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[社説]米兵事件 首相も把握 沖縄の怒りに向き合え

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月12日 4時0分

 岸田文雄首相は事件をどう受け止めたのか。米国や米軍に抗議し、再発防止を求めたのか。

 昨年12月に米空軍兵が県内で少女を誘拐暴行した事件について、岸田首相も今年3月27日の米兵の起訴前に把握していたことが明らかになった。

 事件を巡っては1997年に日米で取り決めた通報手続きが守られず、米兵の起訴後も県に知らされていなかった。

 取り決めによると通報体制は「米軍↓外務省↓官邸・関係省庁・防衛省」のルートと「米軍↓沖縄防衛局(防衛省)↓県・自治体」のルートの大きく二つがある。

 今回の事件は両ルートで防衛局への通報がなかったことで、県や自治体への連絡が滞ったことが判明した。

 外務省は米兵の起訴後にエマニュエル駐日米大使に抗議したと明かしており、この時点での情報共有は外務省、首相官邸、駐日米大使の3者にとどまっていたということになる。

 岸田首相は今年4月に国賓待遇で訪米し、バイデン大統領と会談した。

 基地が集中する県内では米兵による相次ぐ事件事故も県民の重い負担となっている。「基地負担の軽減」は岸田首相の公約であり、会談に当たっては事件について当然大統領に抗議し、再発防止を申し入れるべきだろう。

 そうした形跡がないということであれば、もはや「隠蔽(いんぺい)」というほかはない。

■    ■

 米兵による事件事故を巡っては、過去にその時々の首相が米国や米軍へ抗議を伝え、その都度綱紀粛正を申し入れてきた経緯がある。

 それでも抜本的な解決には至らず、県民の安全や命が脅かされる犯罪は繰り返されてきた。それであっても今回、岸田首相には、申し入れた姿勢すら見えないのである。

 県内では、今年5月にも米兵による性暴力事件が発生した。通報体制の形骸化が再発を招いた可能性もあり、政府は米軍の取り決め違反についても抗議すべきだ。

 岸田首相は5月の性暴力事件についても情報を共有していたという。だが6月の慰霊の日に来県した際、県へは一言もない。

 事件を受け、政府は性犯罪についての県への情報伝達を見直すというが、そもそも米軍が日本側への通報をなおざりにすれば、その実効性にも疑問符が付く。

■    ■

 県内で米兵による暴行事件が相次いでいることを受け、県議会は日米両政府に対する抗議決議と意見書を全会一致で可決した。

 米軍には被害者への謝罪と完全な補償や実効性の高い再発防止策を県民に示すことなど5項目を要求。政府には被害者の二次被害の防止や日米地位協定の抜本改定など4項目について求めている。

 米軍と日本政府それぞれに異なる要求という異例の対応の背景には、繰り返される犯罪への県民の強い怒りがある。

 政府は今回の対応を猛省し、そうした声こそを米国へ伝えるべきだ。

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