せりふは「だから言ったさ」で始まり最後は「コーヒーでもどうぞ」 脚本家9人による短編劇「九人脳」
沖縄タイムス+プラス / 2024年6月5日 16時0分
最初のせりふが「だから言ったさ」、最後のせりふが「コーヒーでもどうぞ」。そんなルールを設けた、沖縄県内9人の脚本家による9通りの短編劇「九人脳」が5月11~18日、那覇市のアトリエ銘苅ベースで上演された。最初と最後のせりふのほか、登場する役者はくじ引きで決めるというゲーム要素盛りだくさんの内容で、同じ条件下でそれぞれの脚本家の“味”を楽しめる企画。総合演出を担当した劇団O.Z.Eの新垣晋也が「久しぶりの『祭り』という形で開催しました。いろんな劇団やフリーの役者さん、お笑い芸人さんもたくさん参加してくれて、とてもうれしかったです」と話すように、沖縄のエンタメ界が垣根なく共に作り上げた点でも大きな意味があった。(文・写真=ライター・長濱良起)
アンコール上演は大田、キャン、我那覇の作
9人の脚本家は、脚本のみならず演出も担当した。1回3作品ずつ、3パターンの公演に分けられており、11~15日は日ごとに順繰りで各パターンを上演した。17、18日は観客の投票で人気の高かった3脚本をまとめて上演するアンコール公演となった。
アンコール公演に選ばれたのは大田享の「グソウ」、キャンヒロユキの「共作」、我那覇孝淳の「スタンドバイミー」。
「あきら本店」で芸人としての顔も持つ大田の作品「グソウ」では、上原一樹演じる若い男性が現世での死を受け入れられないまま、花燈明佳と蔵元利貴演じるグソウの住人や、TOMOKI演じる火の神とドタバタコメディーを繰り広げた。花燈の印象的なソプラノオペラボイスも劇中でふんだんに取り込みつつ、生死や人生を考えさせる内容に仕上げた。
キャンの「共作」は、秋山ひとみ演じるキャン自身が脚本作りに苦悶する設定で、AIに脚本を書いてもらおうと画策するところから始まる。AIを擬人化した登川瞳美、儀保孝幸、具志堅興治とチャットを通したやり取りの中で心の交流が生まれていく。
我那覇の「スタンドバイミー」は、新里優奈演じる女子大生に恋心を抱く、渡嘉敷直貴演じる研究者の男性の心の機微を、潮平けい子の朗読で描く場面で幕を開けた。女子大生の高祖母の時代に場面が移り変わり、夏目漱石が登場する回想シーンを経て、「夏目漱石ならスタンドバイミーをどう訳すか」が物語の鍵となる。
くじ引きで作品に参加する役者が決まるという変則ルールについて、上演後、大田は「初めてご一緒する役者さんのメンバーだったので、一緒に焼肉を食べにいくことから始まりました」とコミュニケーションを大切したことを紹介。「役者の皆さんとは稽古しながらすり合わせていきました。小喜劇、もしくはロングコントを書く時と同じ感覚で作っていきました」と振り返った。
総合演出・新垣晋也「毎年の祭りとしてやっていきたい」
今回の「九人脳」は、新垣が2015年に同様の企画を4人の脚本家で行った「四人脳」から数えると実に9年ぶりとなる。総合演出の新垣晋也に話を聞いた。
-今回の9人の脚本家はどのように選ばれたのですか?
「九人脳」としては一発目なので、良いスタートを切りたいと「ぜひこの方に」と思う方に直接お声がけしていきました。ベテランや、一線で活躍されている方も参加してくれたのがうれしかったです。今回はFECからも(大田)享さんが初参戦してくれて、新しい風が入りました。来年はさらにいろんな方が出ていただけると、沖縄エンタメが垣根なく盛り上がると思います。
-最後のせりふを「コーヒーでもどうぞ」としたのはなぜですか?
「コーヒーでもどうぞ」という、物語の最初に出てきそうなせりふを最後に持ってくるとどうなるんだろうと、自分がワクワクしたいという理由でした。
-今後の「九人脳」の開催についてはどのように考えていますか?
次回、あります。毎年の祭り、フェスティバルとしてやっていきたいです。
今回紹介した3作品以外の6作品は、以下の通り。
山田享楽「青い炎のルサンチマン」/出演:当山彰一、平安信行、富山結美
古堅晋臣「いちご水のグラス」/出演:山内千草、西平士朗、大嶺佳奈、仲泊伽帆
久保深樹「コーヒーブレイク」/出演:上地広季、佐久田あさか
けいたりん「the pink」/出演:國仲正也、崎間由樹、そばしょう
高安剛士「6人脳」/出演:平良直子、阿波根昌悟、大山瑠紗、島仲涼花、やんびー、具志堅興太
真栄平仁「コーヒーでもどうぞ」/出演:真栄城弥香、大城和希、わたぬきかな
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