地元沖縄での初防衛戦 ベルトを守った仲里周磨の選択 ボクシング日本タイトルマッチ観戦記
沖縄タイムス+プラス / 2024年1月4日 10時52分
日本王者とランキング1位が対決するプロボクシングのチャンピオンカーニバル。その人気イベントで2023年4月、仲里周磨(27)=オキナワ=は宇津木秀(ワタナベ)を3回KOで下して日本ライト級新チャンピオンになり、沖縄県内のジムに所属する選手としては21年ぶりにベルトをもたらした。満を持した初防衛戦は12月24日、豊見城市の沖縄空手会館で3位の村上雄大(角海老宝石)を迎え撃ち、3―0の判定で王座を守り抜いた。「クリスマスイブに多くの人が見に来てくれてうれしい。ベルトを失わなかったのが自分へのプレゼントかな」と安堵の表情を浮かべた。(社会部・磯野直)
■「楽勝」の予想もあったが
「楽勝」を予想する専門家が多かったが、仲里にとって180センチの長身サウスポーの挑戦者は簡単な相手ではなかった。1回、アップライトの構えから伸びてくる村上の右ジャブをかわしながら飛び込み、右ストレートをボディーに突き刺した。出入りとフェイントを駆使して左ジャブをボディーに伸ばし、懐への距離を掌握した。
2回からいきなり飛び込んでの右ストレート、右ジャブに対する右ストレートが顔面を再三ヒット。追撃はクリンチで阻まれたが、5回終了間際にはカウンターの右ストレートが顔面を捉え、左右の連打で畳みかけた。
■脚に異変 後半勝負に黄信号
6回も左フックで村上をぐらつかせた仲里だったが異変が起きる。「計量後のリカバリーがうまくいかなかった」ため脚がつりそうになり、後半勝負の作戦に黄信号がともった。
クリンチされてもレフェリーが止めに入るまでは荒々しく仕掛け、KOを狙う戦法もあった。だが、無理な打ち合いで古傷のまぶたをカットしたくない気持ちも強く、作戦をポイントアウト(判定勝ち)に変更。8、9回はつり始めた脚が止まって村上の反撃を許したが、10回は一歩も引かずに打ち合った。終始仕掛け続けた仲里の手が上がり、会場を埋めた県民に向かって銀色に輝くベルトを掲げて見せた。
■ホームのプレッシャー
ボクシングは、追いかける側から守る立場になる初防衛戦が一番難しいといわれる。しかもキャリア19戦のうち沖縄ではわずか3試合と、大半をアウェーで戦う仲里にとってホームでの初防衛戦は格別であり、プレッシャーでもあったようだ。「倒したかったけど、普段より知り合いが多く緊張もした」と振り返る。
「いつもはアウェーでお客さんの大半が相手選手の応援団。だから『自分が勝って黙らせてやる!』という気持ちがモチベーションになるんだけど、今回は地元。しかも多くが『周磨は王者だから勝って当たり前』と思っている。モチベーションをつくるのが難しかった」と本音を漏らした。
振り返れば21年前、沖縄にチャンピオンベルトをもたらした県内ジムの選手は仲里の父で会長の繁さん(51)だった。2002年5月、3回TKOで東洋太平洋スーパーバンタム級王者になり、同年10月、地元で行った初防衛戦は7回TKOでタイトルを守った。繁さんに「21年前、地元での初防衛戦は大変だったか」と聞くと「自分は全然大丈夫だった。なんともなかった」とうそぶいたが、当時は試合後「緊張というより、集中力を高め切れなかった」(沖縄タイムス2002年10月13日付)と語っている。やはり、地元での初防衛戦は特別な難しさがあるようだ。
次戦は因縁の相手と
ともあれ日本ライト級のベルトは仲里の腰に残った。今春のチャンピオンカーニバルでは東京・後楽園ホールで、1位・三代大訓(横浜光)の挑戦を受ける。6回戦時代の2017年10月、倒し倒されの試合の末、判定負けした相手だ。以後、取材でも雑談の中でも「戦いたい相手は」と聞いたら、ずっと「三代とやりたい。リベンジしたい」と言い続けてきた。
三代は仲里の初防衛戦をリングサイドで観戦。試合後はリングに上がってマイクを握り、「全く負ける気がしない」と仲里を挑発した。仲里も負けてはいない。「リベンジできる願ってもないチャンス。挑む気持ちでいく。あの頃の俺とは違うというところを見せる」と早くも闘志を燃やす。
リカバリーの失敗で脚をつりそうになったのも、途中で作戦変更してフルラウンドを戦い抜いたのも、古傷のまぶたをカットしなかったのも、全て三代戦への糧にするはずだ。万全のコンディションをつくり、チャレンジャーの気持ちでチャンピオンカーニバルのリングに向かう。国内ライト級最強を証明し、父子で世界に羽ばたくために。
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