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[社説]パリ五輪開幕 試される「平和の祭典」

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月26日 4時0分

 ウクライナ侵攻とガザ危機という二つの戦争が続く中、「平和の祭典」の五輪がパリで開幕する。

 8月11日まで200を超える国・地域から約1万人の選手が参加。開会式は26日(日本時間27日未明)、大会史上初めてスタジアムの外で行われる。

 ロシアによる侵攻が続くウクライナから140人、イスラエルの攻撃がやまないパレスチナからも8人が出場する。困難な状況にもかかわらず、希望を持ち参加した選手たちをたたえたい。

 パリ大会のスローガンは「Games Wide Open」。無料で観覧できる開会式をはじめ観客と選手の交流機会を多く設けているのが特徴だ。開かれた大会で、平和を求める選手の言葉が発信される意義は大きい。

 一方、開放的な会場はテロなど政治的な攻撃の危険もつきまとう。ましてや戦時下の大会だ。警備には万全を期してほしい。

 古代オリンピックでは、選手の安全を確保するため停戦協定が結ばれ、これが現在の「五輪休戦」となった。1994年のリレハンメル冬季大会以降、開催のたびに国連総会で決議が採択されてきた。

 2022年の北京冬季大会での決議を破りウクライナへ侵攻したのがロシアだ。

 国際オリンピック委員会(IOC)は今回、ロシアと、これに同調するベラルーシの国旗や国歌の使用を禁じ、団体競技の参加を認めなかった。

 一方、イスラエルからは選手88人が参加する。二重基準ではないか。IOCの対応には疑念を抱かざるを得ない。

■    ■

 イスラエルが五輪休戦に違反しているとして、参加を認めるべきではないとするパレスチナ側の要請に、IOCは取り合おうともしなかった。

 北京大会でロシアの排除に積極的だった欧米も、イスラエルに関しては動いていない。国同士の関係が参加の可否に影響を及ぼしている。

 五輪憲章は開催目的について「平和な社会の推進を目指すため」とし、「大会は個人や団体の選手間の競争であり、国家間の競争ではない」と定める。

 しかし、冷戦下でメダルの数が国力の指標とされたことは記憶に新しい。近年露骨な国威発揚は薄れたものの、国単位でメダル獲得数を競うやり方は選手に過剰なストレスを与え、ドーピング問題にもつながっている。

 商業化が顕著になって以降は誘致を巡る汚職も相次ぐ。東京五輪では談合事件も発覚した。開催の意義は根本から揺らいでいる。

■    ■

 そうした中で今大会は「持続可能性」をテーマに掲げた。競技施設の95%が既存または仮設の建物で賄われたほか、「脱プラスチック」宣言で環境に配慮した。

 大会史上初めて出場枠の男女同数を実現するなどジェンダー平等も打ち出している。

 五輪は人種や文化、国や地域を超えて選手が一堂に会する「平和の祭典」だ。

 戦火が続く中での開催であればなおさら、原点を見つめ直したい。

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