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[社説]国立大「値上げ」議論 教育格差広げかねない

沖縄タイムス+プラス / 2024年6月14日 4時0分

 国立大学の授業料引き上げを求めた提言が、波紋を呼んでいる。学生に負担を強いれば、教育格差が広がりかねない。

 3月、文部科学省の審議会で慶応義塾長が国立大の授業料を現状の約3倍となる150万円程度に引き上げるよう提言した。5月には東京大が約10万円の値上げを検討していることも明らかになった。

 大学の授業料は省令で標準額が定められている。2005年の改定で1万5千円引き上げられ、現在は年間53万5800円。各大学はさらに20%まで増額できるが、一部を除き多くの大学が、20年間据え置いている。

 国立大は04年に法人化され、大学側も経営戦略を考える必要に迫られてきた。

 優秀な教授陣と魅力的な授業、充実した教材をそろえ、学生に「この大学に行きたい」と選んでもらわなければ成り立たない。さまざまな工夫や戦略が必要だが、昨今の物価高のあおりを受け、厳しい状況に直面している。

 だが物価高に苦しんでいるのは学生やその家庭も同じである。学費の高い私立大には行けなくても、授業料の比較的安い国立大入学を目指し、勉学に励む学生は多い。今後、授業料が約3倍に跳ね上がれば進学を諦める学生が出てくる可能性もある。特に低所得世帯の子には大きな痛手になる。

 選択の幅を狭めてしまえば、大学は自らの首を絞めることになりはしないか。大学の存在意義を社会全体で考える必要がある。

■    ■

 離島県沖縄の学生にとっては、より深刻な問題である。

 文部科学省の23年度学校基本調査によれば、沖縄の大学等進学率は46.3%で全国で最も低い。進学率7割を超える京都や東京と比べれば、20ポイント以上の差がある。

 大学進学には授業料以外にもお金がかかる。特に県外に進学する場合は、交通費や引っ越し費用、その後の仕送りなども加えて各家庭の負担は大きい。授業料が高騰すればハードルはより一層高くなる。家庭の経済状況によって進学格差が広がることを懸念する。

 全国では小中学校の給食費無償化が広がり、東京では本年度から高校授業料も実質無償化された。少子化の中、子どもが教育を受けやすい環境をいかに整備するかの模索が始まっている。

 一方で大学の授業料を約3倍も引き上げる内容の提言は、時代に逆行していると言わざるを得ない。

■    ■

 大学法人化を機に国からの運営交付金が削られ、国立大全体で約1600億円も減額された。

 だが大学は、長期的視野で研究に専念する高等教育機関であり、将来の日本、世界に羽ばたく人材育成の場である。国の財政支援も含めた幅広い対策が必要だ。

 経済協力開発機構(OECD)の報告では、日本の高等教育費の家庭負担の割合は52%でOECD平均の2倍超に上る。

 大志を抱く若者が、経済的理由で夢を諦めることのない国であるべきだ。

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