「The Hologram City」10周年 バンドのライブもDJイベントもありのミュージックバー 那覇市久米

The Hologram Cityオーナーのホセヤ・バラーザさん＝7月8日、那覇市久米の同店

　那覇市久米のミュージックバー「The Hologram City（ザ・ホログラム・シティ）」が7月14日でオープン10周年を迎えた。バンドのライブもDJイベントもできる、40～50人規模の“地下の非日常世界”は、沖縄のバンド界とDJ界のつなぎ目のような存在感を示してきた。「ライブハウスにしては狭いけど、バーにしては広い。ミュージシャンがどんどんここで挑戦して、次のステップに進んでいってほしい」と語る、オーナーのホセヤ・バラーザさん。7月は10周年パーティー月として、パンクギグからテクノパーティーまで毎週さまざまなイベントを企画している。（ライター・長濱良起）

バンド＋DJ＋バーテンダー

　「ちょっとリラックスしながらお話ししたいんで、良いですか？」とたばこに火をつけたホセヤさん。銘柄はうるま、ロックを感じる。ひげと長髪のワイルドな風貌ながら、物腰の柔らかい「気の良い兄貴」的な語り口が印象的だ。

　バンド「THCBOYS」のボーカリストであり「DJホセヤ･バラーザ」としての顔もある。10代の頃からバーテンダーとしてシェイカーを振り、カクテルコンペでは県代表に選ばれたことも。「当時はまだバーも少なかったですし、昔の話なので」と謙遜するが、ボトルの陳列の美しさがその歴史を物語る。バンド＋DJ＋バーテンダー。まさに「The Hologram City」の在り方そのものを体現しているようだ。

　一般的に、ステージは客席よりも段が上がって高さがあるが、ここでは逆だ。ステージ部分はバーや客席よりも低くくぼんだ形状で、客はステージを上から見下ろすような格好となる。「出演する人の中には、この感じが好きで癖になる人もいます」とホセヤさんは笑う。

 

あるハウスDJとの出会い

　「小5の時からミュージシャンになるって決めていた」というホセヤさん。しかし周りに音楽家がおらず、ミュージシャンになる方法が分からなかった。焦らずに思いを抱き続けていると、初めて出会った音楽家が、ハウスミュージックのDJだった。彼の手引きでレコードに針を落としてみた時、分かったことがあった。「あ、自分はこのままDJになるな」。27歳。DJホセヤ･バラーザの誕生だった。「本当はバンドのボーカルをやるつもりだったので、自分の中では最初『ボーカリストがDJもしている』という設定にしていました」と笑う。

　バーテンダーとして働く場を、これまでのオーセンティックバーからミュージックバー主体に切り替えた。そこでお酒を作り音楽に触れている時間を通し、「独立して自分の店を持ちたい」と思うのは自然なことだった。

「勘で配線していた」10年前

　その矢先に出合った今の物件。2014年、40歳の時だった。開店準備が進んでいって、オープン数日前になって気付いたことがあった。音響については全くの素人だったのだ。「勘で配線していました」。それでも何とかオープンにこぎ着けた。バンドの友人にもDJの友人にも来てほしいという思いから、楽しんでもらう音楽はあくまでノンジャンルにこだわった。アップライトピアノの横にターンテーブルが配置されていることこそがその証左だ。

　「気付いたらいろんな人に助けてもらった10年間でした」と、右上に目線をやりながら振り返る。「今は音響、うまくなっているんじゃないかな」。吐いたたばこの煙がゆっくりと上がっていった。

「文化がなくなると人は生きていけない」

 

　DJを始めたのが27歳、バンドを始めたのが37歳だった。比較的遅いスタートに思えるが「本気で売れるつもりでやっています。小5から一日も諦めたことはないですよ。ただ『待たされている』ぐらいに思っています」。そんな、自信と希望を持ち続ける姿勢が、数々の人生のピンチを救ってきた。「絶対に大丈夫な気しかしない。お店は綱渡り状態の時もありますけど」と語る。そうやってコロナ禍を乗り越え、10年の節目を祝えた。

　「ダンスとか音楽ってあくまで娯楽なので、一般的には生活の中の優先順位って低くなってしまうんですけど、ところがどっこい、音楽などの文化って、なくなってしまえば絶対に人は生きていけないんですよ。アンダーグラウンドの（多様な）文化がない社会は、失敗した社会だと思います」

　アンダーグラウンドの文字通り、地下へと続く階段の先で、土着のカルチャーが生まれていく。

関連イベント7本企画

　The Hologram Cityでは10周年関連イベントを7本企画している。日本トップクラスのハウスDJが名を連ねるイベントや、個性派ガールズDJイベント、至近のミュージックバー「ABD RECORDS BAR」とのライブサーキットなど盛りだくさん。詳細・最新情報は公式Instagram（https://www.instagram.com/thehologramcity/）まで。