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[社説]自衛隊大量処分 防衛語る前に足元正せ

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月14日 4時0分

 防衛省は、事務方トップの防衛次官や自衛官トップの陸海空3自衛隊幕僚長など、最高幹部を含む218人(延べ220人)を大量処分した。

 「相次ぐ不祥事」というありきたりの表現では言い尽くせない極めて深刻な事態だ。

 処分対象者の数の多さは言うまでもないが、それ以上に驚きを禁じ得ないのは、その中身である。

 処分の対象になったのは特定秘密の不適切運用、内部部局(内局)幹部のパワハラ、海上自衛隊の潜水手当不正受給、自衛隊施設での不正飲食の計4項目。

 中でも特定秘密を巡っては58件の違法な運用が確認された。

 特定秘密保護法によると、特定秘密を扱うことができるのは「適性評価」を受けた者に限られる。個人の生活状態などを審査し、特定秘密を扱うのに問題がないかを評価する仕組みである。

 ところが、評価を受けていない隊員が特定秘密を扱っていたり、特定秘密に容易にアクセスできる部署に無資格の隊員を配置するなどの事例が相次いで明らかになった。

 海自では、ダイバーが約5年半で合わせて約4300万円の潜水手当を水増しして不正に受給していた。

 今回の処分とは別に海自では、潜水艦修理契約に絡み、川崎重工業が捻出した裏金を原資に、乗員が金品を受け取っていた疑惑も浮上している。

 内部部局の官僚によるパワハラも明らかになった。何をか言わんやである。

■    ■

 なぜ防衛省・自衛隊でこれほど不祥事が続くのか。

 規範意識の欠如、組織の緩み、ガバナンス(統治)の不全など、さまざまな組織体質が指摘されている。だとすれば、そのような組織体質は、なぜ生まれたのだろうか。

 安倍政権以来、急速に進んだのは、自衛隊を「戦える組織」につくり直し、米軍との一体化を押し進める、という猪突(ちょとつ)猛進の防衛力強化政策だ。

 その象徴が集団的自衛権の行使を盛り込んだ安保関連法と特定秘密保護法だった。

 特定秘密保護法案の議論で話題になった「ツワネ原則」は、国家安全保障と情報への権利のバランスをどのように取るべきか、その国際原則を示したものだ。

 その議論こそ丁寧に進めるべきであったが、政府は、野党や国民から噴出した疑問や懸念に向き合うのではなく、国会の多数の力を背景に法制定を強行した。

■    ■

 「戦う自衛隊」への脱皮が急だったため、新しい法制度に合わせた組織運営の見直しが追い付かず、現場の意識改革も進まなかった。

 特定秘密を巡っては、制度設計そのものが自衛隊の現場を適切に反映したものではなかった、との指摘もある。

 自衛隊は秘密度の高い軍事を扱う組織である。何よりも求められるのは、自衛隊に対するチェック機能の強化である。

 国会は行政府の追認機関としての性格を強め、監視の役割を十分に果たしていない。

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