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[社説]旧統一教会「念書」無効 被害回復につなげたい

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月17日 4時0分

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の勧誘で、献金被害に遭った元信者や家族の救済を前進させる判決である。

 1億円以上を献金した元信者の女性(故人)の長女が、教団側に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁は教団側が勝訴した二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。

 女性が「返金や賠償を一切求めない」と約束した念書の有効性が争点となった。一、二審はいずれも有効と認め、女性側の訴えを退けたが、最高裁は「無効」とした。

 教団による献金問題での最高裁判断は初めてである。

 高額を献金しながら同様の念書を理由に泣き寝入りしているケースは多い。被害回復の声を上げるきっかけになることを期待したい。

 最高裁は念書に関し「裁判を受ける権利」を制約すると指摘した。合意の経緯、寄付者の年齢や健康状態、不利益の程度など、有効性の判断基準を提示している。

 女性の場合、高齢で半年後に認知症と診断されたこと、教団の心理的な影響下にあったことなどから、念書を「公序良俗に反し、無効」と結論付けた。

 教団の信者が念書の文案を作成し、公証人役場に同行、女性の意思を確認する様子をビデオで撮影していたことも分かっている。

 教団側の「女性の自由意思だった」とする主張を、最高裁が退けたのは当然だ。

 念書や関連書面の有効性が軒並み否定されたわけではないが、最高裁が具体的な基準を示した意義は大きい。

■    ■

 さらに、最高裁は献金勧誘が違法かどうかについて「社会通念上相当な範囲を逸脱した場合は違法」と明示した。

 例として、適切な判断ができない状態に陥らせることや、献金によって本人や家族の生活維持に支障を生じさせることなどを挙げている。

 いずれも昨年施行の「不当寄付勧誘防止法」の規定に沿った枠組みだ。

 女性のケースでは、加齢による判断能力の低下や、土地を売ってまで献金する状況を慎重に判断する必要があると指摘。違法性を否定した高裁に審理を尽くすよう求めており、女性の遺族が最終的に勝訴する可能性が高い。

 念書でも献金勧誘でも個別の事情があるとはいえ、立証する点が明確になった。いわゆる洗脳状態での献金でも救済の道が見えたといえる。

 今後の献金を巡る訴訟に影響を与えるのは間違いない。

■    ■

 政府は旧統一教会の不法行為による被害は、少なくとも200億円を超すと認定。組織性、悪質性、継続性の要件を満たすとして宗教法人法に基づく解散命令を請求し、東京地裁で審理が続いている。

 旧統一教会による献金問題は30年以上前に発覚していた。放置した政治の責任は重い。高額献金で、自殺や家庭崩壊に追い込まれるなどの実態が明らかになっている。

 政府の責任でも被害を掘り起こし、全容解明に本腰を入れなければならない。

 その上で、救済に向けた法律の制定など取り組みを加速する必要がある。

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