「基地がある限り、また事故は起こる」 墜落の不安 今なお 本紙記者ルポ 平穏望む住民、諦め感も
沖縄タイムス+プラス / 2024年8月13日 6時11分
[沖国大ヘリ墜落20年]
【宜野湾】「当時の光景は薄らいでいるさ」。2004年8月13日、沖縄国際大学に普天間飛行場所属の米軍ヘリが墜落したことを伝えるモニュメント「ポケットパーク」を横目に、近くに住む60代女性が通り過ぎた。ヘリ墜落から20年。危険性が何一つ除去されていない宜野湾市の空の下を記者が歩いた。(中部報道部・砂川孫優)
墜落したCH53Dヘリは全長約25メートル、35人を輸送できる大型機。翌14日、米軍が戦闘作戦を展開していたイラク中部へ海兵隊部隊と共に派遣される予定だった。
出撃に備えたテスト飛行を終えて普天間に戻ろうとしたヘリは、沖国大から南側約270メートル離れた我如古公民館の上空で尾翼を落下させた。
現場は閑静な住宅街の谷あいにある墓地。訪ねてみると旧盆を控えて墓掃除をしている人たちがいた。
草刈り機で除草作業をしていた70代の男性は「20年前もここで墓の手入れをしていた」と振り返る。空から「ヒューン」という音が聞こえた。しばらくして沖国大の方向から「ドドーン」という衝撃音が響き渡った。
その日のうちに当時防衛施設庁の職員らが来て、落ちていた尾翼を発見した。「ヒューン」という音の正体を知った男性は「落ちた場所が数十メートル違えば、自分に直撃していたじゃないか」と身震いしたという。
日米両政府による返還合意から28年、沖国大への墜落から20年。普天間は1ミリも動いていない。市のど真ん中でMV22オスプレイやCH53E大型輸送ヘリ、外来戦闘機などが離着陸や旋回訓練を自由自在に繰り返している。
大学近くで先祖代々、農地を受け継いで田芋を栽培している男性(66)は、昼夜問わず低空飛行する米軍機を何度も目撃した。
「こっちに突っ込んでくるようで、また墜落しないかと不安」と心配する。平穏な暮らしを望む気持ちは、諦め感に変わっているという。
20年前、浦添市の工事現場で沖国大方面から黒煙が上がるのを目撃した識名勇二さん(69)=宜野湾市我如古=は「基地がある限り、また事故は起こる」と警戒する。
名護市辺野古では新基地建設の工事が進む。「正直、基地を押しつけるようで複雑な気分。基地がなければ誰も悲しまないのにね」とつぶやいた。
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