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ゴーヤーマラカス、琉球カリンバ... 国際通りの高良レコード店、オリジナル土産品に見る経営戦略

沖縄タイムス+プラス / 2024年6月11日 10時0分

高良レコード店の高良義弘社長(左)と、執行役員の石川祐輔さん=5月22日、那覇市の同店

 今年75周年を迎えた、那覇市の老舗楽器店「高良レコード店」。長きにわたって多くの楽器愛好者やミュージシャンを支え続けており、「タカレコ」の愛称でも知られる。そんな同店は6月から業務形態を一新し、楽器本体の販売を縮小させ、消耗品やアクセサリーといった小物類の販売や楽器修理を軸に展開する。背景には、国内でも屈指の観光ストリートである国際通りに面するが故に、時代の移り変わりに合わせて観光客もターゲットに見据えた経営最適化があった。(文・写真=ライター・長濱良起)

高良社長の出した意外な答え

 もともと高良レコード店は、業態を柔軟に変えながら地域に溶け込んでいった店でもある。開店初期は主力商品の一つとして、楽器やレコードの他に万年筆も看板に掲げており、入り口付近にずらり並べていた。扇風機などの家電も、ギターと一緒に店頭に並んでいた。

 2017年に現在の建物に建て替える前は、2階でライブハウス「ROCK in OKINAWA」や音楽スタジオを展開していた。「楽器って憧れから入るものですから」と高良義弘社長が話すように、実際にライブを見る場所を作ることで、新しく楽器を始めたいという初心者層の掘り起こしにもつなげていた。

 近年ではネット通販の台頭で、楽器本体や小物類の売り上げは全盛期ほどではなくなっているという。今後の高良レコード店はどう変わっていくのか。そのことを問われた高良社長は、意外とも言える答えを出した。「楽器店としてもそうなんですけど、土産物品として観光客にも対応できるようなお店作りをしたいですね」

客層の中心は観光客へ

 那覇市の国際通りは観光客であふれ、コロナ禍はもうすでに過去のものだ。コロナ前よりも多くの観光客が歩いていることが、一見しただけでも分かる。観光客はわざわざ沖縄で大きな楽器本体を買う傾向にない。土産店が並ぶ中で、物珍しさで入ってくる観光客が、現在の客層の中心だ。

 「『なにか面白いものはないかなー』とお土産を探して入る人も多いです。なのでいろいろオリジナル商品を開発しているわけですよ」と高良社長。観光客向けのお土産を念頭に置いた楽器店は、かなり珍しい例だと言える。

 手軽なものだと、オリジナルギターピックはかなりの数のラインアップを誇る。国道58号や330号の標識をモチーフにしたものは、常連客にはもはや、おなじみだ。有名バンドのロゴをパロディーにしたものや、シーサーが楽器を演奏している図案もある。

 赤と黄色で塗られた沖縄の箸のカラーリングをそのまま採用したドラムスティックもあれば、弾くだけで琉球音階が鳴らせる「琉球カリンバ」もある。

「ゴーヤーマラカス」開発秘話

 そんな中でも最古のものが、約30年前から販売している「ゴーヤーマラカス」だ。見た目はゴーヤーそっくりで、振るとシャカシャカと音が鳴る。実際の使い方としてはシェイカーに近い。もともと、ミカンやバナナなど果物の形をしたシェイカーを販売している楽器メーカーがあり、「沖縄だしゴーヤーもあればいいな」と高良社長から発案して完成した商品だ。

 早速、商品の型を取るため、実際のゴーヤーを県外の工場に送ることになった。当時の従業員の実家に畑があったため、大きく成長する前の手のひらサイズのゴーヤーを送った。そしてしばらくして高良レコード店に届いたサンプル商品は、高良社長が想像していたものとはちょっと違っていた。

 「なんかね、色がどす黒いんですよ。向こうでサンプル用に型を取った後に冷凍して保管していたそうなんですけど、その間に変色していたみたいで。でも当時、県外ではゴーヤーは一般的なものじゃなかったからどんな色か分からなかったらしいんですよね」

 結局、新鮮なゴーヤーをもう一度送って、健やかな緑色のゴーヤーマラカスが出来上がった。

まだまだ出てくるゴーヤー商品

 店先でよく聞こえてきた言葉があった。「ゴーヤーマスカラ」。マラカスとマスカラを言い間違える人が続出していた。「特に女性は普段からマスカラの方になじみがあるので、間違えることが多いんですよ。それなら本当に作ろうと思いました」(高良社長)

 小さい時から、欲しいものは自分で作っていたというほど手先が器用だった。作り方はシンプルだ。ゴーヤーマラカスにドリルで穴を空けて、市販のマスカラを接着した。実施に音も出る。「これなら、マスカラと思って買っても、マラカスと思って買っても、どっちの用途としても使えるので問題ありません」

 そう話す高良さんの首には、指笛のような音が誰でも簡単に鳴らせる「ゴーヤーホイッスル」がぶら下がっていた。「『これ何ですか?』って聞かれたくて、いつもぶら下げています」。ゴーヤー商品は尽きない。

ネットを活用したアプローチにも力

 高良レコード店はここ数年、SNSや動画コンテンツ、LINEコミュニティー、クラウドファンディングといった新たなアプローチにも力を入れている。仕掛け人は執行役員の石川祐輔さんだ。石川さん自身も中学時代から高良レコード店に通い、同店のギター教室に通っていた“タカレコっ子”。2000年代後半には、ロックバンド・HIGH and MIGHTY COLORのギタリストとしてメジャーシーンの最前線でも活躍していた。「高良レコード自体が経営を維持していけるように、必ず成功する確証があるわけではないですが、新しい取り組みをやっています」と、世代が巡っても高良レコード店を愛するスタッフが集まっている。

 他には真似できない一風変わった「楽器屋兼土産品店」。75年の間に次々と形は変われど、唯一無二の魅力を放つタカレコがここにある。
 

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