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[社説]ブラジル 移民迫害を謝罪 「加害の歴史」直視こそ

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月30日 4時0分

 「ブラジル政府は先祖迫害の許しを求めます」

 政府諮問機関の代表が日本語で謝罪の言葉を述べ頭を下げると、会場では多くの人々がブラジルと日本の国旗をはためかせた-。

 ブラジル政府が25日、第2次大戦中に沖縄出身者を含む日本人移民に行った迫害行為について、初めて公式に謝罪した。来年の戦後80年を前に、迫害された移民たちの名誉回復が果たされた意味をかみしめたい。

 1943年、連合国側についたブラジルは、サンパウロ州サントス沖で商船が攻撃されたのは沿岸一帯に住む枢軸国移民のスパイ通報によるものとして、日系移民らを「敵性外国人」とみなし約6500人に強制退去を命じた。

 いわゆる「サントス事件」である。対象となった6割以上が県系移民だった。

 妊婦も子どもも着の身着のまま収容所や地方に送られた。仕事場から駅へ追い立てられ、家族と離れ離れになった人も少なくない。

 終戦後は戻ることを許されたものの、築き上げてきた農場や家はブラジル人に奪われていた。ゼロからの生活を余儀なくされ、生涯サントスに戻れなかった人も多い。

 動乱は戦後も続いた。日本が戦争に勝ったとのデマを信じた「勝ち組」と敗戦を受け入れた「負け組」に分かれた襲撃事件が頻発。勝ち組の関係者ら172人が刑務所に収監され拷問も受けたが、うち140人近くは無関係だったとされる。

 移民迫害はブラジルで起きた最大規模の人権侵害だ。

■    ■

 大戦中は米国やカナダでも日系移民らが強制収容された。両国は80年代に謝罪している。一方、戦後、軍事政権が続いたブラジルではこうした迫害の歴史に光が当たらなかった。

 2015年ごろから県系移民らが中心となって史実を掘り起こす活動を展開。強制退去させられた585世帯の名簿を発見したことなどを契機に証言を集め、政府へ謝罪を請求してきた。

 請求は右派政権下で22年にいったん却下に。しかし、今年1月の左派政権誕生により、軍事政権下で起きた政治的迫害を対象にする人権・市民権省恩赦委員会で再審議され、全会一致で謝罪が決まった。

 審査ではブラジル沖縄県人会の島袋栄喜元会長(73)が先人たちの名誉回復を訴えた。

 過去を直視し過ちを謝罪することは「二度と繰り返さない」という未来への誓いになる。ブラジルで教訓の継承が進むことを期待したい。

■    ■

 翻って日本政府はどうか。

 1993年から歴代の首相が終戦の日の式辞でアジア諸国への「深い反省」を表明してきた。

 しかし、2013年に安倍晋三氏は言及しなかった。以降、菅義偉氏や岸田文雄首相も加害責任に触れていない。

 一方、バイデン米大統領は日系移民の強制収容の根拠となった大統領令署名から82年となった今年2月にも改めて謝罪を表明した。

 日本政府も自らの加害責任に向き合い続けるべきだ。 

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