[社説]鹿児島県警に特別監察 組織のうみを出し切れ
沖縄タイムス+プラス / 2024年6月26日 4時0分
職務上知り得た秘密を退職後に漏らしたとして、鹿児島県警の元生活安全部長が国家公務員法違反の疑いで逮捕、起訴された。同県警を巡っては4月以降に現職の警察官3人が相次いで逮捕されている。警察庁は今月24日、同県警に特別監察を開始した。不祥事の原因などを検証する特別監察の実施は10年ぶりであり、由々しき事態である。
前部長が法廷で、本部長による「事件の隠蔽(いんぺい)」を告発したことで事態は一変する。現職の警察官の盗撮容疑に「最後のチャンスをやろう」などと述べて、捜査を進めなかったと主張した。ウェブメディア側に情報を提供した動機については「隠蔽が許せなかった」と語った。
本部長は繰り返し隠蔽を否定しているが、警察官の逮捕が覚知から5カ月もたっていることなどを踏まえると、説明は釈然としない。
同県警は4月、捜査情報を外部に漏えいしたとして、地方公務員法違反(守秘義務違反)の疑いで巡査長を逮捕した。この事件の関連で福岡市のウェブメディアの記者宅を家宅捜索しており、元部長が漏えいした内部情報はこの捜索で見つかっている。
重大なのは、同県警が自分たちに批判的なメディアを強制捜査していることだ。最高裁は2006年、「取材源の秘密は、取材の自由を確保するために必要なものとして、重要な社会的価値を有する」と判断している。
報道関係者への強制捜査は、言論や表現の自由、ひいては国民の知る権利に関わり、慎重にも慎重を期すべきである。
■ ■
同県警を巡っては、捜査書類を速やかに破棄するよう促す内部文書を捜査員らに配布していたことも明らかになった。
「再審や国賠請求等において、破棄せずに保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありません」などと周知されていたという。
刑事裁判で検察側は、有利な証拠のみを裁判所に提出し、有罪を立証するケースがほとんどで、被告側に有利な証拠は警察から検察に送られないことも十分に想定される。刑事裁判のやり直しを求める再審請求では、検察側が開示した新たな証拠が、無罪を立証する決め手につながったケースもある。
ウェブメディアに報道された後、同県警は文書を修正した。隠ぺい体質をうかがわせる出来事といえ、見過ごすことはできない。
■ ■
警察庁は、同県警の警察官による盗撮事件の捜査に関し、本部長がきめ細かい確認と指示を現場にしていなかったとして、本部長を長官訓戒の処分とした。本部長は会見で事件の隠ぺいを改めて否定したが、これで幕引きとするなら疑惑は依然として疑惑のままである。
特別監察が組織の防衛を優先する形ばかりのものとなれば、国民の理解は得られない。同県警のみならず警察全体の信頼を揺るがす事態にも発展しかねない事態であることを肝に銘じ、この際すべての膿(うみ)を出し切るべきである。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
鹿児島県警の30代巡査部長 相手が16歳未満の少女と知りながら性交で懲戒免職処分
MBC南日本放送 / 2024年11月22日 19時46分
-
鹿児島県警の30代巡査部長 懲戒免職「16歳未満の少女と知りながら性交」
MBC南日本放送 / 2024年11月22日 12時25分
-
【真意は】再審無罪確定の袴田巌さんに静岡地検トップが直接謝罪へ…「どこかで謝罪せざるを得ない」元検察・若狭弁護士の見解
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年11月21日 18時13分
-
前鹿児島県警本部長が異動 自動車安全運転センターへ
共同通信 / 2024年11月6日 17時56分
-
鹿児島県警本部長交代へ 11月5日付、警察庁発表
共同通信 / 2024年10月30日 19時2分
ランキング
-
1セブン&アイ「9兆円MBO案に潜む“危険な賭け”」。非上場で外資による買収は回避できるけど
日刊SPA! / 2024年11月24日 8時52分
-
2所持金616円でタクシーに約3時間乗車 ゴールは警察署 自称作家の女 詐欺の疑いで逮捕
STVニュース北海道 / 2024年11月24日 9時49分
-
3車動き出し下敷き、71歳妻死亡 群馬の温泉旅館駐車場
共同通信 / 2024年11月24日 1時16分
-
4斎藤元彦氏側が知事選で「広報全般を任された」会社に報酬支払い、SNSでは違法との指摘相次ぐ
読売新聞 / 2024年11月24日 1時20分
-
5党員不適切登録の自民・田畑裕明衆院議員、社員が架空党員にされたか尋ねた社長に「党費はあなたが払ったことにして」
読売新聞 / 2024年11月24日 10時57分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください