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[社説]辺野古土砂搬出で事故 全工事中断し見直しを

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月3日 4時0分

 名護市辺野古の新基地建設に関係する交通死傷事故が起きた。名護市の安和桟橋で、埋め立て用の土砂を降ろした後、港から車道に出たダンプカーが抗議活動中の女性と民間警備会社の男性を巻き込んだ。男性は死亡、女性は足を骨折するなど重傷を負った。

 尊い命を奪う重大な事故だ。あってはならないことであり、このまま危険な状態を放置することは許されない。

 現場では、抗議する市民が毎日のように港の出入り口をゆっくり歩き、ダンプの行く手を一時的に妨げてきた。

 作業を少しずつ遅らせ、工事全体を長引かせるためだ。その間に政治や国際情勢が変化すれば、政府は新基地建設を断念するのではないか、と期待した行動である。

 工事は、県との裁判や大浦湾側で見つかった軟弱地盤への対応などで遅れている。

 政府は昨年12月、玉城デニー知事の権限を取り上げ、埋め立て設計の変更承認を代執行し、大浦湾側の工事に着手した。それ以降、工事を急ピッチで進めている。

 軟弱地盤の改良に向けた、くい打ち試験を週内に実施し、8月から本格的な工事を始める見通しだ。

 こうした中、市民と警備員、警察官、ダンプの運転手のいずれも、大きなストレスや、緊張を抱えていたのは間違いないだろう。

 事故が起きてもおかしくない状況を現場任せにしてきたのではないか。

 政府は対応が適切だったか検証しなければならない。

■    ■

 事故を受け、玉城知事は、沖縄防衛局に土砂の搬出中止を求めた。政府は船で辺野古に土砂を運び出す安和桟橋と本部町の本部港塩川地区での作業を中断している。

 ただ、この2カ所に限らず、辺野古のキャンプ・シュワブゲート前でも抗議する市民と警備員の衝突は続いている。事故は再び起きる恐れがある。政府は全ての作業を中断し、工事の在り方を見直すべきだ。

 辺野古の新基地建設は、2014年7月1日の事業着手から10年。シュワブ前の座り込みは着手の6日後に始まった。塩川地区では17年12月、安和桟橋では18年12月から抗議が続く。この間、3度の知事選、19年2月の県民投票で、新基地建設反対の民意が示されてきた。

 それでも、政府は工事を止めない。だから、市民は直接行動するしかないのだ。

 抗議が長期にわたるのは、県民の理解や納得を得ずに工事を強行してきた政府に責任がある。

■    ■

 政府は陸上での座り込み、海上での船やカヌーに乗った抗議活動の対処に、多額の警備費をつぎ込んでいる。

 総工費は当初見通しの2.7倍となる約9300億円に膨らみ、うち警備費が1700億円と2割を占める。

 業者と契約した後、安全対策や警備強化を名目に事業費を2~3倍に増額するといった「異常事態」もこれまでに判明している。

 根強い抗議を青天井の予算で抑え込んでいるのが実態だ。新基地建設は無理を重ねたひずみが生じている。

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