[社説]バイデン氏撤退 本来の論戦に戻す時だ
沖縄タイムス+プラス / 2024年7月23日 4時0分
11月の米大統領選で再選を目指していた民主党のバイデン大統領が、撤退を表明した。
高齢不安が露呈した6月の討論会以降、党内外で撤退を求める声が高まっていた。それでも継続に意欲を見せていたバイデン氏だったが、ついに追い込まれた形だ。
二大政党の候補選びが事実上終わった段階の撤退は極めて異例だ。
バイデン氏は撤退について「米国にとって最善だと考えた」との声明を出し、後継にハリス副大統領を名指しした。
今後、民主党はハリス氏を軸に新たな候補者選びを本格化させるが、それで党内がまとまるかどうかは現時点で見通せない。このまま混乱が続くようであれば、本選への影響は避けられないだろう。
再選を狙った現職大統領が撤退に追い込まれるのは1968年、民主党のジョンソン大統領以来56年ぶりだ。後継のヒューバート副大統領は、共和党のニクソン氏に破れている。
今回、世論調査でハリス氏支持はわずかにバイデン氏を上回った。一方、トランプ氏には僅差で及ばない。
バイデン氏でも、トランプ氏にも嫌気が差している有権者「ダブルヘイター」は誰を選択するのか。ハリス氏がその受け皿となるかが鍵となるだろう。
問われるのは党として結束できるかどうかだ。
論戦を通して国民の融和を呼びかけることができる候補者の擁立が求められる。
■ ■
今回は、選挙演説中にトランプ氏が銃撃されるという衝撃的な事件も起きた。返り咲きを狙うトランプ氏は、事件後、求心力を強めている。
共和党の正式指名を受け「米国の半分ではなく米国全体のため」と国民の結束を訴えた。
しかし、その後の選挙集会では再びバイデン氏の人格を否定する発言を連発しており、国民的融和を実現できる指導者像とはかけ離れているというほかない。
影響力が強い米外交には安定的な対応が求められる。
ロシアによるウクライナ侵攻では大国の一方的な軍事侵攻を批判し、ウクライナ支援の柱となってきた。
一方、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を巡っては、難しいかじ取りに直面している。
対中政策では、「台湾有事」をあおり緊張を高めるようなことは慎んでもらいたい。平和を維持し国際協調を全面に出した外交政策を進めるべきだ。
■ ■
この間、両党のネガティブキャンペーンは、もっぱら感情に訴える内容となっており、政策論争とはほど遠い。こうした選挙活動を通してせり上がってきたのは、アメリカ社会の深刻な「分断と対立」だ。
米国内でも高いインフレ率への対処や不法移民対策、人工妊娠中絶を巡る是非など課題が山積している。互いに敵意むき出しの中傷合戦をしている場合ではない。
両党は改めて諸問題に正面から向き合う論戦を再開させるべきだ。
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