1位「県敗訴」2位「防衛強化」3位「バスケW杯」…2023年 沖縄の十大ニュース
沖縄タイムス+プラス / 2023年12月27日 7時0分
沖縄タイムス社は2023年の県内十大ニュースを選んだ。1位は名護市辺野古の新基地建設を巡る代執行訴訟判決。国の主張を認め、玉城デニー知事に設計変更申請を承認するよう命じた。軟弱地盤が広がる大浦湾側の工事が年明けにも始まる見通しとなり、大きな局面を迎える。2位は急速に進む南西諸島の軍備強化。基地負担が一層増す中、生活を脅かす米軍機事故も後を絶たない。スポーツ界は明るい話題も多かった。3位のバスケットボール男子ワールドカップは、初の沖縄開催で多くのファンを魅了。日本代表が五輪出場の切符を獲得し、歓喜に沸いた。4位は新型コロナウイルス感染症の5類移行。多くの催しが復活し、経済や暮らしに「4年ぶり」の日常が戻ってきた。4位以下含め詳報する。
1 辺野古代執行訴訟で県が敗訴 大浦湾の工事強行へ加速
名護市辺野古の新基地建設は12月に重大な局面を迎えた。軟弱地盤改良工事を巡り、国が玉城デニー知事に代わって沖縄防衛局の設計変更申請を承認する代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部は20日、国の主張を認め、知事に申請を承認するよう命じた。25日の期限までに応じなければ、国が地方自治体の事務を国内で初めて代執行する。
国は年明けにも大浦湾側の工事に着手する見通しで、地盤改良に向けた準備を本格化させる。国が知事権限を奪い、工事を強行する異常な事態が展開されることになる。
変更申請では、国土交通相が知事の不承認を取り消し、承認を迫った是正指示に対し、県が訴訟で争ったが、9月の最高裁で敗訴が確定した。
これを受け、国交相は承認するよう勧告と指示をしたが知事は「承認は困難」と判断。国は代執行訴訟に踏み切った。
知事は25日までに承認の可否を判断するが、いずれにしても地盤改良工事は進む。現段階で工事を止めることができる有効な策はない。辺野古新基地建設阻止を公約に掲げる知事にとり厳しい情勢を迎える。
一方、大浦湾深くにある軟弱地盤の改良は難工事で米軍への引き渡しは最低でも12年かかる。また、工事着手後も複数回の設計変更が必要とみられ、さらに工期、工費は膨張する可能性がある。
普天間飛行場の危険性は固定化されることになり、県内の政府への反発や不信は根強く残りそうだ。(政経部・大野亨恭)
2 南西防衛の強化 日米が拍車 石垣に陸自駐屯地開設
海洋進出を強める中国を念頭に、日米は南西防衛強化に拍車をかけたが、県内では依然、懸念も根強い。
日米は今年1月、在沖米海兵隊の一部の部隊を島しょ戦闘に特化した海兵沿岸連隊(MLR)へ改編すると発表。11月にMLRが発足し、今後は自衛隊との共同訓練が想定される。
3月は南西防衛の「空白」とされた石垣島に、陸自駐屯地が開設。防衛省は今後、訓練場を拡大する方針も固めている。
宮古島で4月に発生した陸自ヘリの事故では、南西防衛を担う陸自幹部ら10人が死亡。事故調査が続いており、2024年中に調査結果が出る見通しだ。
10月の日米共同訓練では、県内で初めて新石垣空港に陸自オスプレイが飛来。11月には米軍無人偵察機MQ9が、海自鹿屋航空基地(鹿児島県)から米軍嘉手納基地へ移転した。
こうした動きを受け、11月下旬に大規模な県民集会が開かれ、約1万人(主催者発表)が参加。政府に平和外交の徹底を求めた。
政府は自衛隊利用を念頭に置いた空港・港湾の整備や、陸自訓練場の新設を県内で計画。24年も“軍事要塞(ようさい)化”に向けた動きが進み、反発も予想される。(東京報道部・新垣卓也)
3 バスケW杯沖縄開催 日本代表が躍進
バスケットボール男子のFIBAワールドカップ2023は今夏、沖縄、フィリピン、インドネシアで共同開催された。沖縄アリーナでは1次ラウンド(R)、2次R、順位決定Rが行われ、県内で初めてメジャースポーツの国際大会が実施された。
大会では“死の組”グループEに入った日本代表が、第2戦でフィンランドに98-88で勝利。国際大会では強豪ヨーロッパ勢から初白星で、歴史的勝利となった。
日本は、1勝2敗の3位で2次Rには進めなかったが、順位決定Rでベネズエラ、カボベルデに勝利し全体の19位に入った。アジア最上位となり、48年ぶりに自力でのパリ五輪出場をつかんだ。
米NBAプレーヤーの渡邊雄太や日本の若き至宝、河村勇輝、富永啓生らの活躍もあり、国内でのバスケ人気に火をつけた。(運動部・比嘉大熙)
4 コロナ5類へ 活気戻る
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5月8日、「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」へ引き下げられた。法に基づく陽性者への外出自粛要請はなくなり、イベントの開催などの経済活動も活発化。コロナとの共生を目指す「ウィズコロナ」の動きが加速した。
5類移行に先立ち、政府は3月からマスク着用を個人の判断とするよう緩和。当初は「周りの視線が気になる」と外すことをためらう人が多く、子どもたちの心身への影響を懸念する声もあった。6月には感染が急拡大し、年明けの「第8波」を超えた。医療機関は逼迫(ひっぱく)し、救急や一般診療を制限した病院もあった。
秋以降は感染が落ち着き、沖縄の産業まつりやNAHAマラソンなどの大型イベントが4年ぶりに通常開催した。
県民や観光客の移動も活発になり、「ゆいレール」の利用客は通算3億人を突破。大人数の忘年会も復活したが、人手不足で夜間のタクシーがつかまらないなどの影響が出ている。(社会部・下里潤)
5 キングス Bリーグ初優勝
プロバスケットボールの琉球ゴールデンキングスが今年5月、Bリーグ初の日本一に輝いた。
西地区6連覇を飾ったキングスは、チャンピオンシップ(CS)も順調に勝ち上がった。決勝の相手は、史上最強といわれた千葉ジェッツ。ミスターキングス岸本隆一や今村佳太、ジャック・クーリーらの活躍で第1戦を96-93、第2戦を88-73で勝利した。2連勝で頂点に立った。
2022-23シーズンは沖縄アリーナでの試合に平均約7千人のファンが詰めかけ、Bリーグ史上初のシーズン入場者20万人も達成。屈指の人気球団になった。(運動部・比嘉大熙)
6 台風6号 異例のUターン
台風6号は7月31日から8月7日までの間、1度通過してから戻ってくるなど異例の進路をたどった。沖縄本島地方や大東島地方では暴風警報が2度発令され、強風や大雨で県民生活に大きな爪痕を残した。
南城市糸数では8月としては過去最大の瞬間風速50.6メートルを観測。本島北部では8月6日、線状降水帯が発生した。
久米島では降り始めから9日間で791.5ミリの降水量を記録。読谷村楚辺では崖崩れが起き、警戒レベルが最も高い「緊急安全確保」が県内で初めて発令された。
2人が亡くなり、最大21万5800戸が停電。各種インフラも破壊され、長期の断水や通信障害も発生するなど、多くの人が困難や不便を強いられた。(社会部・垣花きらら)
7 オスプレイ 屋久島沖墜落
米空軍の輸送機CV22オスプレイが11月29日、鹿児島県・屋久島沖で墜落した。オスプレイ事故で最多の乗員8人が死亡した。
事故を受け、県は原因を究明するまでオスプレイの飛行停止を求めたが、米軍は飛行を継続。県内では、墜落の翌日から米海兵隊のMV22オスプレイが各地を飛び回った。
米軍が全オスプレイの飛行を世界中で一時停止したのは、事故から約1週間後だった。
県議会や各市町村議会では、オスプレイの飛行停止を求める意見書が相次いで可決された。(政経部・東江郁香)
8 祝嶺・大湾さん 人間国宝に
重要無形文化財保持者(人間国宝)に「首里の織物」の祝嶺恭子さん(86)と「琉球古典音楽」の大湾清之さん(77)が認定された。10月31日付官報に公示された。県内の工芸技術分野では6人目、芸能分野では11人目、累計17人となった。
祝嶺さんは沖縄の伝統的な染織品の調査・研究、大湾さんは安冨祖流で伝承が途絶えた「仲節」「長ヂャンナ節」を復曲するなど、それぞれの分野の継承、発展に寄与し、卓越した技術を磨いてきた。また、共に県立芸術大学の教授として後進の育成にも力を注いできた。(学芸部・屋良朝輝)
9 戦争体験者の訃報相次ぐ
戦争の悲惨さ、平和の尊さを語り継いできた沖縄戦の体験者が相次いでこの世を去った。
県内外に向け、負傷兵の看護など過酷な戦争体験を語り続けた元白梅学徒隊の中山きくさんは1月、94歳で亡くなった。平和を願う立場から、沖縄の過重な基地負担にも異を唱えた。
ひめゆり平和祈念資料館の開館に尽力し、館長を歴代最長の約8年間務めた元ひめゆり学徒隊の本村ツルさんは4月、97歳で死去。
疎開船「対馬丸」に乗船して生き残り、語り部として精力的に活動した平良啓子さんは7月、88歳でこの世を去った。
元なごらん学徒隊の上原米子さん(享年96)、「全学徒隊の碑」の建立に力を注いだ上原ハツ子さん(享年94)も天国に旅立った。(社会部・當銘悠)
10 テーマパーク 名称「ジャングリア」
テーマパーク事業を推進する刀(大阪市、森岡毅代表)が11月27日、東京都内で会見し、今帰仁村と名護市にまたがる沖縄北部新テーマパークの正式名称を「JUNGLIA(ジャングリア)」と発表した。2025年夏の開業を目指す。2月から建設工事を進めている。
コンセプト「パワーバカンス」の下、最先端技術を活用しながら、やんばるの自然のエネルギーを体感できる施設を目指す。
新たな観光コンテンツの誕生は、滞在日数の増加や観光消費額の伸びにつながると期待されている。
一方、周辺地域の交通渋滞発生や人材確保の点で課題が残る。官民で連携して早急に課題解決に向けた取り組みが求められている。
(政経部・川野百合子)
次点 前那覇市議会議長を逮捕
那覇市有地の所有権争いを巡る便宜供与の見返りに現金計5千万円を受け取ったとして、県警は11月15日、前市議会議長で元市議の久高友弘容疑者(75)を収賄容疑で逮捕した。那覇地検は12月6日、久高容疑者と共犯を含む計5人を収賄などの罪で起訴した。
前議長逮捕という前代未聞の事件を巡っては、同市おもろまちなどの一等地を舞台に、久高被告が議会で百条委員会設置を働きかけるなど、市有地の奪還と土地の転売で巨利を得ようと画策していたことが明るみに出た。
(社会部・城間陽介、矢野悠希、比嘉海人、玉那覇長輝)
【沖縄タイムス社選定 2023県内十大ニュース】
1 辺野古代執行訴訟 県が敗訴
2 進む南西諸島軍事化
3 バスケW杯 沖縄開催で日本が五輪 出場権獲得
4 コロナ禍明け「4年ぶり」日常戻る
5 キングスBリーグ初V
6 台風6号異例のUターン 被害長期 化
7 オスプレイ屋久島沖墜落
8 人間国宝に祝嶺さん・大湾さん認定
9 戦争体験者の訃報相次ぐ
10 ジャングリア着工
次点 前那覇市議会議長逮捕
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(2023年1月1日~12月15日)
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(2)5歳児が乗った車、保育園の駐車場で盗まれる
(3)横転する車、吹き飛んだ屋根 台風6号本島で猛威
(4)北部の新テーマパーク名称は「ジャングリア」
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