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[社説]米兵事件 閉会中審査 外相は説明責任果たせ

沖縄タイムス+プラス / 2024年7月31日 4時0分

 1997年に日米で合意した通報手続きが、なぜ守られなかったのか。疑念が晴れたとは言い難い。

 米兵による性的暴行事件の問題が、国会の閉会中審査で取り上げられた。

 97年合意では米軍関係の事件、事故の通報手続きで「米軍→外務省→防衛省→県や市町村」のルートを定める。昨年12月に発生した少女の誘拐暴行事件で、防衛省への伝達がなかったことについて、外務省は「捜査機関から非公表事案として情報提供を受けたことを踏まえ、事務方が判断した」とした。

 非公表とするよう促されたような答弁を繰り返したが、警察庁は「関係省庁などと情報共有しないよう求めたわけではない」と答えている。

 国と国との合意事項が、外務省の事務方の判断でストップしたとすれば、由々しき事態だ。

 通報手続きについては、上川陽子外相が詳細を把握していなかったことも明らかになった。

 「事務方の報告は事件の概要のみだった」とし、問題となった流れでフレームワークをしっかり把握したという。大臣として適切に指示できなかった可能性がある。資質を問われてもしかたがない。

 上川外相は事件発生の時期についても度重なる野党の質問に答えようとしなかった。

 発生から書類送検までの間に情報提供を受けたと従来と同様の説明を繰り返すばかりだった。

 ゼロ回答に等しく、説明責任を果たしたとは到底言えない。

■    ■

 通報手続きが遮断されたことで、被害者へのケアの提供や補償が滞っているとの指摘もある。これに対し、補償を担当する防衛省は「非公表で捜査が継続されている中、被害者への接触は慎重になされる」と答えた。だが、防衛省が知ったのは6月で、それまでの半年間、補償について被害者に伝えることができていたかは疑問だ。

 衆参の閉会中審査では、午前と午後にわたり、再三、外務省に通報を止めた理由を問いただした。しかし上川外相も外務省の担当者も、被害者のプライバシー配慮を繰り返すだけだった。

 通報手続きを止めたことによる被害者や地域への影響を重く受け止めるべきだ。

 事件の報道後、県や市町村が日米関係機関に抗議し、各議会は抗議決議や意見書を可決した。外務省が情報を共有していれば、もっと早く再発防止の動きにつながったと考えるのは当然である。

■    ■

 米軍基地所在の15都道府県で構成する「渉外知事会」は、関係自治体への通報を徹底するよう、求めている。

 地元で起きていることを知るのは、住民の命と暮らしを守る上でも、地方自治にとっても重要なことである。

 日本政府は、米軍が発表した県や住民との「フォーラム」創設などの対策について、具体的な内容が示されないまま、「閣僚レベルでフォローする」と追認した。

 政府と地元自治体の認識には大きなずれがある。国会でさらに追及する必要がある。

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