[社説]陸自HPに牛島司令官の句 極めて不適切 削除せよ
沖縄タイムス+プラス / 2024年6月6日 4時0分
第32軍司令官の辞世の句を麗々と掲げる必然性がどこにあるのか。旧日本軍と自衛隊とのつながりを強調しているかのような掲載だ。陸上自衛隊の公式ホームページ(HP)にふさわしいとはいえず、直ちに削除すべきだ。
陸自第15旅団のHPに、牛島満司令官の辞世の句が掲載されていることが表面化した。
15旅団は2010年、那覇駐屯地の第1混成団が格上げされ発足した。
HPでは旅団の沿革を写真やテキストで紹介。復帰に伴って臨時第1混成群長として赴任した県出身の桑江良逢氏の訓示とともに牛島司令官の句が掲示されている。
句は当時作成された「部隊史」に訓示を寄稿する際、桑江氏が付け加えたという。「秋待たで 枯れ行く島の 青草は 皇国の春に 甦(よみがえ)らなむ」とあり、皇国史観を前面に出した内容だ。
2018年のHP開設当初から掲示されており、木原稔防衛相は「(部隊の)歴史的事実を示す資料として掲載した」と説明する。
しかし、であれば訓示だけを紹介すればよいだろう。句は画像で大きく表示されており、強調したいのはむしろこちらではないのか。
沖縄戦では第32軍が住民避難を軽視した結果、多くの非戦闘員の命が失われた。司令部は「軍官民共生共死」を貫き、牛島司令官は「最後まで敢闘し悠久の大義に生くべし」との言葉を残し自決したのである。
そうした司令官の句が訓示とともに引用されれば、憲法9条下の戦後の平和主義を否定したとの疑念さえ湧く。
■ ■
敗戦により日本軍は解体された。
自衛隊は1954年、憲法の下で自衛のための必要最小限の実力組織として設立された。皇軍だった日本軍と本質的に異なり「文民統制」の原則の下にある。
しかし、皇軍時代を彷(ほう)彿(ふつ)させる発信が繰り返されている。
今年4月には陸自大宮駐屯地(さいたま市)の第32普通科連隊が、連隊の活動内容などを紹介する公式X(旧ツイッター)で、「大東亜戦争最大の激戦地硫黄島」などと投稿していたことが明らかになった。
大東亜戦争は戦時に政府が掲げた呼称であり、戦後は使っていない。
報道の指摘を受け、防衛省が「誤解を招いた」として「大東亜戦争」などの語を削除し再投稿された経緯がある。
■ ■
こうした陸自の動きは政府の防衛強化と連動するように活発化している。
年明けには陸自幹部や宮古島駐屯地の幹部らが制服を着て神社に集団参拝する問題も相次いだ。
74年の事務次官通達では「組織的参拝」が禁じられている。
幹部らは「私的」と釈明したが、公用車を使い集団で行えば「私的」とはいえず政治性を帯びる。
自衛隊組織として、かつての戦争をどう理解しているのか疑問だ。防衛省は文民統制の役割を果たすべきだ。
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