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[社説]ハマス指導者暗殺 自制促し戦火拡大防げ

沖縄タイムス+プラス / 2024年8月5日 4時0分

 パレスチナ自治区ガザの戦闘が中東全域に飛び火しかねない状況だ。全ての関係国は戦火の拡大を防ぐため最大限の努力を続けなければならない。

 イスラム組織ハマスのハニヤ最高指導者が、訪問先のイランで殺害された。ペゼシュキアン新大統領の就任宣誓式に出席するためテヘランを訪れていた。

 先月31日午前2時ごろ、テヘラン北部の住居で、上空から飛来した爆発物に直撃されたとされる。ハマスは「イスラエルの攻撃」と発表した。

 これに対しイスラエルは沈黙したまま。一方、イランとハマスは報復を宣言した。

 長く敵対関係にあるイランとイスラエルだが、これまで直接戦火を交えることはなかった。しかし今年4月、イスラエルが在シリアのイラン大使館を空爆。これを受けイランは、弾道ミサイルや無人機でイスラエルを攻撃したのである。

 今回イランにとっては支援するハマスの指導者が領土内で殺害されメンツをつぶされた格好だ。前日にはイスラエル軍が、親イラン民兵組織ヒズボラの最高幹部の司令官を殺害したとも発表していた。

 相次ぐ攻撃はイランの敵対心をあおっている。イラン政府の最高安全保障委員会が親イラン組織と会合を開き、報復方法を検討しているとの報道もある。

 ハマスやヒズボラ、イエメンの武装組織フーシ派などの親イラン組織が一斉に報復に動けば、各地の戦闘激化は避けられない。

■    ■

 ハニヤ氏はガザ停戦交渉でハマス側の代表者だった。停戦協議の再開を目前にした暗殺劇で合意は遠のいたと言わざるを得ない。

 イスラエル軍は今月に入ってもガザで攻撃を続けている。3日にはハマスの「司令センター」になっているとしてガザ市の学校を空爆。少なくとも子どもら17人が死亡した。

 昨年10月の戦闘開始以降、ガザ側の死者は4万人に迫る。インフラは破壊され、感染症がまん延するなど人道危機は深刻さを増している。

 ハマスが人質解放に応じるかどうかも見通せない。ガザで約120人を拘束しているとされるが、うち半数以上はすでに死亡したとの情報もあり、家族らは焦りを募らせている。

 軍事的緊張が高まるほど双方の犠牲は増えている。事態を収束するには報復の連鎖を止めるしかない。

■    ■

 暗殺を巡っては、イスラエル国内でも批判の声が上がる。3日には各地で停戦交渉を妥結させ人質解放を進めるよう政府に要求するデモが開かれた。

 こうした中、米政府はイスラエル支援のため中東地域へ弾道ミサイル防衛能力を持つ巡洋艦と駆逐艦の派遣を決定した。抑止力を高めるというが、一方に肩入れすれば事を荒立てるだけだ。同盟国としてはっきりと自制を求めるべきだ。

 中東の混乱はエネルギー供給網にも影響を及ぼす。全ての関係国が協調して今こそ緊張緩和の外交努力を尽くすべきだ。

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