソンは誰?第2次トランプ政権での日米関係
鈴江:日米関係は今後どうなっていくのでしょうか?
山崎:今回、就任式に岩屋毅外相をトランプ氏側から招待しました。アメリカ大統領の就任式には駐米大使が出席するのが慣例で、大臣を招待するのは非常に珍しいことなので、これは日本を重視している表れではないかと見られています。
20日の就任式にあわせて岩屋外相が訪米して、新しく国務長官になるマルコ・ルビオ氏と会談し、日米豪印の外相会合も行う予定です。トランプ政権は中国を最大の競争相手として捉えているので、対中国という意味で、インド太平洋地域を重視しています。日本との連携が重要だという認識は変わらないので、非常にいい日米関係が続いていると言えます。
平本:山崎さんにききたいのが、日米関係のキーマンは誰になっていくのかなと。
山崎:安全保障の関係でいうと、国家安全保障担当の大統領補佐官になるマイク・ウォルツ氏と、国務長官になるマルコ・ルビオ氏、この2人がキーマンだというふうに日本側も見ているのは間違いないです。その表れとして、秋葉剛男国家安全保障局長の後任となる岡野正敬氏が、まだトランプ政権発足前の段階でカウンターパートになるウォルツ氏と会談を行いました。
前の政権では、秋葉氏とサリバン大統領補佐官の関係が非常に有効に機能しました。なので、会談を行ってウォルツ氏と岡野氏の関係を強化した上で、就任式に出席する岩屋外相とルビオ氏の会談を行い、その後、首脳会談につなげていく狙いです。
◾️台湾有事にトランプ政権は?「中国との戦争がペイしないことは一番わかっている」
鈴江:日本周辺の安全保障環境が厳しくなる中で、トランプ氏の台湾有事への関心や警戒の度合いはどうですか?
山崎:台湾有事に関してきかれた時、トランプ氏は、武力行使をするとは言及せず、もしそうなれば関税をまたかけるという発言をしているので、介入しないのではないかという見方も出ています。
平本:トランプ氏はビジネスマンであり、中国との戦争がペイしないことは一番わかっているので、 戦線拡大することはないという見方が多い一方で、関税をめぐる取引など中国との緊張感が高まる懸念はあります。
◾️イーロン・マスクは「トランプ政権の新たな火種になる」?
渡邊:イーロン・マスク氏の存在は日米関係にどう影響してくるのでしょうか?
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が、マスク氏と10年来の仲だと関係者から聞いたことがありまして、マスク氏が日本に来た時は一緒にカラオケに行くような間柄だと。
平本:マスク氏はトランプ政権の不透明感のかなり大きな要素といわれます。政府効率化省がどう機能していくのかがわかりませんし、トランプ氏とどこまで親密さが続いて、マスク氏の政策を反映することになるのか…見極めている現状です。
山崎:マスク氏は新政権の人事の際もフロリダのトランプ氏の私邸マル・アラーゴに常駐して影響を与えていたので、影響力は非常に強まっていると思います。
第1次政権からトランプ氏に忠誠を誓っているメンバーからすると、マスク氏は新しく入ってきたトランプ氏の側近です。既にマスク氏との間で軋轢が生まれているといいます。
最近よく米メディアで取り上げられているのは、ビザを巡る側近争いです。マスク氏はIT企業の技術者に専用のビザを発行することを支持していますが、それに対してアメリカ第一主義者が反発しています。マスク氏は非常に個性が強いので、トランプ政権の新たな火種になるのではないかといわれています。
鈴江:ビジネスでものすごく成功している方なのに、大統領の側近として働くモチベーションはどこにあるのでしょうか?
山崎:当初いわれていたのは、自分のビジネスのためにトランプ氏を支援し、大統領選で勝って、やりたいビジネスに有利な規制の緩和を進め、特に自動運転の規制緩和や電気自動車に関する規制緩和を後押しするのではないかと。
ただ最近は、イギリスやドイツなどの政治に介入するSNS投稿をしていて、自分のビジネスを超えて影響力を行使したい、自分の目指す世界を実現したいという意思を非常に感じます。
◾️アメリカファーストで…日本経済や安全保障は?
鈴江:最後に、第2次トランプ政権が発足して、アメリカ、日本、そして世界がどう変化していくのでしょうか?
渡邊:アメリカ経済次第で日本経済の企業の業績も変わってくると思います。
来年度に向けての賃上げはかなり強い宣言が企業トップから出始めていますが、その次、26年度の賃上げにはアメリカ経済の影響が相当波及してくる可能性があります。物価と賃金両面からアメリカの動きを自分事として意識していただけるといいと思います。
平本:トランプ政権において、トップ同士の関係がない、それを補う側近の関係がない、そして、少数与党で国内情勢も不安定という3つの不透明さがあります。でも、変わる可能性があるとも捉えられると思うんです。
USスチールの問題にしても、台湾の問題にしても、石破氏がこのピンチをどれだけチャンスにできるのかは見ていきたいと思います。
山崎:トランプ氏は大統領就任初日からフルスロットルで政策を変えていくでしょう。第1次と違うのは、政権をイエスマンで固めて、ブレーキ役がいません。議会の上院も下院も共和党が独占するトリプルレッドで、さらに最高裁判所の判事も保守派が押さえている。トランプ氏のやりたい政策を実現する状況が整っているのです。
いろいろ変化するのは間違いないので、その変化をどう捉えて国益を守っていくかが非常に重要だと思います。
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