「台風が来る前にDVDやCD借りた」と懐かしむ客 日本最南端のTSUTAYAが閉店 名残惜しむ住民ら 沖縄・石垣市

TSUTAYA石垣店の閉店を惜しみ、記念撮影する客と店員ら＝15日午後11時40分、石垣市真栄里

　【石垣】日本最南端にあった石垣市真栄里のレンタルDVDショップ「TSUTAYA（ツタヤ）石垣店」が15日、閉店した。営業最終日にも多くの住民が駆けつけ、名残惜しんだ。閉店後には集まった客と店員が店の前で記念撮影し、感謝の思いを伝え合った。（八重山支局・矢野悠希）

　1996年12月にオープンした同店は、レンタルビデオやDVD、CDを求めて多くの客でにぎわった。ある女性客は「上映している映画館がなくて、島では見られなかった劇場版アニメ『名探偵コナン』の最新作を毎年借りていた。他の客との争奪戦だった」と振り返る。

　近年はユーチューブや音楽・映像配信サービスなどの「サブスク」が台頭し、レンタル業界は全国的に下火になった。県内のツタヤ店舗が次々と閉店する中、同店は漫画レンタルや書籍・雑貨コーナーの充実、カードゲーム販売や対戦ブース設置などで創意工夫を続けてきた。が、時代の波には逆らえなかった。

　営業最終日の15日、店は最終セールを実施し、中古DVDが税込み20円、漫画が5円など破格で販売。客が求めると、店の棚やディスプレー用の備品なども数十円で譲った。スタッフは「石垣店の思い出をよろしくお願いします」と手書きの値札をテープで貼った。

　夫と来店した神山春菜さん（32）は保育園児だったころに開店し、風船をもらったことを覚えている。「台風が来る前にDVDを借りたり、オレンジレンジのCDを借りたりした」と懐かしんだ。

　午後11時の閉店後、暗くなった店舗前で店員が「約28年間営業できたのも、皆さんが来てくれたおかげです」と涙を流しながら感謝の気持ちを伝えた。店の前に残っていた約20人の客が「ありがとうツタヤ！」と声を上げると、温かい拍手が続いた。