【全文紹介】「歌会始の儀」皇室の方々の歌~今年のお題は「夢」~
日テレNEWS NNN / 2025年1月22日 11時39分
皇居で新年恒例の「歌会始の儀」が行われました。今年のお題は「夢」。
共通のお題で歌を詠み披露する歌会は、奈良時代には始まっていたといわれ、「万葉集」にも記されています。鎌倉時代には行われていた「歌御会始」に一般の応募が認められたのは明治7年。皇室と国民を結ぶ長い歴史を持つ行事です。
今年の歌会始の儀には、天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが初めて出席されました。天皇皇后両陛下や皇族方が披露された歌を紹介します。(歌の背景については、宮内庁の説明をもとに加筆・編集しました)
【天皇陛下:御製】
「旅先に出会ひし子らは語りたる目見(まみ)輝かせ未来の夢を」
(英訳)
The children I met on my journeys
Talked with sparkling eyes
Of their dreams for the future
(背景)天皇皇后両陛下は、例年ご公務や、大きな災害があった時には被災地のお見舞いのために、地方を訪問されます。去年は、災害のお見舞いのために石川県を三度訪問した他、地方でのご公務のために、岡山県、佐賀県、岐阜県、大分県の4つの県に訪問し、それぞれの県での行事に出席されました。天皇陛下は、行く先々で、県民の皆さんから笑顔で温かく迎えられることを嬉しく思っていることを、去年の歌会始の御製でお詠みになりました。今年の御製は、訪問先で県民の方々と触れ合う中で、子どもたちとお話をすることもあり、その子どもたちが、自分の将来の夢について生き生きと話す様子を嬉しく思い、その時の印象を詠まれたものです。
【皇后さま:御歌】
「三十年(みそとせ)へて君と訪(と)ひたる英国の学び舎(や)に思ふかの日々の夢」
(英訳)
Some thirty years after my departure
I visit with His Majesty Our Alma Mater in Britain
And I recall the youthful dreams
I dreamt then
(背景)天皇皇后両陛下は、イギリス・オックスフォード大学で学ばれた経験があります。天皇陛下は、昭和58年から60年にかけての2年間、オックスフォード大学の大学院で歴史学を学ばれました。皇后さまは、ご成婚まで外務省に勤務していた間の在外研修期間中、昭和63年から平成2年にかけての2年間、同じく大学院で国際関係論を学ばれました。両陛下は、去年6月国賓としてイギリスを訪問した際に、一緒にオックスフォード大学を1日訪ねられました。皇后さまにとっては34年ぶりとなったオックスフォード大学ご訪問中に、名誉博士号を授与されるとともに、両陛下が留学当時にそれぞれ在籍していたマートン・コレッジとベイリオル・コレッジなど、懐かしい場所を一緒に訪ねられました。皇后さまには、陛下と一緒にオックスフォード大学を再び訪れることができたことをうれしく、また感慨深く思うとともに、留学当時の様々な想い出を振り返りながら、若き日の志を今ひとたび思い起こされた気持ちをこの歌に詠まれました。
【秋篠宮さま】
「初夢に何を見たのか思ひ出でむ幼き頃の記憶おぼろに」
(英訳)
Let me remember what I saw
in my first dream of the new year -
dim have become the memories
of early childhood.
(背景)お正月、枕の下に「宝船」の絵を入れて眠りにつく習わしがあります。秋篠宮さまも、幼少の頃、そのようにしてお休みになっていました。今回のお題が「夢」と聞き、真っ先にこのことを思い浮かべましたが、何の夢を見たのかは記憶が曖味でいらっしゃることを歌にお詠みになりました。
【秋篠宮妃紀子さま】
「絲と針夢中にオヤを編む先に二つ三つと野の花が咲く」
(英訳)
Absorbed, with a dreamlike intensity,
in thread and needle
as I weave the oya,
bringing forth two, then three
wildflowers blossoming.
(背景)紀子さまは、去年12月上旬にトルコを訪問されました。糸と細い針を使ってスカーフなどの縁飾りを編む「オヤ」は、トルコの人々の間で長きにわたり受け継がれてきたきめ細やかな手仕事の一つです。紀子さまはご訪問前にオヤを習い、帰国後もオヤの作品を編まれることがあります。トルコの自然や人々の暮らしを思いながら夢中になって野の花を二つ三つと続けて編まれたことを歌にお詠みになりました。歌会始の儀では、紀子さまは帽子に「オヤ」の技を取り入れたブローチを身につけられていました。この日のために手作りされたということです。
【愛子さま】
「我が友とふたたび会はむその日まで追ひかけてゆくそれぞれの夢」
(英訳)
Until the day we meet again
My friends and I will
Each follow our dreams
(背景)愛子さまは、去年3月に学習院大学を卒業し、翌月からは社会人として日本赤十字社での勤務を始められました。大学の卒業式の日には、一緒に卒業する友人たちの晴れ姿を見て、ご学友もご自身も、これからそれぞれの新たな道を歩んで行くことをしみじみと感じ、ご学友とのこれまでの日々と将来に思いを馳せられました。また、同じ大学には通わなかったけれど、別の道で夢に向かって歩みを進めている友人とのつながりも大切にしてきている中で、これまでの様々な友人といつの日か再会できることを楽しみにしつつ、その日までそれぞれの夢に向かって励んでいこうとする、初々しい気持ちをこの歌にお詠みになりました。
【秋篠宮家 佳子さま】
「キャンバスに夢中になりて描きゐしかの日のことはなほあざやかに」
(背景)佳子さまは、幼少の頃から、絵を描いたり、工作や手芸で様々なものを作ったりすることがお好きでした。今ではそのように過ごす時間が限られていても、以前に描いた絵を見ると、描いていた日のことを鮮やかに思い出されるそうです。時間を忘れて絵を描いていた頃を懐かしみながら、この歌をお詠みになりました。
【常陸宮妃華子さま】
「御即位の儀式始まり絹ずれの音のみ聞こゆ夢のはじめに」
(背景)夢の中で、絹ずれの音のみが聞こえ、いよいよ御即位の儀式が始まり、静かな中にも緊張の瞬間が感じられたことをお詠みになった歌です。
【高円宮妃久子さま】
「ヨルダンの難民キャンプに若きらはこれからの夢を語りをりしが」
(背景)久子さまは、令和5年、承子さまと一緒に、ヨルダンのパレスチナ難民キャンプを訪問し、若者たちと交流される機会がありました。医者や教師、政治家になりたいと将来の夢を語っていた彼らの現在に思いを馳せて、この歌をお詠みになりました。
【高円宮家 承子さま】
「『夢の国のちびっこバク』も三十年(みそとせ)をわが夢食(は)みつつおとなになりしか」
(背景)承子さまは、久子さまが書かれた絵本「夢の国のちびっこバク」の主人公で怖い夢を食べてくれるバックンを連想し、大きくなったであろうバックンについての歌をお詠みになりました。
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来年のお題は、「明」です。
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