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80代の母親の年金に頼れず困窮 ひきこもり重度のうつ病を患った50代の無職男、援助した姉に敵意 義兄を殺害し懲役20年 社会の支援届かず

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月28日 7時4分

(資料写真)那覇地裁

[ニュース近景遠景]

 義兄に火を付けて殺害し、実姉を包丁で刺して重傷を負わせたとして、殺人と殺人未遂の罪に問われた沖縄県与那原町の無職の男(51)に懲役20年の判決が下された。約3年前に無職となった被告は同居する80代の母親の年金に頼り、ある時期から引きこもって重度のうつ病を患った。80代の親がひきこもりの50代の子の生活を支える「8050」問題にも通じる事件-。識者は家族だけで対応する限界と、第三者の介入で孤立を防ぐ支援の必要性を指摘する。(社会部・城間陽介)

 那覇地裁での裁判員裁判で、被告は黙秘を貫き、犯行の動機や謝罪の言葉を述べることはなかった。ただ、捜査段階で検察官に「姉は私を憎むだろうが、家から解放された安堵(あんど)感もある。いかなる刑罰も受ける」と、胸中の一端を語っていたことが明かされた。

 証人尋問に立った精神鑑定人は、被告の生来の真面目な性格がうつ発症に関係したと指摘。同居する母親の食事の世話や通院の送迎などをしていたが、2022年末ごろから両者にストレスがたまって関係が悪化した。互いに口をきかず、食事も別々に取るようになった。

 年金に頼れなくなった被告はカップ麺とおにぎりの食事が続き、困窮を背景にうつを発症。事件の2カ月前には母親に暴言を吐き、心配した姉が母親を自宅に避難させると「自分を孤立させようとしている」と姉に敵意を向けた。

 さらに、姉のタブレット端末やパソコンを無断で借用したことを巡り、事情を知らない姉が盗難事件として警察を呼んだことがあった。被告は「ただ借りていただけなのに自分を犯人扱いした」と、姉に強固な殺意を持ったという。

 被告が被害妄想を募らせていく一方で、姉夫婦は引きこもる被告を心配し、役場や県の専門機関に何度も相談。食料や小遣いを届け、SNSで気遣うメッセージを送っていた。が、被告はそれを全て無視。事件の1~2カ月前には「訂正不能な被害妄想」を抱え、家族だけでの対応には限界があったとみられる。

 法廷で精神鑑定人は「妄想には並々ならぬ思い込みがあり、家族が理屈で説得しても理解しない」と説明。救済策について「うつ病からくる被害妄想なので、投薬などでの治療が必要だった」と述べた。

 DVD・書籍販売店に17年間勤務し、店長も務めるなどごく普通に社会生活を送っていた被告が、なぜ引きこもるようになったのか。被告は何に追い詰められて「家から解放された安堵感」と語ったのか。そして、被告にとって家とは何だったのか。

 地域や行政の在り方も含め、問われている気がしてならない。

■第三者の介入が必要 ひきこもり問題に詳しいジャーナリストの池上正樹氏の話

 基本的に引きこもる人は社会から身を守るため自己防衛反応として自室に避難している。他人に危害を加えるというのは一般に起きにくい。狭い室内は本人にとって唯一の生存領域で、事前連絡なく近づく者を警戒する。「避難」を否定されると、本人の生存領域を脅かすものとして本人を追いつめ、怒りの矛先が向かう場合がある。

 本人を理解しようとする姿勢なく一方的に介入しようとすると、関係がこじれるケースは少なくない。本人のためとは言わず、母親の介護などを入り口に第三者の支援を求めるのが有効だろう。母親のためであれば本人も相談に乗る形で外部と関わる契機になることは多い。

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