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沖縄戦を学ぶ手がかりに 工夫凝らし継承 市町村・沖縄県発刊の地域史リスト一覧

沖縄タイムス+プラス / 2024年6月23日 10時2分

豊見城市が制作し、インターネット上で公開している「語り継ぐ受け継ぐ豊見城の戦争記憶」総集編〈完全版〉の動画(YouTubeより)

[記憶を積む 地域史と沖縄戦]

 1970年代の「沖縄県史」「那覇市史」の刊行をきっかけに、県内の各市町村で戦争体験をつづる市町村史発刊への取り組みが進んだ。住民への聞き取りなどから地域ごとに異なる証言や資料が積み上げられ、沖縄戦の全体像が明らかになっていった。戦争に関する記述がある地域史は、本紙調べで少なくとも190冊に上る。これまで集められてきた記録と、刻まれた証言を活用した各自治体の工夫を紹介する。

豊見城市が特設サイトを開設

証言映像を全編公開 ■ 47万回超視聴も

中城村は戦跡マップ作成 全世帯配布

 豊見城市は2019年、公式ホームページに特設サイト「豊見城市と沖縄戦」を開設した。31人の沖縄戦の証言をまとめたDVD「語り継ぐ受け継ぐ豊見城の戦争記憶 総集編」(42分)も制作し、映像は全編を特設サイトで公開している。視聴数は1万4千回を超える。

 平和な村が次第に緊迫し、戦争に突入。米軍に捕らわれた後の収容所での生活、戦後復興などの証言を時系列で紹介している。証言は31人分を個別に見ることもできて、映像によっては47万回以上視聴されている。 

 特設サイトには、証言の聞き取りに誰もが活用できる「質問項目票」も自由にダウンロードできるようになっている。市が実際に使っている調査票で、同市文化課の島袋幸司学芸員は「証言収集は私たちだけでは限界がある。家族に体験者がいれば、自分たちで聞き取り、思いを継ぐことができる」と説明する。

 豊見城市立伊良波中学校は23年、映像証言を使って平和学習を行った。コロナ禍で生徒一人一人に配ったタブレットを活用。証言を視聴し、感想を小さな新聞にまとめて発表する取り組みに発展させた。

 授業を担当し、自身も豊見城出身の内山直美教頭(現在は豊崎中教頭)は「体験者が自分の地域の人たちなので生徒が身近に感じられる。証言は地域や年齢、性別がさまざまで、それぞれ異なる体験をしている。とても良い教材で活用しやすい」と話した。

 久米島町は21年、久米島町史資料編1「久米島の戦争記録」を発刊した。戦争体験者71人の証言を収録したほか、鹿山事件(久米島住民虐殺事件)の関係資料などを収録する。島内の全小中学校に寄贈した。

 久米島博物館の山里直哉学芸員は、小中学校の教員のほとんどが島外から赴任する20代前半の教員と説明。「沖縄本島の戦争を教えることが多い印象だが、町史で島の実情に触れて、地域の戦争も子どもたちに伝えてほしい」と願った。

 中城村は20年に「ガイドブック 中城村の戦争遺跡-沖縄戦の記憶と痕跡を歩く」と「中城村の戦跡マップ」を作成し、村内の全世帯に配った。戦跡など77カ所の地図を収録。集落ごとの空撮写真に場所を明示して、解説している。

 名護市は22年、本島北部の沖縄戦の歴史や戦跡などを紹介するガイドブック「私たちのまちは戦場だった-おじぃ、おばぁが見た沖縄戦」を小中学生の学習参考書として発行した。

 子どもたちが自分の学校周辺でガイドブックを持ち歩き、現在の景色と重ね合わせながらイメージできるよう写真や図、イラストを多く掲載。平和学習で活用されている。(社会部・吉田伸、當銘悠)

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