“命綱”が…高額療養費の負担増、月に8万円→13万円も がん患者「生きたいと思っちゃいけないのか」【#みんなのギモン】
日テレNEWS NNN / 2025年2月1日 12時34分
継続した治療や手術を受ける患者らにとって命綱とも言える「高額療養費制度」が、患者の自己負担額の上限を引き上げる形で見直されることになりました。政府は現役世代の保険料の負担軽減を理由に挙げていますが、がん患者からは切実な声が上がります。
そこで今回の#みんなのギモンでは、「高額の医療費 自己負担増える?」をテーマに解説します。
■払い戻し、年に推定1000万人以上
小野高弘・日本テレビ解説委員
「根強いギモンの声もあります。色々な手術やがんの治療などで患者の治療費の負担が重くなりすぎないようにする制度を巡り、ここへ来て負担が増えることになってしまいそうです。この制度を、高額療養費制度といいます」
「例えば年収500万円のAさん。医療費が月に100万円かかっています。窓口負担は3割なので月に30万円ですが大変なので、高額療養費制度を利用することで約21万3000円払い戻しを受けられます。すると負担は約8万7000円になります。かなり助かりますよね」
「実際、この制度で払い戻しを受けた人は年に1000万人以上いると推定されているそうです」
鈴江奈々アナウンサー
「私の母もがんの治療をした時にこの制度でとても助かりました。かなりの額になった時に、諦めずに治療の選択をできるという意味でもすごく大きな制度ですよね」
■70歳未満の負担上限額、どう変化?
小野解説委員
「ありがたい制度ですが、今この自己負担額の上限を引き上げる、つまり負担が増えるという形で見直すことが決まりました。患者側の負担はどのぐらい増えるのでしょうか」
「年齢と年収によって上限額が変わります。70歳未満の場合、今は年収約370万円までの人は月の上限額が5万7600円。つまり、患者はこれより多くは払わないということです」
「そして年収約370万円~約770万円のゾーンの人は8万100円程度。これより多くは払わないということです。これが、このゾーンの人は今年8月から8万8200円程度になり、約8100円の引き上げになります」
「さらにそれ以上のゾーンの人になると約2万1000円、約3万7800円といった引き上げ幅となります。引き上げは段階的に行われます。2年後の2027年8月からは年収の区分が現在よりも細かく分けられます」
「例えば年収約510万円~約650万円のゾーンの人は現在は8万100円程度ですが、今年8月から8万8200円程度に、そして2年後の8月には11万3400円程度になります。年収が約650万円以上になると、13万円を超えます」
「自己負担が最大8万円ほどだったのが、11万円や13万円になる人もいます。5万円以上も自己負担が増える可能性があるということです。年収の区分を細かく分けたのは、低所得の人たちの引き上げ率をなるべく抑えるのが目的です」
鈴江アナウンサー
「1か月でこれだけ増えるということですよね?」
小野解説委員
「数か月にわたって継続して治療するとなると、家計はきつくなっていくことも考えられます」
■薬剤の高額化や高齢化…首相の説明は
山崎誠アナウンサー
「そもそもこの制度を利用している方というのは身体的にも精神的にも大変です。そこに経済的な負担が加わってくるとなると、かなり厳しい状況ですよね」
忽滑谷こころアナウンサー
「医療制度を維持するためにどうしても足りないのであれば引き上げても仕方ないのかなと思いますが、削れるところが他にないのか、無駄がないのかはしっかりと見直してほしいです。国民への説明も大事ですよね」
小野解説委員
「なぜ変える必要があるのか、石破首相が29日に国会で説明していました」
石破首相
「高齢化や高額薬剤の急速な普及などにより、その総額が年々増加する中で、現役世代を中心に保険料負担が大きな課題となっております」
「このような状況を踏まえまして、制度のセーフティーネットとしての役割を将来にわたって維持しつつ、保険料負担の抑制にもつなげますため、見直しを行うということにしたところです」
小野解説委員
「現役世代の支払う保険料の負担を軽くする、そのための見直しだと説明していました。31日午後も国会でまさにこの件が取り上げられました。石破首相は『ここ最近の薬剤なども高額になっている。その中でこの制度をどう続けていくかだ』と答弁していました」
刈川くるみキャスター
「確かに保険料が上がると苦しいなと感じる一方で、もし自分が高額療養費制度を利用するという時にはやはり自己負担が少ない方がうれしいので、その狭間にいます。今回は保険料の負担を抑える方向で考えているということですか?」
■制度見直しで保険料負担はどうなる?
小野解説委員
「そうです。では高額療養費制度を見直すことで保険料の負担がどのぐらい軽くなるのか。加入者1人あたりの厚生労働省の試算によると、協会けんぽは年間で3500円、後期高齢者は年間で1100円下がりますが…」
刈川キャスター
「(自己負担上限額の)増え幅からすると、『これだけしか下がらないのか…』と比べてしまいますね」
小野解説委員
「政府がやろうとしていることは、もっともなことではあります。国全体として増え続ける医療費をどう支えていくのかという問題を抱えています。これ以上現役世代に負担を強いていくわけにはいかないし、財源も確保しないといけません」
■がん患者にアンケート…切実な声
小野解説委員
「ただ一方で、『なぜ命に直結する部分を見直すのか』『納得がいかない』という声も相次いでいます。全国がん患者団体連合会が制度改正に反対するアンケートを行い、3623人が意見を寄せました。その一部を紹介します」
20代の女性患者
「制度を使っていますが、支払いは苦しいです。家族に申し訳ないです。引き上げされることを知り、泣きました。死ぬことを受け入れ、子どもの将来のためにお金を少しでも残す方がいいのか追い詰められています」
■「見放されたよう」「大切な命綱」
30代男性
「我々のように闘病しながら働いている人は、現役世代の枠から見放されたように感じます」
50代女性
「生きたいと思っちゃいけないのかと思ってしまいます」
50代男性
「高額療養費制度は大切な命綱です。上限を引き上げられると生きる望みが絶たれます」
小野解説委員
「この団体が強調して訴えているのは、長期にわたって治療を続けている患者やその家族が治療の継続を断念せざるを得ないかもしれない、そのためこうした人たちの負担は軽減してほしい、影響が少なくなるよう特段の配慮をしてほしいということです」
鈴江アナウンサー
「がん患者の皆さんの声は本当に切実です。だからこそ、丁寧な説明をお願いしたいですね」
小野解説委員
「命綱と言える大切な制度です。改正するならば他に策はないのか、なぜ改正するのか説明を尽くす必要があると思います」
(2025年1月31日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、
日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)
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