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[社説]袴田さん再審結審 制度の欠陥浮き彫りに

沖縄タイムス+プラス / 2024年5月23日 4時0分

 最初の申し立てから再審開始が確定するまでに42年を要している。これ以上、審理を引き延ばすようなことがあってはならない。

 1966年に静岡県で起きたみそ製造会社専務一家4人の殺害事件で、死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審公判が静岡地裁で開かれ、結審した。

 検察側は改めて死刑を求刑した。一方、弁護側は無罪を主張し、両者の言い分は平行線だった。

 最高裁による審理差し戻しを経て昨年3月、東京高裁は再審開始を決定。その際、犯行時の着衣とする「5点の衣類」について捜査機関による「証拠捏造」の可能性を指摘した。

 再審請求審と再審公判を通じて最大の争点は、これらの衣類に付着した血痕の色合いだ。事件の1年2カ月後、捜査によりみそ製造会社のタンク内でみそに漬かった状態で発見された。

 一方、弁護団は血痕のみそ漬け実験を重ね、1年以上漬けた血痕に赤みは残らないと主張した。

 双方の主張に対し高裁は、みその成分との化学反応により赤みは残らないと結論付けた上で、袴田さん以外の第三者が衣類をタンク内に入れた可能性に言及したのである。

 それなのに検察は再審公判でもほぼ同じ主張を繰り返した。

 意見を述べることは認められているとはいえ、いたずらに審理を長引かせるべきではない。

■    ■

 戦後、死刑事件の再審公判で検察側が確定審同様に死刑を求刑したのは4件で、その後いずれも無罪となっている。今回の判決は9月26日で、袴田さんも無罪となる公算が大きい。

 再審制度が、えん罪被害者を救済する重要な役割を担っていることは間違いない。だが審理の長期化は、再審請求者にとって大きな負担となっている。

 81年に申し立てた第1次再審請求が退けられ、2014年の第2次請求で再審開始が決定し釈放されるまで袴田さんは半世紀近くも拘束された。拘禁症状の影響で意思疎通が困難となり、今も法廷に立つことができない状況だ。

 長期化の要因の一つは手続きや証拠開示に取り決めがほとんどなく、裁判所の裁量に委ねられていることにある。

 袴田さんのケースでも再審開始につながった衣類のカラー写真などが開示されたのは第2次請求中の10年になってからだった。

■    ■

 再審制度を巡っては昨年5月、日本弁護士連合会が法改正を求める意見書を提出。ほか、制度の在り方を見直す超党派の国会議員による議員連盟も発足した。

 しかし、議論は停滞している。70年以上にわたり一度も見直しが行われていないことを考えれば、検察に全ての証拠開示を義務付けたり、抗告を禁止したりする法改正を急ぐ必要がある。

 袴田さんの健康状態や年齢を考えれば検察には今回、再審制度の趣旨にのっとった対応が求められる。

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