1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

[社説]国、米兵引き渡し難色 「米への配慮」が過ぎる

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月19日 4時0分

 これで、本当に主権国家と言えるのだろうか。

 米軍人・軍属による凶悪犯罪で、起訴前の身柄引き渡しを求める県警に対し、警察庁や外務省が難色を示していたことが分かった。複数の元県警幹部が本紙に証言した。

 昨年12月に発生した米兵による少女誘拐暴行事件は、基地外にある公園で声をかけて車に乗せ、基地外の自宅に連れ去り、性的暴行を加えたというものだ。日本人女性が民間地域で被害に遭ったというのに県警は米兵の身柄引き渡しを求めなかった。被告の米兵は起訴後に保釈された。米軍の管理下に置かれたまま身柄は勾留されていない。

 身柄引き渡しが問題となったのは、1995年の米兵暴行事件だ。日米地位協定では公務外であっても米兵の容疑者は、原則として起訴されるまで米軍が管理下に置くと定める。当時、県警は3人の容疑者を逮捕するため引き渡しを要求したが、米側は地位協定を盾に応じなかった。

 県民総決起大会では8万5千人が怒りの声を上げた。

 その後、日米両政府は「殺人と強姦(ごうかん)」に限り、起訴前の身柄引き渡しに「好意的配慮を払う」ことで合意。2004年日米合同委員会で「日本政府が重大な関心を持ついかなる犯罪も排除されない」と口頭で確認された。

 当初から実効性に疑問が持たれていたが、県内では03年の女性暴行致傷事件を最後に、身柄引き渡しが実現したケースはない。

 主権国家として象徴的な捜査権や裁判権の行使に関わる重要な問題である。

■    ■

 身柄が米軍管理下にある場合、拘禁の実態が不透明で、証拠が隠滅されたり基地外禁足処分となった米兵が民間機で米本国へ逃亡したケースもある。捜査が難航し起訴まで時間がかかることもある。

 県警が、米軍関係者の身柄の引き渡しを求めなくなった背景も見過ごせない。

 複数の元幹部によると、米兵による事件はかつて、県警の判断で容疑者の逮捕状を取り、米軍に身柄の引き渡しを直接要求していた。しかし、1995年の米兵暴行事件以降、徐々に警察庁の「許可制」になったという。ある元幹部は、2000年代に入ってからは「東京サイド(警察庁など)に逐一捜査状況の報告を求められ、令状の許可が出なくなった」と証言している。

 外務省と警察庁が連携し、外交問題に発展しないように神経をとがらせてきた様子がうかがえる。凶悪犯罪であっても、ここ10年ほど容疑者の引き渡しを求めていない、との現役の関係者の声もあり、県警内部で「自己規制」が働いている状況は、深刻である。

■    ■

 県は、日米地位協定の見直し要請で、日本側から身柄引き渡し要求があった場合「これに応ずる旨を明記すること」を幾度となく求めてきた。

 米軍人とはいえ、基地の外で起きた犯罪については、国内法の手続きに基づいて、捜査するのが筋である。

 政府は米側に忖度(そんたく)するのではなく、国内法適用の原則を徹底し日米地位協定を改定し、国民の人権を守る当然の責任を果たすべきだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください