[社説]辺野古 座り込み10年 「あきらめない」が力に
沖縄タイムス+プラス / 2024年7月8日 4時0分
名護市辺野古の新基地建設に反対する市民団体が、米軍キャンプ・シュワブゲート前で座り込みを始めてから、7日で10年になった。
この10年の間、政府は陰に陽に、文字通りあの手この手を使って、工事の強行と世論の分断、アメとムチの政策を行ってきた。
既成事実を積み上げ、県民の中にあきらめの空気を広げる。新基地容認の姿勢を示す自治体や地域に対しては、予算面で配慮する。
逆に新基地に批判的な県に対しては、一括交付金の減額など「見せしめ予算」を組み、要請などの際、差別的な対応もはばからない。
2019年2月24日に行われた県民投票では埋め立てに対する「反対」が7割超に達した。
驚くべきことに政府は、県民投票の結果を完全に無視して、翌日も土砂投入を続けたのである。
法律で保障された住民の権利が、これほど露骨にないがしろにされたことが、かつてあっただろうか。
県民投票の結果が出た以上、いったん工事を止めて県と話し合う。それが問題解決の常道である。
権力行使をためらわない強硬な政権が国と県の対立を広げ固定化してしまったのだ。
辺野古の工事を巡っては、国と県の双方が協議を行うことになっているが、国の一方的な判断で協議が打ち切られるケースが続いている。
大浦湾側の海上ヤード設置工事のように「協議の対象外」だと、協議そのものに応じないケースもある。
■ ■
翁長雄志知事の時もそうだったが、政府・自民党の中には「国に協力しない県に便宜を図る必要はない」という意識が根強い。それが米兵による性犯罪の通報問題にも影響を与えている節がある。
市民らによる座り込み行動が息長く10年も続いているのには幾つかの理由がある。
新基地建設計画が目に見える負担軽減の原則に反し、逆に基地の再編・固定化をもたらすこと。
保全にこそ力を尽くすべき生物多様性豊かな「宝の海」を埋め立て、軍事基地を建設しようとしていること。
沖縄県民の自治や自己決定の権利が脅かされ、それが差別的処遇と県民に受け取られていること。
国のやり方があまりにも強引過ぎること、などである。
現地行動には参加しないが新基地建設には反対という県民世論が幅広く存在することも行動の支えになっている。
■ ■
大浦湾側の埋め立て工事について沖縄防衛局は8月1日から本格工事に着手すると県に通知している。これにどう対応していくか。
世界で共有されている海の環境保全という普遍的な価値を正面に掲げ、国内だけでなく米国や国際世論に新基地建設の不合理性を訴えていくことが欠かせない。
戦後の抵抗の経験に根差した「あきらめない」姿勢と同時に、若い人たちが参加しやすい創造性にあふれた取り組みも必要だ。
辺野古問題はこれからが正念場である。
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