[社説]中東で報復の応酬 自制し安定化の道探れ
沖縄タイムス+プラス / 2024年2月5日 5時0分
報復に次ぐ報復でますます緊張が高まっている。このままでは戦争の拡大を招きかねない。
米軍が2日、ヨルダンの米軍施設で米兵3人が死亡した無人機攻撃への報復としてイラクとシリアで攻撃を行った。
米側は、親イラン武装勢力の連合体「イラクのイスラム抵抗運動」が無人機攻撃を実行したとし、イラクとシリアの七つの施設で85以上の標的を空爆した。
これにより、民間人を含む計39人が死亡した。民兵組織である親イラン武装勢力はイラクとシリアに根付いている。空爆では民間人の犠牲は免れない。
バイデン米大統領は声明で報復を継続するとした。一方で「中東で戦争の拡大は必要ない」とも述べている。これ以上の報復は思いとどまるべきだ。
ガザでの戦闘開始後、イスラエルを支援する米軍は駐留先のシリアやイラクで、武装勢力から計150回以上の攻撃を受けている。
先月28日の無人機攻撃では初めて米側に死亡者が出た。負傷者は40人余に上るという。
これを受けてバイデン大統領が報復を予告していた。
米国が過剰な報復を繰り返せば、イランも国内世論に突き上げられ反撃に乗り出すことが懸念される。
イランは武装勢力の攻撃への関与を否定し、「地域の緊張と不安定さを増す」として米軍の報復を非難した。
全ての関係国に自制を強く求めたい。
■ ■
昨年10月のガザ戦闘以降、中東各地での紛争が拡大している。
最大の民兵組織ヒズボラは、ガザでイスラエル軍と戦闘を続けるイスラム組織ハマスに連帯を示している。
イスラエル軍はレバノンやシリアで、ヒズボラの施設など3400カ所以上を攻撃し、戦闘員200人以上を殺害したと表明した。
一方、イエメンの武装組織フーシ派も、紅海やアデン湾でイスラエルに向かう商船などを攻撃している。
イスラエルを支援する米軍は今回の報復攻撃の翌日3日、イギリス軍と共にフーシ派の支配地域を新たに攻撃した。
フーシ派の能力低下が目的とするが、これに対しフーシ派は今後もイスラエル関連船を攻撃する意向を表明した。
このまま中東の戦争が拡大すれば、第3次世界大戦に直結する事態にも陥りかねない。
■ ■
ロシアは、米軍によるイラクとシリアでの空爆を協議するため国連安全保障理事会の緊急会合開催を要請した。5日(日本時間6日)に開かれる見込みだ。
一方、ロシアのウクライナ侵攻は2年近くに及んでおり、理事会は各国の非難の応酬となる恐れもある。
このまま報復に報復を重ねれば、制御不能な状態に陥る危険性がある。
各国は中東情勢の安定化を優先し、一致できる点を見いだす努力を重ね、大国の責任を果たすべきだ。
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