[社説]自衛隊発足70年 際限なき拡大に危機感
沖縄タイムス+プラス / 2024年7月2日 4時0分
1954年の自衛隊発足から70年がたった。
自衛隊の任務はこの間大きく変容し、攻撃能力の拡大や装備強化も進む。
だが、憲法9条は「武力放棄」をうたっている。際限なき「膨張」に危機感を抱く。自衛隊の在り方を真剣に議論すべき時だ。
自衛隊の成り立ちには米軍が深く関わっている。
戦後、日本軍は連合国軍総司令部(GHQ)により解体された。
一方50年に朝鮮戦争が勃発するとGHQは再び軍備を指示。これを受けてできたのが「警察予備隊」で自衛隊の前身となる組織である。
憲法との整合性を図るため、自衛隊は「自衛のための最低限の実力組織」と位置付けられ、その任務は「専守防衛」と限定されてきた。
大きな転機は91年、湾岸戦争後のペルシャ湾への海自掃海艇派遣だ。発足前の自衛隊法の審議では「海外出動は行わない」ことが確認されていたものの強行された。
これを契機に国際平和協力法が成立。以降、国際貢献の名目で海外派遣が常態化してきた経緯がある。
次の転換点は今から10年前、自衛隊発足60年の節目に閣議決定された集団的自衛権の行使容認だ。
安倍晋三政権は「集団的自衛権の行使は認められない」という憲法解釈を閣議決定のみで変更。「密接な関係にある他国」が攻撃され、日本の存立が脅かされれば自衛隊は武力行使できるとした。
国是に関わる重大な変更が十分議論されずに決定されたのである。
■ ■
以降、防衛政策の大きな方針転換が矢継ぎ早だ。
2015年に安全保障関連法(安保法)が成立。22年末に閣議決定した安全保障関連3文書には、他国のミサイル基地などを破壊する「敵基地攻撃能力」の保有が盛り込まれた。
こうした動きに連動し、県内の自衛隊配備も急速に進んできた。
いわゆる「南西シフト」である。16年以降、先島諸島に次々と自衛隊駐屯地が開設された。島へのミサイル部隊の配備など機能も拡大する一途だ。
さらに米軍基地が集中する県内では米軍と自衛隊による日米合同演習も大規模化している。
あたかも有事が起きる前提で進む住民保護や避難計画、軍事使用を目的とした港湾・空港整備方針など進む「要塞(ようさい)化」や「日米一体化」を不安視する声が高まっている。
■ ■
中国の海洋進出や北朝鮮のミサイル開発を背景に政府は近年、自衛隊の増強と任務拡大を加速化してきた。
本年度末には陸・海・空の部隊を一元的に運用する統合作戦司令部を発足させるほか、日米同盟を基軸にアジアやオセアニア、欧州との関係強化も押し進めている。
一方、対中外交はしぼみ、北朝鮮と対話する努力は不足している。
政治家が「戦う覚悟」を言えば言うほど緊張は高まる。専守防衛の形骸化に歯止めをかけることこそが求められる。
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