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[社説]トランプ氏暗殺未遂 民主主義否定する凶行

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月15日 4時0分

 11月の大統領選に向けた運動中の銃撃事件だ。民主主義を否定する凶行であり、断じて許されない。

 米ペンシルベニア州バトラーで13日午後6時(日本時間14日午前7時)過ぎ、選挙集会で演説中のトランプ前大統領が銃撃された。

 会場に銃声が鳴り響いたのは演説が始まって10分ほどたったころ。

 発砲は複数回あり、トランプ氏は右耳を押さえて演台の裏にしゃがみ込んだ。

 シークレットサービスに囲まれたトランプ氏の右頬には血が伝っていた。

 命に別条はないという。だが、弾があと数センチずれていたらと思うと戦慄(せんりつ)を覚える。政治的暴力であり、絶対にあってはならない。

 大勢の聴衆が参加していた会場は、突然の銃声に悲鳴と怒号が交差。集会参加者1人が死亡、2人が重傷を負った。

 現地報道によると、発砲したのは同州に住む20歳の男で、現場で射殺された。会場外にある建物の屋根の上にいたとされ、捜査当局は会場周辺でライフルを押収したという。

 単独犯とみられている。動機や背景を含めた事実関係を早急に解明してほしい。

 ペンシルベニア州は大統領選の激戦州の一つだ。集会は候補予定者の声をじかに聞ける場だった。

 安全性の確保は民主主義が機能するためになくてはならない条件だ。

 参加者に犠牲が出たことを重く受け止め、警備の検証も急ぐべきだ。

■    ■

 米国では政治家を標的とした銃撃事件が繰り返されてきた。

 過去にはリンカーンやケネディ両大統領ら計4人が暗殺されたほか、未遂事件も多い。警護の手厚い要人が死亡する事件が相次いでいることは、銃社会の根深さを浮き彫りにしている。

 近年の米国社会の対立や分断は、そうした危険性に拍車をかける。トランプ氏が大統領選で敗北した2020年以降は暴力容認の危険な潮流が強まった。

 トランプ支持者による議会襲撃事件は記憶に新しい。翌年には、トランプ氏の政敵とされる民主党のペロシ下院議長(当時)の自宅が襲撃される事件も発生した。

 今回の事件を受け、バイデン大統領は銃撃を強く批判するコメントを発表した。

 大統領選まで4カ月足らずのタイミングで起こった今回の事件が選挙に影響するのは必至だ。

 共和党、民主党のどちらも臆測に基づく発信や、事件の政治的利用は厳に慎むべきだ。

■    ■

 政治家に向けられた銃弾は、どんな形にせよ民主政治をゆがめる。二度と発射させてはならない。

 安倍晋三元首相が演説中に銃撃され死亡した事件から2年がたった。日本にとっても今回の事件は人ごとではない。

 暴力で一方的に発言を封じようとする行為は社会を混乱に陥れ、対立をあおるだけだ。非暴力を徹底するための教訓としたい。

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