[社説]憲法と家族 24条生かす取り組みを
沖縄タイムス+プラス / 2024年5月3日 5時0分
このままいくと、約500年後の2531年、日本人全員が「佐藤さん」になる。
びっくり仰天、うそのような衝撃の結果だ。
選択的夫婦別姓の実現を目指すプロジェクトの一環として、東北大の吉田浩教授が、結婚時に同姓を強いられる現行制度が続いた場合、どうなるかを試算した。
現在、日本で最も多いのは佐藤姓。確率的に佐藤さんと結婚するケースが多くなり、これを繰り返し長い時間を経ると、佐藤さんに吸収されていくという。
憲法24条は1項で「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」すると婚姻の自由を定め、2項で婚姻や家族などに関して「個人の尊厳」や「両性の本質的平等」に立脚した立法を求めている。
この24条の理念は生かされているのか。
最高裁大法廷は、15年と21年に、夫婦別姓を認めない民法などの規定について「合憲」とする判断を示した。
司法の場ではなく「国会で議論、判断すべきだ」として、立法府へボールを投げ返したのだ。
ただし15年の決定では、全裁判官15人のうち5人が、21年の決定では4人が「違憲」としている。
「別姓の選択肢を設けていないことは、24条が保障する婚姻の自由を不合理に制約する」「24条の趣旨に反する不当な国家介入に当たる」などの意見が付けられた。
「合憲」判断で決着ではなく、むしろ少数者の権利の尊重という本質的課題が表面化した。
■ ■
今年3月、札幌高裁で同性カップルの結婚を認めない民法などの規定を憲法違反とする判決があった。
婚姻の自由を定めた憲法24条1項が「同性間の婚姻も異性間の場合と同じ程度に保障する」との初判断を示したのだ。
注目すべきは「両性」の文言について、「人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻をも定める」と踏み込んで解釈したことである。
背景には個人の尊重と、性の多様性を尊重する社会の動きがある。
共同通信社が憲法記念日を前に実施した世論調査によると、同性婚を「認める方がよい」と答えた人は73%、選択的夫婦別姓については「賛成」との回答が76%に上った。
映し出されるのは、政府や国会の対応の鈍さである。いつまで放置するのか。
■ ■
国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という普遍的な理念を基本原理とする憲法は施行から77年。沖縄に憲法が適用されてから52年を迎える。
夫婦別姓も同性婚も、憲法制定当初は想定されていなかった。
重要なのは24条の意義を再確認し、人権保障を広げていくことである。
どんな人生を生きても、どんな家族の形を選んでも、「個人の尊厳」や「両性の平等」が保障されなければならない。
24条の精神に沿った法整備を急ぐ必要がある。
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