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[社説]大浦湾くい投入 やり方が強引で乱暴だ

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月5日 4時0分

 事前協議が整うまで工事を中止するよう求める県の要請を聞き入れず、沖縄防衛局は一方的に作業に踏み切った。

 名護市辺野古の新基地建設に伴い、防衛局は3日、大浦湾北側にある「A護岸」整備予定地で鋼管くいを海中に投入する作業を始めた。

 防衛局は、8月から軟弱地盤のある大浦湾側の埋め立て工事に着手することを県に伝えており、今回の海中投入は、くい打ち試験に向けた準備作業と位置付ける。

 県は同日、試験を本工事着手と見なし、中止するよう行政指導した。玉城デニー知事も防衛省で鬼木誠副大臣に会い、協議中であることから、着手しないよう求めた。

 事前協議は、2013年に仲井真弘多知事が、埋め立てを承認した際に付した環境保全対策の徹底を求める留意事項に基づく要請だ。

 しかし作業は強行された。

 木原稔防衛相は「鋼管くいは試験終了後に撤去するもので、協議の対象ではない」との認識を示している。

 大規模な地盤改良は、技術上の課題はもちろん、環境面でも大きな問題をはらむ。

 大浦湾には、世界有数の巨大サンゴ群落が広がり、約260もの絶滅危惧種を含む5300種以上の生物が確認されている。

 地盤改良が必要な範囲は、大浦湾の埋め立て区域約111ヘクタールの半分以上に当たる66ヘクタールに及ぶ。改良工事では広大な範囲に約7万本のくいを打ち込む予定で、周辺の生態系に与える影響は計り知れない。

 県は、環境保全対策に関する質問を防衛局に送付。監視調査などを求めてきた中での、許されない見切り発車だ。

■    ■

 昨年末、軟弱地盤改良に向けた設計変更承認に応じない玉城知事の権限を取り上げた、国土交通相による「代執行」以後、県の意向を無視するかのような国の強引な工事が加速している。

 防衛局は1月、大浦湾側で海上ヤード(資材置き場)の造成工事に着手した。大浦湾中央海域に大量の石材を投下して面積は約4万3千平方メートルに及ぶ。

 この時も、県が環境保全対策に関する事前協議の対象になると文書で通知したのに対し、防衛局は仮設構造物であるなどとして、工事に踏み切った。仕様書によると、洗浄して使うことになっている。

 石材を海に投下するたびに粉じんが発生し、海が白濁するなど、十分に洗浄されているか疑問が指摘された。

■    ■

 埋め立てを承認した仲井真氏は当時の安倍晋三首相と米軍普天間飛行場の「5年以内の運用停止」の約束を交わした。だが、米側への働きかけは見えず、政府は今、返還時期を示すこともできない。

 大浦湾の軟弱地盤の改良は難航が見込まれ完成は「早くても2037年」とされる。

 相次ぐ米兵暴行事件でも、政府の冷ややかな対応と基地負担の重さが浮き彫りになった。

 海上ヤード工事やくいを海底に打ち込むことによる環境破壊、サンゴを含めた生態系への影響など、県による立ち入り調査や潜水調査を通じた監視が必要だ。

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