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[社説]長崎式典 G7大使欠席 受け入れ難い「圧力」だ

沖縄タイムス+プラス / 2024年8月9日 4時0分

 長崎市は「原爆の日」の9日、市内の平和公園で平和祈念式典を開く。

 今年は先進7カ国(G7)のうち、日本を除く米英など6カ国と欧州連合(EU)の大使らが、イスラエルを招いていないとの理由で式典を欠席する。

 ウクライナに侵攻したロシアや同盟関係にあるベラルーシは、広島市も長崎市も招待していない。

 広島市はイスラエルを招待する一方、パレスチナは招かず、パレスチナ側からも市民団体からも「二重基準」だと批判された。

 長崎市は反対に、パレスチナを招き、イスラエルを招待しなかった。

 長崎市の鈴木史朗市長は「政治的な理由でなく、あくまでも不測の事態発生のリスクなどを総合的に勘案した」と理解を求める。

 これに対しエマニュエル駐日米大使は「政治的な決定であり、安全とは無関係だ」と強く反発する。

 ロングボトム駐日英大使は、イスラム組織ハマスの攻撃に対し「自衛権を行使している」とイスラエルを擁護する。

 エマニュエル大使らは6日の広島の式典には参列した。長崎の式典に欠席すれば、その行為自体が露骨な「政治的決定」となる。

 米国は広島、長崎に相次いで原爆を投下した国である。戦争で原爆を使用した国は他にない。

 イスラエルが招待されていないことを理由に式典を欠席するのは「政治的な、あまりに政治的な短慮」と言うほかない。

■    ■

 パレスチナ自治区ガザの現状は、人道危機のレベルを通り越して「人類の危機」だと、国連のグテレス事務総長は指摘する。

 民間人の死者、とりわけ子どもや女性の犠牲があまりにも多い。

 国際司法裁判所(ICJ)は5月、ガザ最南部ラファでの攻撃を直ちに停止するようイスラエルに求めた。

 だがイスラエルによる攻撃はやまず、犠牲者は4万人に迫っている。

 自衛権を理由に、民間人の犠牲を仕方のない「付随的損害」と見なして容認するのは、国際人道法に反する明らかな間違いだ。

 米欧6カ国がイスラエルを招待しなかったことを理由に平和祈念式典を欠席することは、イスラエルによるガザ攻撃が正当であるという誤ったメッセージを世界に広げることになりかねない。

■    ■

 政府はどうかといえば、「式典は長崎市主催であり、政府としてコメントする立場にない」(林芳正官房長官)と、まるで傍観者のような話しぶり。

 岸田文雄首相は「核なき世界」を主張する一方で、米国に対し「核の傘」の強化を求める。

 何をしたいのか、何が言いたいのか。政府からは被爆国としての独自のメッセージが伝わってこない。

 国家安全保障に安易に寄りかかるのではなく、その限界を明らかにし、人々の安全が重視されるような国際規範を確立していくことが、核廃絶への第一歩である。

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