1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

[社説]北大東に空自レーダー 沖縄の負担増すばかり

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月18日 4時0分

 航空自衛隊の移動式警戒管制レーダーと関連施設を北大東村に配備する計画を巡って、防衛省は同村で住民説明会を開いた。

 ミサイル部隊を配備するようなことはないのか。

 与那国島の例があるだけに住民の懸念は至極もっともである。

 参加者からの質問に防衛省の担当者は「今の段階では」と2度前置きした上で、こう語った。

 「(移動式警戒管制レーダー以外の)他の何かを置くことはない」

 昨年7月に開かれた住民説明会でも、防衛省側から「現時点では」との言葉が飛び出した。

 仮に将来、ミサイル部隊を配備したとしても、あの時点では具体的な計画はなかったといくらでも言い張れる。

 「今の段階では」「現時点では」と断っており、うそをついたことにはならない、というわけだ。

 同村の鬼塚三典村長は、住民説明会の後、記者団の取材に答え、レーダー配備を受け入れる考えを表明した。

 自衛隊は急患輸送で島に貢献しており、過疎対策にもなると誘致賛成派の住民は指摘する。

 説明会に参加した60代の男性は「入り口は小さく、出口は大きくが、国のいつものやり方」と語っていた。その懸念は拭えない。

 東アジアの安全保障環境が変わったのは確かだとしても、島々への相次ぐ自衛隊配備はあまりに性急で、沖縄に一方的に負担を強いるものである。

■    ■

 「台湾有事」を想定し、急激な勢いで進む自衛隊の増強計画と、国民保護法に基づく離島からの住民避難計画は、80年前の沖縄を思い起こさせるものがある。

 1944年の夏から秋にかけ、「軍事的な空白地帯」と言われていた沖縄に、次々に日本軍部隊が配備され、兵力が増強された。

 そして今。「防衛の空白地帯」と言われた南西諸島で、南西シフトと称する自衛隊増強計画が進んでいる。

 80年前の今ごろ、沖縄は県外疎開で島中が揺れていた。

 そして今。先島諸島の5市町村から、観光客も含め12万人を九州・山口の8県に避難させる計画が進んでいる。

 当時の状況が今の動きとよく似ていると沖縄戦体験者は危惧する。沖縄の急激な軍事要塞(ようさい)化に対する住民の不安は、沖縄戦の歴史体験に深く根差している。

■    ■

 沖縄戦の際、沖縄は「皇土」を守るための防波堤と位置付けられた。

 戦後、冷戦の最前線に置かれた沖縄は「太平洋の駒」と見なされた。

 72年5月の復帰記念式典で屋良朝苗知事は「沖縄がその歴史上、常に手段として利用されてきたこと」を痛切に指摘した。

 台湾有事と自衛隊増強と国民保護は、法的には非常に複雑な関係にある。複雑さを覆い隠し、当たり前のように3者を結び付け危機をあおり、沖縄の基地負担を当然視する。それが最大の問題だ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください