「国に突き放されたようで悲しい」家族の証しを切望 隔離や差別で共に暮らせず 位牌継承の男性、ハンセン病補償の対象外に
沖縄タイムス+プラス / 2024年6月25日 5時27分
ハンセン病元患者の家族に対する補償法で、元患者のトートーメー(位牌(いはい))を継いだ親族の男性が対象外とされた。事実上の親子として長年過ごしてきただけに落胆は大きく、「国から家族ではないと突き放されたようで悲しい」と唇を震わせる。(社会部・下里潤)
「まさか」-。2022年3月、国から支給は認められないとする決定を受け、男性は言葉を失った。10代で位牌を継承する決意をし、本当の親子として生活を送っていた。自身の子や孫たちも「おじいちゃん大好き」と懐き、世代を越えた絆があった。
ただ、親族内では偏見差別を恐れ、外部に元患者の話をすることはタブー。元患者自身も「迷惑がかかる」と話し、名護市の沖縄愛楽園以外で家族と会おうとはしなかった。地元で一緒に暮らそうと提案しても、断固として 首を縦に振らなかった。
国の誤った隔離政策さえなければ「普通の家族」として暮らせたと思う。一緒にレストランへ行ったり、旅行を楽しんだりしたかったが、出かけた記憶は人里離れた海岸で弁当を食べたくらい。「世間には私の存在を絶対、話してはいけない」。そう言い残し、元患者は約10年前にこの世を去った。
国の責任を認定し、家族への賠償を命じた熊本地裁判決から5年。国は偏見差別の解消に取り組むとするが、「本当に実態を理解しているのか」と疑問を禁じ得ない。基地問題で「沖縄の負担軽減に取り組む」と繰り返す政府の言葉と同じに映るからだ。
「補償金が欲しくて裁判を起こしている訳ではない。国は、せめて父が生きた証しを認めてほしい」。位牌を前に、男性は目を潤ませた。
沖縄独特の問題 救済すべきだ
ハンセン病の問題に詳しい神谷誠人弁護士の話 ハンセン病家族補償法は一定の要件を設けることで偏見差別を受けた家族の補償範囲を決めている。しかし、実際の運用では想定外のグレーゾーンとも言うべき事案がどうしても出てくる。今回のようなトートーメー(位牌(いはい))継承により、事実上の親子関係が生じたケースは沖縄独特で珍しい。
子は元患者との関係性が深く、周囲から偏見差別を受ける場合がほとんど。家族としての関係性が壊されることも多く、本来は裁判ではなく補償法の中で救済されるべき人たちだ。法改正を含め、新たな基準づくりが求められる。
一方で、周囲からの偏見差別を恐れ、補償金の申請自体をためらう人も多い。実際には、申請する中で家族間で過去の複雑な思いを打ち明け、引き裂かれた関係が修復されるケースを何度も見てきた。補償金を受け取ることで気持ちが楽になることもある。悩んだ場合は弁護士など信頼できる人に相談してほしい。
外部リンク
この記事に関連するニュース
ランキング
-
1〝選挙〟妨害や「ポスタージャック」で公選法改正求める声 専門家は「議論する機会だ」
産経ニュース / 2024年6月28日 21時55分
-
2石破氏、総裁選立候補の意向=「ポスト岸田」の動き活発―自民
時事通信 / 2024年6月28日 20時58分
-
3ガンダムを選挙利用? 前市長ら指示、市長選直前の市広報表紙に 富野監督の故郷・小田原で市議会から批判
カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年6月28日 18時27分
-
4「罪重い」「ぬるま湯のゆ党」=立民代表、維新を痛烈批判
時事通信 / 2024年6月28日 16時6分
-
5加害者の今を知ってしまった…「娘の未来は絶たれたのに」中2いじめ、遺族の憤りと煩悶 学校推薦で高校進学、実業団選手に。謝罪はないまま
47NEWS / 2024年6月28日 10時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)